目上の相手に面倒をかける様を「お手を煩わせる」と表現します。
敬語表現ではあるものの必ずしも対面で発言するとは限らず、メールのような文章のほか、独白・心中表現でも使えるフレーズです。
当記事では「お手を煩わせる」の意味・使い方・類語・言い換え表現について解説しますので、ぜひご一読ください。
「お手を煩わせる」の意味を解説!
「お手を煩わせる」は敬語表現ではあるものの、構造はいたってシンプルです。
敬語表現であることに捉われ過ぎず、フレーズの意味そのものを理解しましょう。
「お手を煩わせる」の意味は?
「お手を煩わせる」の原型は「手を煩わせる」で、「手間を取らせる」「面倒をかける」といった意味を表します。
「お手を煩わせる」は、あくまで上記の意味を敬語で表現したものに過ぎません。
ちなみに敬語に当たる箇所は「手」の尊敬語「お手」です。目上の人物の手であるため、敬意を込めて「お手」と表現します。
「煩わせる」の読み方は?
「煩わせる」は「わずらわせる」と読みます。形容詞「煩わしい(わずらわしい)」は比較的よく使われるため、関連語として理解するとスムーズです。
「煩わしい」が「面倒だ」「面倒である」といった意味であることを踏まえると、「煩わせる」の意味も理解しやすいですね。
「お手を煩わせる」と「ご迷惑をかける」の違いは?
先述の通り、「お手を煩わせる」は目上の相手に面倒をかける・手間をかけるという意味です。
混同されやすいフレーズとして「ご迷惑をかける」が挙げられますが、「お手を煩わせる」とは同義ではありません。
「ご迷惑をかける」の場合は面倒ごとも含まれるものの、不利益なこと全般を指します。例えば精神的苦痛・名誉棄損なども対象です。
一方「お手を煩わせる」の場合は、相手の動作・行動といった労力を伴います。労力の有無に違いがある点を覚えておきましょう。
「お手を煩わせる」の使い方は?
意味・読み方を踏まえ、「お手を煩わせる」のフレーズをどのように使えばよいか解説します。
主な使い方は2通りで、目上の相手に対してお詫びの気持ちを表す・頼みごとをするというものです。
面倒をかけることを謝る気持ち
「お手を煩わせる」にはお詫びの意味があります。
相手が目上の立場であるにもかかわらず、骨を折ってもらうことになり申し訳なく思う気持ちです。
相手に手間を取らせることに対するお詫びの意志が強調されるため、単に「申し訳ありません」というよりも誠意が伝わる場合もあります。
頼みごとをする際のクッション言葉としても
「お手を煩わせる」にはクッション言葉の用法もあります。
「お手を煩わせることになり」もしくは「お手を煩わせることになって申し訳ありませんが」といった形で切り出すことで、目上の相手にお願いする用件をスムーズに切り出せる場合もしばしばです。
「お手を煩わせる」の類語・言い換え表現は?
「お手を煩わせる」の類語・言い換えとして代表的なものは、「お手間を取らせる」「ご面倒をおかけする」の2つです。それぞれ詳しく解説します。
「お手間を取らせる」
「お手間を取らせる」とは、目上の相手に手間を取らせる・手数をかけさせることです。
単に時間を取らせているだけでなく、作業や動作を伴っている点を理解する必要があります。
「ご面倒をおかけする」
「ご面倒をおかけする」は「お手間を取らせる」とよく似ているものの、もう少し広い意味を表します。
「面倒をかける」のポイントは課題・問題を請け負わせるということ。例えば戦略・指導・指示といった頭脳労働も該当します。
「お手を煩わせる」の組み合わせフレーズを紹介!
紹介してきた基礎知識を踏まえ、「お手を煩わせる」を使った組み合わせのフレーズをピックアップします。
お手を煩わせるには及びません
「お手を煩わせるには及びません」は、目上の相手の手を借りるほどの大きな問題ではないという意味。
目上の相手が助け船を出そうかと気遣うような場面で、申し出を断るニュアンスで使うことが多い表現です。
お手を煩わせることはございません
「お手を煩わせることはございません」は、目上の相手に心配不要の旨を伝える表現です。
目上の人物が心配している事案に対し、助力がなくとも対応・解決できることを述べる意味があります。
お手を煩わせるわけにはいきません
「お手を煩わせるわけにはいきません」は、目上の相手に骨を折らせることをよしとしない旨の発言です。
実際の状況としては苦しくとも、道理として目上の人物の手を借りてはいけない場合は存在します。
ちなみに「お手を煩わせるわけには参りません」だとより丁寧ですが、「お手を煩わせるわけにはいきません」でも失礼には当たりません。
お手を煩わせるのも申し訳ないので
「お手を煩わせるのも申し訳ないので」は目上の人物からの申し出・提案を断る言い回しの1つです。
拒絶・拒否するのではなくやんわりと断りつつ、助力の気遣いに対する感謝の意も表せるためスマートに使えます。
お手を煩わせることなく
「お手を煩わせることなく」は「お手を煩わせることはございません」と同様、心配不要の意味を表します。
先回りして相手の不安要素を取り除く使い方をする場合が多く、「お手を煩わせることなく対応できます」のような形が一般的。
「お手を煩わせることはございません」と比べてトーンが軽く、使いやすいフレーズです。
お手を煩わせることになるかもしれませんが
「お手を煩わせることになるかもしれませんが」は、自力で解決できないような思わしくない状況が予測される場合に使われます。
目上の人物に前もって懸念を伝えることで、唐突にお願いするような失礼を働かないよう配慮する意味も。クッション言葉として使えるフレーズです。
「お手を煩わせる」を使った例文3選!
紹介してきた情報を踏まえ、「お手を煩わせる」を実際に使った文章を考えてみましょう。
例文
「横田さん、人手は足りてるかい。僕も出ようか?」
「いえ、課長のお手を煩わせるほどの事案ではありません。お気遣いありがとうございます」
例文
「課長、大変恥ずかしい話なのですが…。やはりご助力いただけませんでしょうか」
「正しい判断だ。危ういことはわかってたけど、どう行動するのか気にしていたところだ。」
「お見通しでしたか。お手を煩わせることになり恐縮です」
例文
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「お手を煩わせる」の英語表現
最後に、「お手を煩わせる」の英語表現を紹介します。
bother(心配させる・邪魔をする)
・“I’m afraid to bother you.”
(お手を煩わせてしまうことを心配しています)
trouble(問題・悩み)
・“I’m sorry to give you trouble.”
(面倒をかけてしまい、申し訳ありません)
まとめ
「お手を煩わせる」は敬語表現としてはシンプルであるものの、比較的かしこまった言い回しといえます。
一方で全くの他人同士では成立せず、ある程度の関係性が前提になる点も特徴の1つ。上下関係が存在し、なおかつある程度の距離感があることが前提です。
「お手を煩わせる」を使う際には語句の意味だけでなく、相手との関係性を見極めることも必要と考えられます。