送る旨を丁寧に述べる際、「送らせていただきます」と表現する場合がありますよね。
謙譲表現であり、目上の相手を前提とする言い回しです。裏を返せば使いどころに注意する必要があり、不用意には使えません。
当記事では「送らせていただきます」の正しい意味・使い方・敬語分類・言い換え表現などについて解説します。ぜひご一読ください。
「送らせていただきます」の意味を解説!
まず、「送らせていただきます」が表す意味を解説します。敬語分類についてもあわせてチェックしましょう。
目上の相手に「送る」意思を伝える敬語表現
「送らせていただきます」は、目上の人物に向けて何か送る旨を表す一言です。
送る内容はメール・手紙・郵送物などが中心。ギフト類の場合は「贈る」が該当するため、対象に含まれません。
敬語分類は謙譲語+丁寧語
「送らせていただきます」の敬語分類は謙譲語+丁寧語です。
謙譲語「送らせていただく」は単体でへりくだった言い回しですが、丁寧さが足りません。
丁寧の補助動詞「~します」を付加すれば、謙譲語+丁寧語の連続敬語を形成できます。
「送らせていただきます」の使い方を紹介!
紹介した意味を踏まえ、「送らせていただきます」の具体的な使い方を解説します。詳細は以下の通りです。
メールを送る場合
ビジネスシーンでメールを送る場合には、「送らせていただきます」の一言を添えると好印象。
目上の相手に読んでもらう・時間を割いてもらうといった点を踏まえ、へりくだった姿勢を表す方が良い印象を与えられます。
手紙・文書を送る場合
手紙・文書を送る場合にも「送らせていただきます」と、一言添えるのがマナーです。
特に手紙・文書の場合はメールよりも格式ばった文体が要求されるため、同格程度の相手に対してもへりくだった言葉遣いをする必要があります。
ちなみにメールにはない用法として、送り状の本文に「送らせていただきます」を使う場合もあるので覚えておきましょう。
送り届ける場合
「送らせていただきます」は、送迎のうち送る・送り届ける意味として使われる場合もあります。
具体的にはマイカーやタクシーを利用し、目上の相手を目的地まで送り届ける場合が代表的です。
「送らせていただきます」の類語・言い換え表現は?
紹介した意味・使い方を踏まえ、「送らせていただきます」の類語・言い換え表現を紹介します。代表的な表現は以下の3つです。
お送りいたします
「お送りいたします」は「送らせていただきます」と同義の言い回し。敬語分類も謙譲語+丁寧語で、同程度に丁寧なトーンです。
接頭語「お」は、「~する」と組み合わせて使われる謙譲語。丁寧の補助動詞を付ける前の原型は「お送りする」です。
謙譲+丁寧の敬語表現であれば「お送りします」でも構いませんが、「お送りいたします」の方がより丁寧な印象を与えられます。
発送いたします
「発送いたします」は、主に郵便物を前提とした言い回しです。
配達業者による発送連絡のほか、フリマ・ネットオークションといった個人取引における商品発送の際にも使われます。
お送り申し上げます
「お送り申し上げます」は「お送りいたします」よりもさらに丁寧な表現です。
非常に丁寧であるものの堅苦しい印象を与えるため、特別な行事・催し物といった機会以外では使う必要がありません。
ちなみに「申し上げる」が含まれるため二重敬語に思われがちですが、あくまで接頭語「お」との組み合わせです。
「お送りする」「お送りいたす」などと同様、ひと続きの謙譲表現とみなされます。
「送らせていただきます」の注意点
「送らせていただきます」には注意点もあり、不用意に使うのは危険です。主に気を付けるべきポイントを3つ解説します。
「送らさせていただきます」はNG!
「送らせていただきます」ではなく「送らさせていただきます」と表現する例がありますが、日本語としてNGです。
具体的には補助動詞「いただく」の活用法に誤りがあり、不要な「さ」を挟むせいで「送らさせていただく」と不自然な形になっています。
むやみに「さ」を挟み込む用法は敬語の使い方を正しく理解していない典型例なので、避けましょう。
「送らせてもらいます」はラフな敬語表現
「送らせてもらいます」は敬語表現ではあるものの、丁寧の度合いは低めです。
「送らせていただきます」には謙譲語によってへりくだる姿勢が含まれる一方、「送らせてもらいます」はシンプルな丁寧語に留まります。
「送らせてもらいます」の許容範囲は、目安として部活・バイトの先輩くらいまで。
対象が友人の場合、同格の相手に向けて敬語を使うのは不自然なので、やはり適切ではありません。
「送らせて頂きます」の表記は避ける
「送らせて頂きます」の表記は一見すると問題ないように思われますが、実のところNGです。
というのも文部科学省の指針により、同音の補助動詞は平仮名で表記する必要があるため。動詞は漢字・補助動詞は平仮名表記の要領で表記します。
「いただく・頂く」「くださる・下さる」のように、同音の動詞・補助動詞が存在する語句については注意が必要です。
「送らせていただきます」を使った組み合わせフレーズをチェック!
「送らせていただきます」を使った主な組み合わせフレーズは以下の3つです。詳細を解説します。
メールを送らせていただきます
「メールを送らせていただきます」は、主にビジネスシーンで使われる表現です。
たとえば金額・数値など口頭で伝えるには不向きな情報や、双方の記録として残すべき情報をやり取りするような場合に適しています。
手紙を送らせていただきます
「手紙を送らせていただきます」はメール・電話などの簡易的な連絡手段ではなく、正式な文書・手紙といった形で連絡する旨を伝える一言です。
前触れなく手紙を送ると失礼に当たる可能性があるため、先に口頭で一言伝えるのがマナーと考えられています。
取り急ぎ送らせていただきます
「取り急ぎ送らせていただきます」は近況報告・世間話といった要素を割愛し、送る用件のみを伝える場合に使われる表現です。
文書・メールどちらの場合にも使えるものの、慌てて文書を送る行為はマナー面でも望ましくありません。
スピード感を優先する意味でも、メールを送信する場合の一言として使うのが妥当です。
「送らせていただきます」の例文3選!
紹介した知識を元に、「送らせていただきます」を実際の文章に組み込んでみましょう。例文を3つピックアップします。
例文
「契約書は文書で送らせていただきます」
「承知しました。よろしくお願いします」
例文
今回の内容は議事録としてドキュメントファイルにまとめ、メール添付にて送らせていただきます。
例文
「遅くまでお引き留めしてしまい、申し訳ありません。ご自宅まで送らせていただきます」
「ありがとう。甘えさせてもらいます」
「送らせていただきます」の英語表現
最後に「送らせていただきます」の英語表現を紹介します。
・“I will send the invoice by email.”
(請求書はメールで送らせていただきます)
・“I will send you documents.”
(文書を送らせていただきます)
まとめ
「送らせていただきます」は物だけでなく、場合によっては人を対象とする用法もあるフレーズです。
目上の相手を前提とした敬語表現でもあるため、誤った使い方をすれば無礼を働く形になる可能性もあります。
文脈・前後関係を把握し、正しい使い方を心がけましょう。