敬語表現の中でも、「召し上がる」に対して苦手意識を持つ方は少なくありません。
使い方がわかりにくい・敬語分類が判別できないといった意見もあり、正しい知識と理解が必要です。
当記事では「召し上がる」の正しい意味・使い方のほか、敬語分類・誤用例なども紹介します。ぜひ最後までお読みください。
「召し上がる」の意味を紹介!
「召し上がる」とは動詞「食べる・飲む」の尊敬語。
自分から見て、目上の人物が飲食するさまを表すために使う言い回しです。
同じ尊敬語でも「お食べになる・お飲みになる」といった表現より上品で、話し手としてもスマートな印象を与えます。
飲食に特化した表現である点でもシンプル。類語「お召しになる」との大きな違いです。
「召し上がる」の使い方を解説!
紹介した意味に基づき、「召し上がる」の使い方をチェックしましょう。詳細は以下の通りです。
他者が飲食する様子を表す場合
「召し上がる」のスタンダードな使い方は、目上の人物が飲食するさまを第三者の視点で表現するものです。
敬意の表し方は自分を基準とし、目上より格上の人物が飲食する際に使います。
上記を踏まえると、敬語分類は尊敬語と考えるのが自然。謙譲語・丁寧語には該当しません。
料理・飲み物類を目上の相手に勧める場合
「召し上がる」は目上の人物の行為を第三者の視点で述べる表現です。
原型のままでは、相手に行動を促すことはできません。
料理・飲み物類を目上の相手に勧める際には、「召し上がってください」のように活用します。
ちなみに「お召し上がりください」は二重敬語であり、本来は表現として正しくありません。
詳しくは後述します。
「召し上がれ」は目上の人に使えない
「召し上がる」の活用形として、飲食を促す表現「召し上がれ」があります。
「召し上がれ」には命令のニュアンスがあるため、目上の人に使えません。
類似のNG例としては「お食べなさい」が挙げられます。
尊敬語「なさい」には指示・命令の意味合いがあるため、やはり目上の相手に対する表現として相応しくありません。
以上のように、尊敬語でも失礼に当たる表現が存在する点には要注意です。
「召し上がる」が使いにくいと思われがちな理由は?
「召し上がる」に対して使いにくい・苦手といったネガティブな印象を持つ方は少なくありません。
「召し上がる」が使いにくいと思われがちである理由について解説します。
敬語の種類がわかりにくい
「召し上がる」に対して苦手意識を持つ方は、敬語分類を正しく理解できていない可能性が高いです。
「召し上がる」の敬語分類は尊敬語だと先述しましたが、謙譲語だと誤認している方が少なくありません。
飲食に関する謙譲表現は「頂く」「頂戴する」といったものが代表的で、飲食する行為の主体は自分です。
一方「召し上がる」の場合、飲食する行為の主体は目上の人物。
自分がへりくだる必要はありません。
以上の理由により、「召し上がる」は第三者の立場で述べる表現であり、謙譲表現ではないと言えます。
自分に対しては使えない
先述した通り、食べ物・飲み物類を「召し上がる」行為の主体は目上の人物です。
尊敬語である性質も踏まえると、自分自身に対して「召し上がる」と表現することはできません。
自分が飲食する際、目上の人物に敬意を表したい場合は謙譲表現に言い換えましょう。
詳しくは後述します。
「召し上がる」の謙譲語をチェック!
「召し上がる」とは、動詞「食べる・飲む」の尊敬語である旨を先述しました。
「召し上がる」を謙譲語に言い換えたい場合は、原型である動詞「食べる・飲む」の謙譲表現を当てはめましょう。
自分が「食べる・飲む」といった行為をする際の謙譲語は「頂く」もしくは「頂戴する」など。
「食べさせていただく・飲ませていただく」でも通じますが、やや回りくどい言い方でスマートさに欠けます。
「召し上がる」の誤用例をピックアップ!
「召し上がる」の主な誤用例は「召し上げる」「お召し上がりになる」の2パターンです。
各パターンの誤った部分について解説します。
召し上げる
「召し上げる」とは、自分が主体で没収・召集する行為。語感こそ「召し上がる」と似ているものの、そもそも敬語表現ではありません。
没収の意味で使われる場合は、主に国・自治体などが個人の財産を差し押さえて没収する用法が一般的。
召集の意味で使われる場合は、身分の高い人物が下位の者を呼び寄せるニュアンスです。
お召し上がりになる(お召し上がる)
「お召し上がりになる」は比較的よく使われる表現ですが、二重敬語に該当します。
「お召し上がりください」も同様で、そもそも「お召し上がる」のような表現は尊敬語が重複しているため、文法上適切ではありません。
ただし実際のところ「お召し上がりになる」「お召し上がりください」はある程度許容されており、飲食店に限らず企業のHP・広告媒体でもしばしば使われています。
「召し上がる」の類語・言い換え表現は?
「召し上がる」の類語・言い換え表現は「お召しになる」「お食べになる」の2つです。各表現の詳細について解説します。
お召しになる
「お召しになる」は、尊敬表現「お~になる」と尊敬の動詞「召す」を組み合わせた表現です。
「お召し上がりになる」と同様、本来は二重敬語であるものの実際にはある程度許容されています。
「お召し物」の語句があるように、「お召しになる」には衣服を着用する意味もあるため注意しましょう。
お食べになる・お飲みになる
「お食べになる」「お飲みになる」は、「召し上がる」よりも平易な言い回しです。
尊敬表現「お~になる」の組み合わせに基づくシンプルな構成であり、二重敬語ではありません。
日常生活のほか、一般的な接客業においても「お食べになる」「お飲みになる」の表現で問題ない場合が多いです。
「召し上がる」の例文2選!
紹介した基礎知識に基づき、「召し上がる」を文章の中に組み込んでみましょう。例文を2つピックアップします。
例文
「このお菓子は奥様が召し上がる予定です」
「手をつけてはいけないのね。わかったわ」
例文
コーヒーを美味しく召し上がるには、カップも十分に温めておく必要があります。
どんなにコーヒーが高温でも、カップが冷たいままだと注いだ後に冷めてしまうためです。
まとめ
「召し上がる」は誤った使い方をしがちな表現の1つ。
「お召しになる」のように、衣服をまとう類語もあるため正しい理解が必要です。
ぜひ当記事の内容を参考に、「召し上がる」を正しく運用しましょう。