「ウィンウィン」は近年の外来語の中でも、かなり広く浸透している言葉といえます。今やビジネスシーンだけでなく日常使いのレベルになったといえるでしょう。
しかしそれゆえに正確な意味や用法を今一度チェックすることには意義があるはずです。
また、同様のニュアンスをウィンウィン以外の言葉で表現する方法も存在します。
ウィンウィンの意味とは?ビジネス用語として定着!?
さっそくウィンウィンの意味を確認しましょう。
またこの言葉がどのようにして日本に広まったのかもご紹介します。
英語でのwin-winの意味
ウィンウィンは英語の“win-win”に由来します。
元々は経営用語であり取引において自分だけでなく相手も利益を得る、いわゆる相互利益を生み出すという意味です。
ベストセラー「七つの習慣」で広まる
ウィンウィンの考え方はスティーブン・R・コヴィー氏の著作「七つの習慣」(1989年)によって広まりました。
この作品は世界中でベストセラーとなり、1996年には日本語訳が刊行されました。
日本にウィンウィンの考え方が浸透し始めたのもこの頃からだと考えてよいでしょう。
日常生活でも使用
「七つの習慣」の影響は大きく、メディアでも取り上げられビジネスマン以外にも広く知られることになりました。
これによって元々は経営用語だった言葉が、一般的な人間関係や日常生活にも取り入れられるようになったのです。
ウィンウィンの正しい使い方と例文!シチュエーションがポイント
続いてウィンウィンを正しく活用するために、いくつかのシチュエーションを想定して例文をご紹介します。
例文
当社はA社から鉄を仕入れているが、A社は当社から木材を仕入れている。いずれも特約に基づく優遇価格での提供であり、他社では到底真似できない相場を実現していることからウィンウィンの関係が成立しているといえる。
例文
当社はA社から鉄を仕入れているが、A社は当社から木材を仕入れている。いずれも特約に基づく優遇価格での提供であり、他社では到底真似できない相場を実現していることからウィンウィンの関係が成立しているといえる。
例文
本田技研の2トップ、本田宗一郎と藤澤武夫が両輪の関係だったことはあまりにも有名だ。本田が開発と営業を担い、藤澤が経営を一手に引き受けた。これも見事なウィンウィンの形である。
例文
夫は働きに出て妻は家庭を守るというのが戦後の夫婦像とされた。しかし時代が流れて男女平等や女性の社会進出が取り沙汰されるようになり、夫婦のあり方もステレオタイプな形態ではなくなった。夫婦間におけるウィンウィンの関係とはどのようなものであるか、明快なひながたがなくなり各自で考える時代になったといえる。
ウィンウィンの関係は成立しない!?よくある勘違いを詳しく解説
ウィンウィンは非常に響きの美しい言葉です。あたかも関係者全てが幸せであるかのようにように聞こえますが、冷静な目で客観的に捉えると必ずしもウィンウィンとは言い切れないという事象は少なくありません。
では一見ウィンウィンの関係が成立しているようで、実のところ成立していない状況とは果たしてどのようなものでしょうか。
会社間では「Win-Lose」「Lose-Win」になることが多い
会社間における契約や取り決めにおいて、完全なウィンウィンの関係を実現するのは実のところ容易ではありません。
会社とは資本主義のもとで利益を追求することを至上目的とするものであり、少しでも多くの利益を得ることが行動原理となっています。
契約や取り決めも双方の間で行われる交渉の結果締結されるものであり、このプロセスには少なからず力関係や駆け引きが作用しています。つまりどこかで折り合いをつけているということです。
このように折り合いをつけざるを得ないという状況を客観的に捉えると、2つの会社間で「Win-Lose」の関係が生まれているということになります。
ただし商売の基本は損して得取れとの教えがあるように、一時的に折れて損する立場になった側も長期的には依然メリットがあると判断をしている可能性もあります。
「NoDeal」の選択肢と「Total Win」を目指すことの重要性
会社間の交渉においては「Win-Lose」の結果になりやすいと述べました。しかし練達の経営者や交渉人であれば、これについても承知済みです。
ではこのようなレベルの層が実際のところどのようにカードを切るかというと、ウィンウィンの関係が構築できないのであればその場で交渉を中止して構わないと前もって伝えるのです。
交渉の決裂を「NoDeal」といいますが、ウィンウィンが達成できない場合にはすぐに交渉を中止する旨を前もって伝えるアプローチ法を「win-win or No-Deal」といいます。
つまりどちらかが折れるような内容の交渉ではいけない、とスタートの段階で明言するのです。これによって本音と建前を使い分けるのでなく、はじめから本音で交渉を進めることができるというわけです。
さらにいえば本当に優れた経営者は両者間におけるウィンウィンのみを追求しません。
両者を取り巻く業界全体や商品を利用する消費者、さらには社会環境といったマクロレベルで誰もが恩恵を享受できるような結果、すなわち「Total Win」を交渉のゴールに設定します。
ウィンウィンはもう古い?嫌いな人のための同義語チェック
ウィンウィンというフレーズが日本に入ってきて20年余り。もう誰もが知っていて新鮮味がない、あるいは使うのに抵抗があるという人もいるかもしれません。
そこで同様のニュアンスをウィンウィン以外の言葉で表現する方法をご紹介します。また併せて反対語もチェックしましょう。
ギブ&テイクなどの言い換え
ウィンウィンに近い言葉として、ギブ&テイクや相互利益が挙げられます。
ギブ&テイクとは提供する一方で、享受もするという意味です。
取引が一方通行ではなく双方に利があるといえます。相互利益とは読んで字の如し、互いにどちらも利益を受け取るという意味です。
場面に応じて相応しい言い回しを選びましょう。
ウィンウィンの反対語は?
ウィンウィンの反対語は複数あります。
- win-lose:自分は利益を得て、相手は損失を被る
- lose-win:自分は損失を被り、相手は利益を得る
- lose-lose:両者とも損失を被る
- 痛み分け:両者とも損失を被り、引き分ける
ウィンウィンの真逆という意味ではlose-loseが一番適切といえますが、ウィンウィンが成立しない状況まで表現する場合は意外と沢山の分岐があるのです。
ウィンウィンを口にしない方法とは?実はジェスチャーで通じることも!
長年のビジネスパートナーなどの間柄であれば、敢えてウィンウィンという目標を口に出さなくとも共通認識として相互の利益を考える関係性を構築している場合もあるでしょう。
テレビドラマ医龍では密談の中で両手でVサインを作り、人差し指と中指をクイクイと開閉するジェスチャーが話題になりました。
このジェスチャー自体は英語のダブルコーテーション“”(いわゆる~)を表すものであり直接ウィンウィンを意味するものではありません。
しかし医龍におけるこのジェスチャーは親しい間柄ならではのやり取りで「いわゆるウィンウィンの関係でいきましょう」と互いの意思を確認しているのです。
もちろん誰が相手であっても使えるジェスチャーではありませんが、双方が話し合いの過程で明らかにウィンウィンの結果を期待しており、それを実現できる親しい間柄であるならば使ってみるのも面白いかもしれません。