近年では複数の企業が共通の目的のために、力を合わせる場面が多くなってきました。
M&Aや合弁事業などのように、異なる要素が組み合わさって生まれる相乗効果がシナジーです。
相乗効果のことをシナジーと呼ぶことは多くの方がご存知でしょう。しかし実は、分野や使い方によってシナジーにも様々な意味があるのです。
シナジーとはどんな意味?英語や語源もチェック
カタカナ語であるシナジーは、英単語“synergy”に由来します。
“synergy”には相乗効果、もしくは共同作業という2つの意味があります。
“synergy”の語源はギリシャ語に遡り、一緒に働くことを意味する“synergos”が原型といわれています。
つまりギリシャ語“synergos”のエッセンスは、元々共同作業という意味合いで英語に輸入されたのです。
現在“synergy”に相乗効果という意味があるのは、英語圏での文化風習によって後付けされたからだと想像できますね。
なお日本語表現上、シナジーは「相乗効果」の意味で使われています。
プレミアムが発生する相乗効果のこと
シナジーとは単なるプラス作用を指すものではありません。
数字計算で例えるならば1+1=2になるような、単純明快で予測可能な成果を相乗効果とは呼ばないということです。
相乗効果に期待される一番の目的はプレミアムの発生です。
プレミアムの意味するところは、いわゆる好ましい化学変化や意外性です。
例えばA社とB社が合併する状況を想定しましょう。
合併に伴って得られる商圏や市場規模は、元々A社とB社が抱えていたものを単純合算すると予想できますよね。
しかし実際に合併を終えて新事業をスタートしたところ、市場の反響や売れ行きが予想された内容を上回るものであったらどうでしょうか。
正に嬉しい誤算です。このような嬉しい誤算、予想を上回る好ましい成果こそがプレミアムに相当するというわけです。
ビジネス用語ではシナジー効果が頻出
M&Aや合弁事業に代表されるように、ビジネスシーンにおいてシナジーはよく使われる言葉です。
しかし本当にビジネスパーソンが注目するのは、M&Aや合弁事業という出来事自体ではありません。
むしろM&Aや合弁事業によって発生する、シナジー効果に注目するのです。特に投資家や市場関係者の視点で考えればわかりやすいでしょう。
先の項で、シナジーを考えるにあたってはプレミアムがポイントであると述べました。そもそもプレミアムとは予測や予想が難しいものです。
しかしシナジーが発生する状況を知った関係者は、新企業の価値や伸び代を見極めるべく、シナジーの効果を何とかして読み取ろうとしているのです。
シナジーが発生する際に生まれる効果は、どのようなものであるか。果たしてプレミアムなものかどうか。
他人よりも早く、かつ深い理解を求めるというわけです。
ビジネスシーンにおいてシナジー効果が頻出する背景には、シナジーがもたらす成果を必死に読み取ろうとするビジネスパーソンの存在があるといえるでしょう。
シナジーの使い方を例文と一緒に解説
シナジーの具体的な用法をチェックしましょう。例文を挙げて紹介します。
企業M&Aによるシナジー
例文
「この度、わが社A商事はB製鉄と合併することになりました」
「販路や資金調達源の共有に伴うシナジー効果は絶大です」
「両社が単独で活動するよりも、合併して活動する方が大きなメリットを享受できることは明らかです」
例文のようにM&Aを発表する際、記者会見の場で企業の代表者たちがウィンウィンの関係を強調するシーンはつきものです。
M&Aにおける一種の決まり文句として、次のようなものがあります。
「ウィンウィンの関係を構築し、互いが持ち得なかったシナジーを生み出す」というものです。
多くの企業が上記のような決まり文句を発表する理由は、M&Aとシナジーが切っても切れない関係にあるからだといえるでしょう。
企業進出によるシナジー
例文
「来春、米シアトルにて出店予定であることを発表いたします」
「海外での認知度を高め、和製珈琲のクオリティを知ってもらうことによりブランドイメージの向上が期待できます」
「ブランドイメージの向上に伴い、国内でも再評価の機運が高まるでしょう。海外進出によって、国内外双方からのシナジーが得られるのです」
ある企業が海外進出を果たす場面を想定したものです。企業は大きなリスクやコストを背負う決断をする場合、株主やステークホルダに向けて説明する義務があります。
今回の例であれば海外進出によってどのような恩恵を得られるか、リスクやコストに見合うものなのかを説明する必要があるということです。
薬の投与によるシナジー
例文
抗菌薬を複数投与し、シナジーを狙うという投薬法がある。例えばアミノグリコシド系とβーラクタム系を併用すると、抗菌の効能が増強されるという。
一般的に薬は単剤投与が基本ですが、正しい知見があれば併用も有効とされています。
併用によってシナジー効果を生み、単剤それぞれを投与した時以上の効能が表れることもあります。
ただし組み合わせが適切でない場合は、かえって効果の減弱を招くことがあるようです。やはり薬の併用には専門の知見が必要といえるでしょう。
グローバルシナジーとはどんな意味?
シナジーの派生語にグローバルシナジーという言葉があります。グローバルシナジーとは、シナジーのもたらす効果が国境を越えて及ぶ様を指します。
グローバルに活動している企業、いわゆる多国籍企業を例にとればわかりやすいでしょう。
世界中で事業展開する中、文化風習の異なる各国ならではのノウハウや発見があるはずです。優れたノウハウや目覚ましい発見は、企業グループ全体にとっての利益や財産につながります。
しかも単なるシナジーではなく、国境を超えたシナジーになり得るのです。
つまりある国の一地方で見いだされた企業のノウハウや発見が、世界的な影響を及ぼすシナジーを生むことさえあるといえるでしょう。
シナジーの類語や関連ワードを集めてみた!
シナジーには類語や関連ワードがいくつかあります。代表的なものを3つ紹介します。
相乗効果
シナジーの和訳として、一般的に広く知られているのが相乗効果です。
複数の要素が結びつくことによって生まれる効果であり、単独では得られない特殊な結果になることがしばしばです。
共同作業
共同作業はシナジーの語源に一番近いフレーズです。シナジー=共同作業、といわれてもピンとこない場合は「力を合わせること」と言い換えれば納得がいくのではないでしょうか。
また力を合わせるという表現は、相乗効果とも高い親和性を持つことがわかります。
やはり相乗効果・共同作業ともに、シナジーのニュアンスに含まれるということです。
化学反応
シナジーの持つ相乗効果を言い換えて、化学反応と表現する場合があります。
ケミストリーということもありますが、内容は同じです。
異なるものが結びついた結果、性質が劇的に変わるというニュアンスを強調したい時に相応しい表現です。
負のシナジー効果!?反対語「アナジー」とは?
正の性質を持つシナジーに対して、負の性質を持つ「アナジー」という言葉が存在します。
アナジーはシナジーの反対語です。シナジーと同様に、アナジーが使われる機会もビジネスシーンが多いといえます。
アナジーとは相乗効果がマイナスに作用してしまうことです。シナジーを期待していたのに、結果的にアナジーを生んでしまう事例は少なくありません。
近年では異業種や異事業との統合やコラボレーションが活発になっていることは周知の通りです。
しかし統合やコラボレーションが必ずしもシナジーを生むとは限りません。むしろアナジーを生んでしまうという声も上がっているのです。
株主やステークホルダの監視は一段と厳しくなってきています。
今や経営者が経営判断でシナジーを追求するには、単にメリットを訴えるだけでは不十分なのです。
つまり、経営判断がアナジーとならない根拠を打ち出す姿勢を迫られているといえるでしょう。
まとめ
相乗効果と聞くと無限大の可能性を期待しますが、どんなものにもリスクとコストはつきものです。
特に最後に述べたアナジーは、経営判断の難しさを物語る好材料といえます。
メリットとデメリットを冷静に見極め、確度の高いシナジーを追求していきましょう。