近年ビジネスシーンで注目を集めているのが、グロースハックという手法です。グロースハックはインターネットの強みを活かし、低コストで高い効果を得られるのが特徴です。
またグロースハックに従事する人材はグロースハッカーと呼ばれ、一つの職種として定着しつつあります。
そこで今話題のグロースハックについて解説します。
グロースハックの意味とは?ウェブマーケティング必須用語
まずはグロースハックの基本情報を確認しましょう。
一般的な英語由来のカタカナ用語とは異なり、概念そのものから理解していく必要があります。
一つずつきっちり押さえていきましょう。
分析や解析により課題を改善していく手法
グロースハックとは、事業の成長につながる可能性を徹底的に分析・解析し課題を改善していく手法のことです。
しかしグロースハックの思考法は決して型破りなものではありません。
グロースハックの思考法とは、ゼロベースで新しいものを創り出していくものではありません。
自身が現在持っている資産や顧客層を最大限活用するべく、徹底的に知恵を絞るというアプローチなのです。
グロースハックにはグロースハッカーが欠かせない
グロースハックの思考法は、意外とシンプルなものです。グロースハックが近年になってようやく注目されるようになったのは、何故でしょうか。
理由は簡単で、以前はグロースハックを有効に実践できる手段が発達していなかったからです。
グロースハックの手段とはインターネットに尽きます。インターネットの普及によってグロースハックが容易になると同時に、グロースハックに長けた人物も必要になりました。
つまり専門的にグロースハックを行い、より早く優れた成果を出す役割が要求されるようになったのです。
専門的にグロースハックを行う役割、すなわちグロースハッカーの誕生でした。
インターネットサービス急成長の要因
グロースハッカーが現れグロースハックが効率的に行われるようになった結果、インターネットサービスは飛躍的な成長を遂げました。
インターネットサービスの大きな強みとして挙げられるのが、ユーザー動向に関するデータを管理しやすい点です。
TwitterやFacebookといったSNSは典型例です。ユーザーの登録情報を参照し、趣味や嗜好に合わせたオススメ情報を提示することが可能です。
またフォロワーの増減やトレンドワードなどを参照することで、世間の関心や注目対象を追跡することができます。
少ないアクションで膨大なデータを得られるのがインターネットの世界です。グロースハックの定着と、インターネットの急成長は必然だったといえるでしょう。
Qualaroo社CEOショーン・エリス氏が提唱
2010年、米Qualaroo社CEOのショーン・エリス氏が“Growth Hacker”という呼称と概念を発表しました。
従来のマーケティングに留まらず、データ分析や開発技術など、多様な分野の知識を持ち合わせる人材が必要だと説いたのです。
グロースハックという概念は後づけで、元々はグロースハッカーという人材・職種が先に生まれたといえます。
ちなみにショーン・エリス氏はクラウド型Webストレージの先駆的存在である“Dropbox”の開発者です。
グロースハックはどんなシーンで使えばいいのか?
グロースハックが幅広い意味をカバーしていることはおわかりいただけたでしょう。
事業拡大、成長につながるあらゆる試みがグロースハックに通じるのです。商品を売り出すに当たって、一般的には商品開発、販売戦略といったように担当部門を分けるのがセオリーです。
しかしグロースハックの場合、商品開発から企画・販売・顧客フォローまでを一つのチームが担当します。
よってWebからデータを収集する作業をとってもグロースハックといえますし、新商品プロモーションの一環としてホームページのレイアウトを変更するのもグロースハックのひとつです。
だからといってむやみにグロースハックを乱発するべきではありません。限られた時間と予算、制約の中で最大限の成果を上げる必要があります。
事業拡大・成長に向け成果を最大化させるべく、アクションするシーンにおいてこそグロースハックを使うべきだといえるでしょう。
グロースハックの関連語を例文と一緒に解説
ここでグロースハックの関連語を紹介します。例文と合わせてチェックしましょう。
グロースハックチーム
グロースハックチームとは、グロースハックを専門に行う集団やチームのことです。グロースチーム、もしくはグロースエージェントと呼ばれることもあります。
グロースハックにはデータ分析や開発技術、マーケティングなど様々な方法論が必要です。
ところがあらゆる分野の知識を万遍なく持っている人材は限られます。またそれぞれの作業を1人が同時に行うことはできません。
そこでグロースハックに必要な知識やノウハウを持った人材が集まり、小集団のチームとして活動するという形態がスタンダードになってきました。
各自がそれぞれの得意分野を活かしつつ、チームとしてグロースハックを行うということです。
グロースハックチームのメンバーと一般的な会社員との大きな違いは、テーマの流動性とスピード感です。
例文
Webデザインの手腕を買われ、社内グロースハックチームへの参加を要請された。キャリアのステップアップとしては又とない機会だろう。しかし自分としては1つのテーマに絞ってじっくりと仕事に取り組むスタイルが好きなので、結論を出せずにいる。上司や同僚との関係も良好なので、今の環境に不満はない。
グロースハックセミナー
グロースハックセミナーとは、その名の通りグローハックに関する情報提供を行うセミナーです。
与えられた課題に挑戦し、時間内に優れた結果を出した場合は報酬がもらえるという極めて実践的なセミナーもあるようです。
しかしグロースハックには様々な切り口があり、細かく見ればテーマは無限に近いといえます。
例文
社内でグロースハックチームを立ち上げたが、今はノウハウが全くない状態だ。まずはチーム全員で初級者向けのグロースハックセミナーに参加し、基礎知識を身につけることにしよう。
グロースハックとマーケティングの違いとは?
しばしば混同されがちですが、グロースハックとマーケティングは異なります。
グロースハックの概要はもうOKですね。そこでマーケティングについて簡単に説明します。
マーケティングとは、突き詰めると市場のターゲティングのことです。ターゲット・マーケティングともいわれるように、商品を売る対象を定めて一極集中するというアプローチです。
商品を売る対象としては年齢層や性別、既婚・未婚など社会的ステータスに関する要素が多いといえます。
つまり万遍なく商品を並べるのではなく、あらかじめ一定の顧客層を狙った販売戦略を練り上げて販売活動を始めるというわけです。
グロースハック成功のカギはAARRRモデルのプロセス分析
グロースハックには高い自由度があります。しかし同時に高い自主性が必要で、不慣れなうちは何をどうすればよいか困りがちです。
そこで役立つのがフレームワークと呼ばれる分析ツールです。フレームワークを利用して、自社の特徴を客観的に分析するというわけです。
フレームワークにはいくつかの手法があります。中でも有名なものがAARRRモデルです。AARRRモデルの“AARRR”とは英単語の頭文字をつなげたものです。
“Acquisition”“Activation”“Retention”“Referral”の5つで、それぞれが仕事のフェーズという位置づけです。簡単に説明しましょう。
Acquisition
Acquisitionとはユーザー獲得フェーズです。例えば新商品を売り出す際には、大々的な販促キャンペーンがつきものですよね。
多少のコストを払ってでも、まずは認知度を上げユーザーを獲得する段階だと判断する場合が多いということです。
Activation
Activationとは利用フェーズです。例えば健康食品や美容品では、無料お試し期間やお試しセットといったものが提供されていますよね。
つまり、商品を実際に利用していただくことに重きを置くアプローチ法というわけです。
そして顧客が商品を気に入ったら、継続利用したりパッケージ品を購入したりといった次のステップに進むだろうと考えるのです。
Retention
Retentionとは継続フェーズです。Activationで商品を利用してもらうことに成功したら、今度は継続利用を図る段階に移行するということです。
できるだけ長く、かつ多く反復利用してもらうことを目指します。
Referral
Referralとは紹介フェーズです。紹介フェーズとは1人のユーザーを介して、友人や知人といった新たなユーザーを獲得する契機につなげるということです。
新規ユーザーの紹介に対して特典などといったインセンティブが付されているものには、Referralの狙いがあると見てよいでしょう。
Revenue
Revenueとは収益化フェーズです。獲得したユーザーの動向が、自社の収益につながるものとなることを目論みます。
例えばSNSで商品の話題を取り上げたり、ブログで商品の感想を述べるといったものが想定されるでしょう。
能動的なユーザーは、不特定多数の閲覧者に向けて宣伝活動を行う場合があります。もちろん、口コミも立派な収益化フェーズの例です。
以上の通りAARRRモデルを個別に見ていけば、いずれも決して難しい内容ではありません。
自社にとって不足しているフェーズを分析し、改善につなげていけばよいということですね。
会社や企業の成長にグロースハックはマストな存在
近年では会社や企業の間で、グロースハックが急速に普及しています。
グロースハックといえばIT業界での運用が主でしたが、最近ではIT以外の業界でも導入が進んでいるのです。
従来型のマーケティング手法だけでは勝ち残るのが難しくなっている、という背景もあります。
グロースハックは、会社や企業の成長にマストな存在になっているといえるでしょう。