スタンスは便利なカタカナ語です。場面に応じてポジション(立場)の代わりにも、アティチュード(態度)の代わりにもなり得ます。
しかし便利であるがゆえに、つい乱用しがちですよね。
そこで乱用や誤用を防ぐため、ピンポイントでスタンスを使えるようにしましょう。
スタンスの意味とは?ビジネスシーン厳選2つの使い方と例文
スタンスの代表的な用法は2つあります。
いずれもビジネスシーンでよく使われる表現です。
例文付きで紹介します。
姿勢・態度・やる気を表すとき
スタンスには姿勢・態度・やる気という意味があります。
いずれも物事に取り組む心構えや精神性を指します。アティチュードと同じ意味合いともいえるでしょう。
例文
彼の部活におけるスタンスは賞賛に値する。誰よりも早く集合場所に現れ、道具の手入れや掃除を始めている。
例文
彼女は仕事に対して意欲的なスタンスの持ち主だ。よく質問し、よく働く。言われたことだけをこなすのでなく、興味を持って取り組んでいるようだ。
立場を示すとき
スタンスのもう一つの意味は、立場です。立場を示すとは、様々な事象に対してどのような対応を図り、振る舞うかということです。
ちなみに日本語では近年、「立ち位置」という表現が浸透していますよね。立ち位置とはいわゆる位置取り・ポジションニングのことです。
例えばサッカーやラグビーのような、動きの激しい球技に置き換えるとイメージしやすいでしょう。相手やボールとの距離など、戦況に応じて位置取りを変えますよね。
特に若年層にとっては立場というよりも、立ち位置の方がわかりやすい表現かもしれません。
よってスタンスも、立ち位置のことだと解釈して差し支えないでしょう。
例文
新年度より、人事制度が徹底した実力主義に移行する。否定的なスタンスの社員が多いが、私は賛成のスタンスだ。
例文
上司を徹底的にサポートするのが私のスタンスだ。上司を支える行為は、結果として組織を支えることにつながるのである。
ビジネスシーン以外のスタンスとは?意味や使い方を例文で紹介
スタンスはビジネスシーン以外でもよく登場します。
分野によって意味合いが大きく変わるものもあるので、注意しながらチェックしましょう。
スポーツのスタンスは構え
スポーツにおけるスタンスは、構えという意味です。例えば野球の場合、スタンスとは打者がバッターボックスに立つ時の構えを指します。
もう少し詳しく述べると、バッティングフォームといえばバットを振る動作に関する姿勢です。
一方、スタンスは静止時の立ち方・構えを指します。つまりスポーツにおけるスタンスは、足の置き方にポイントがある言葉なのです。
立場や立ち位置という和訳が示す通りですね。
例文
フェンシングにおいてスタンスというと、足幅を指す。ちなみに全体的な構えはアンガルドと呼ばれる。
ロッククライミングのスタンスは足場
ロッククライミングにおけるスタンスは、足場という意味です。ちなみに突起物などを手で掴む動作をホールドといいます。
そして体全体を動かす動作は、ムーブです。つまりロッククライミングとは、スタンスを確保しつつホールドを試みるというルーチンで行うスポーツなのです。
ロッククライミングの上級者は、恰も連続してムーブを行っているように見えますよね。
しかし動作を分解してみると、要領としてはスタンスの確保とホールドを繰り返しているというわけです。
例文
ロッククライミングで第一に大事なのは、スタンスの確保だ。スタンスを確保できてこそホールドが可能になり、重心移動も行える。
文学におけるスタンスは詩集
文学におけるスタンスとは、作品名です。詩集『スタンス』はフランスの詩人、ジャン・モレアス氏の代表作として知られています。
モレアス氏は象徴主義を提唱し、概念を定義づけた人物としても著名ですね。
車におけるスタンスは改造法
自動車業界でスタンスというと、改造の様式を表します。由来は「Stance:Nation」という、改造車紹介のWebサイトです。
「Stance:Nation」の改造例が人気を博し、改造法の一ジャンルとして確立するまでに至りました。
ちなみに「Stance:Nation」の影響を受けた改造車は、スタンス系と呼ばれています。
通称シャコタンやツライチと呼ばれる改造法を組み合わせてドレスアップするのが定番だそうです。
ファッションにおけるスタンスは靴下?
ファッション業界において、スタンスとは靴下のブランドを指します。
靴下メーカー“STANCE”は、2010年米カリフォルニアで創業しました。靴下に個性やデザイン性をもたらす画期的なコンセプトが支持され、世界的な人気を獲得したのです。
スタンス製の靴下は、今や日本でも多数流通しています。
スタンスの英語「stance」の意味!語源や由来をチェック
スタンスは英単語“stance”に由来します。各分野のスタンスでも紹介したように、“stance”とは姿勢や心構えのことです。
中でも足幅や足の位置取りといった、「足の構え」という性質に注目する必要があります。とうのも、“stance”の語源は“stand”だからです。
つまり、スタンスには足で立つ・立っていることが根底にあるというわけですね。立場や姿勢という訳についても、自分の足で立つという性質が内在しているのです。
「スタンスが悪い」や「スタンスが大きい」と表現するのは間違い!?
スタンスには態度という意味があります。しかし、日本語の態度と全く同じ使い方では表現できない内容もあります。
例えば、態度が良くない人に対して「スタンスが悪い」といっても通じません。むしろ姿勢が悪いのかな、と誤解されてしまう可能性もあります。
やはりスタンスという表現を使わず、「態度が悪い」というのが適切でしょう。
また同様に、態度が横柄な人に対して「スタンスが大きい」というのも相応しくありません。足幅が広すぎるのかな、と誤解されてしまいます。
「態度が大きい、横柄だ」と、日本語表現通りに伝える方がよいでしょう。
スタンスの類語や関連語をチェック
最後にスタンスの類語や関連語をまとめて紹介します。
スタンドポイント
スタンドポイントとは観点や見地のことです。
やはりスタンドという語句がポイントで、立って見渡すという意味合いが含まれます。
ポイントオブビュー
ポイントオブビューはスタンドポイントと同義の言葉です。ビュー(view)には見る・展望するという意味があります。
つまりポイントオブビューは、見渡す地点という意味ですね。
見解
見解とは物事に対する意見や解釈のことです。理解や解釈のニュアンスが付加されているため、単なる意見や見方ではありません。
つまり分析や解析などのプロセスが前提になっています。
オープンスタンス
オープンスタンスとは主にゴルフで使われる専門用語です。ゴルフの分野では、ショット前に整える全体的な構えをアドレスといいます。アドレスの中でも足に関する構えがスタンスです。
ちなみにオープンスタンスとは、足を開き気味で構えるスタンスを指します。
体がやや開くので広い視野を確保でき、ターゲット方向を確認しやすいという利点があります。
ボックススタンス
ボックススタンスは野球用語の1つです。野球でスタンスというと、打者の構えに関する語句だと思われがちですよね。
しかし、実は審判(アンパイア)の姿勢にもスタンスという要素があります。ボックススタンスは審判が構える姿勢の一形態というわけです。
そもそも審判の姿勢に「構え」の概念があることもあまり知られていませんが、意外と奥深いのです。
審判、特に打者とキャッチャーの後ろに立つ球審は中腰の体勢を作ります。中腰になるのはピッチャーの投球を見極め、ストライクかどうかを判定するためですね。
そして中腰の体勢を維持する際に必要なのが足の開き方、すなわちスタンスなのです。
球審のスタンスは大別して4種類あります。中でもボックススタンスは両足に均等な重心を配分して腰を落とすという、最も基本的なスタンスです。
ちなみに球審の中にはボックススタンス以外の姿勢を採用している人もおり、個性が表れます。
野球中継の時には球審のスタンスにも注目してみると、いっそう楽しめるでしょう。
まとめ
繰り返しますが、スタンスは英語の“stand”に由来します。つまり姿勢や構えといっても、全身のことではなく足の配置を指しているのです。
しかし心構えや態度という意味合いについては、足の配置と無関係ではないかと疑問でしょう。
そこで、「前向き」という語句がヒントになります。前向きというと、態度を指す時もあれば体の向きを指す場合もありますよね。
共通項として、足の向きが挙げられます。足の向き、すなわちつま先が向いている方向をイメージしてみましょう。
お察しの通り、「物事に対して、つま先が前を向いている」有様が前向きなのです。前向きな時のつま先は、姿勢であっても態度であっても同じ方向ですよね。
前向きのイメージをうまくつかめれば、スタンスの本質を理解できたも同然です。
姿勢にせよ態度にせよ、スタンスとは足の配置からスタートしている言葉なのだと覚えておきましょう。