ファシリテーションという言葉を聞く機会が多くなってきました。ピンとこない方でも、派生語のファシリテーターなら馴染みがあるのではないでしょうか。
近年では業務や役割が細分化し、従来なかったような役職や責務が求められるようになっています。
中でもファシリテーションは比較的新しい概念です。特に組織運営や人材管理においては必須ともいえるでしょう。
ファシリテーションの意味や概念を理解し実践すれば、回りまわって自分自身が恩恵を受けるはずです。
ビジネスに欠かせない!ファシリテーションの意味を簡単解説
今や、ファシリテーションはビジネスに欠かせません。
個人事業は別として、ビジネスは協業で行うことが前提になっています。
協業である以上、複数の人が集合し意見を交わす場面が出てきますよね。
しかし論点が定まらなかったり、あるいは発言が少なかったりとふるわない場合もあるでしょう。
そこでファシリテーションが役に立つのです。
本来の意味は「容易にすること」
ファシリテーションの語源である“facilitation”を紐解くと、次のような意味があらわれます。
“facilitation”とは、集団による活動を支援し容易にすることです。特に話し合いの場面に限定されるわけではありません。
しかし日本で使われているファシリテーションには、意訳が入っています。特にビジネスシーンにおいては、主として話し合いの場面で使うこと前提です。
例えば工場で製造ラインを改善するという行為は、紛れもなく「集団による活動を支援し容易にすること」ですよね。
しかし話し合いの場面における支援行為ではないため、ファシリテーションには当てはまりません。つまり英語とカタカナ語とで、ニュアンスは異なるのです。
ファシリテーションの性質と運用法を理解する上でわかりやすい例なので、ぜひ覚えておきましょう。
会議や研修でのファシリテーションの意味
ファシリテーションを使う場面は、主として話し合いが前提だと述べました。ビジネスシーンで仲間同士が話し合う場面といえば、会議や研修が挙げられるでしょう。
会議や研修においてファシリテーションといえば、話し合いが円滑に進むように手助けすることを指します。
例えば絡み合った論点をまとめて交通整理したり、出された意見のポイントを図に表したりといった行為が代表的です。
物理的にいえば、ちょうど軋んで動きの悪くなったギアに潤滑油を挿すイメージですね。
役割を担う人を「ファシリテーター」と呼ぶ
ファシリテーションの実行者、つまり役割を担う人をファシリテーターと呼びます。
例えばIT・PCの分野では機器の処理速度を向上させるパーツとして、アクセラレーターというものがあります。
ファシリテーターの意味合いが掴みにくい場合は、PCの挙動とアクセラレーターの関係をイメージすると理解しやすいでしょう。
ただしファシリテーターの場合は、処理速度向上といった単一機能に限定されません。ファシリテーションやファシリテーターがカバーする範囲は非常に広いのです。
単なる司会進行術でない
ファシリテーションは単なる司会進行術ではありません。司会進行の上で肝心なのは、議事が滞りなく行われることです。
よって、状況に応じて進行状況を適宜軌道修正することに注力すればよいといえます。
一方、ファシリテーションの目的は話し合いの品質を高めることです。時にはファシリテーターが司会進行の役割を担うこともあるでしょう。
しかし、司会進行そのものが目的ではありません。仮に司会進行を担うとしても、あくまで話し合いの品質を高めるプロセスの1つなのです。
つまりプロセスの中で最適と考えられる一手が、たまたま司会進行だったという理由があるわけですね。
ファシリテーションの関連語の意味や使い方もチェック
ファシリテーションには分野や場面に応じたフレーズが存在します。
代表的なフレーズを3つ紹介します。
リハビリや看護の分野で使われる「ファシリテーションテクニック」の意味
リハビリや看護の分野では、運重機能障害の治療に関する施術法をファシリテーションテクニックといいます。
日本語では「促通手技」に相当し、主に脳卒中による麻痺の治療手段として採用されています。
施術の要領としては中枢神経活動を促通あるいは抑制し、患者の筋トーンや運動パターンを正常化させるというものが一般的です。
税関で求められる「ファシリテーションペイメント」の意味
税関におけるファシリテーションペイメントとは、いわゆる賄賂のことです。通関手続きにおける不正を見逃す見返りとして、大小の賄賂を渡す行為を指します。
ファシリテーションペイメントは違法行為であり、摘発の対象です。
ちなみに書類の違法性によらず、税関でチップを渡す行為自体がファシリテーションペイメントとみなされます。
つまり時間短縮など、手続きの円滑化を図る目的でチップを渡そうと行為もアウトというわけですね。
対話を見える化する技術「ファシリテーショングラフィック」
ファシリテーショングラフィックとは、話し合いの争点や論点を可視化することをいいます。
具体的には発言の要点を板書したり、議論すべき争点を図示したりして、状況を客観的に把握できるようにすることです。
ちなみに英語圏での呼称はグラフィックファシリテーション(graphic facilitation)とされています。
つまりファシリテーショングラフィックとは、日本語表現上の造語だということですね。
ファシリテーションのスキルアップに必要なことは?
ファシリテーションとは、一種のスキルであることがおわかりいただけたはずです。
優秀なファシリテーターも、誰もが一朝一夕に技術を会得したわけではありません。
そこで、ファシリテーションのスキルを上達させるメソッドを考えていきましょう。
本で手法やコツを学ぶ
低コストで自己完結できる手段は、読書によってコツを学ぶことです。第三者の力を借りるのは、自己完結が不可能だと判断される状況になってからでも遅くないでしょう。
ファシリテーションは比較的新しい概念なので、関連書を図書館で探すのは難しいかもしれません。
そこで書店でいくつか流し読みして、読みやすい書籍を購入するアプローチが挙げられます。
ネットを利用して事前に書評をチェックしておけば、よりスムーズに済ませられますね。
なおビジネス関連の雑誌で、ファシリテーションの特集が組まれている号を買うというのも有効でしょう。
雑誌はおしなべてカラー印刷されている上、図やイラストが豊富な場合も多く、入門用にオススメです。
セミナーや研修で教育を受ける
セミナーや研修で教育を受けるのも有効な手立てです。プロの講師から説明を受けられるので、自分自身で学ぶよりも短時間で明快に理解できる可能性が期待できます。
特にシミュレーションや実技指導があるプログラムはオススメです。まさに習うより慣れろ、ですね。
ファシリテーションに役立つ資格
ファシリテーションについて、行政が定める公的な資格はありません。しかし、国際団体やNPOなどが認定している資格は存在します。
公的な資格ではないにせよ、習得の過程でファシリテーションのノウハウが身につくことは間違いないでしょう。
特に、名より実をとる志向の方にとっては有用なはずです。
組織運営に欠かせないファシリテーションのメリットとは?
ファシリテーションを導入するメリットは沢山あります。第三者の視点で状況を把握し発言できる人物がいると、膠着しがちな会議や話し合いを円滑に回せるようになります。
また役職についていない人にとっては、立場や上下関係を意識するあまり発言しづらいものですよね。
しかしファシリテーターがいれば、旧態依然とした雰囲気を打破する効果も期待できます。
また内部の人員でまかなえるため、新たにコストを捻出する必要がありません。
つまり、外部のアドバイザーやコンサルタントを招く費用と労力をセーブできるというわけです。
ファシリテーションとリーダーシップはどう違う?類語や反対語をチェック
ファシリテーションにも類語や反対語があるのでしょうか。
順番に見ていきましょう。
<類語>
・リーダーシップ
リーダーシップとは統率力・牽引力のことです。
周知の通り、統率や牽引を行う先導者がリーダーですね。
ファシリテーションの形として、統率や牽引が行われる場合はもちろんあります。
しかし、統率や牽引がファシリテーションの全てではありません。
リーダーシップとファシリテーションは重なる要素があるものの、同一ではないといえます。
<反対語>
・オブストラクション
ファシリテーションの反対語はオブストラクション(obstruction)です。
オブストラクションとは妨害・阻害のことで、遮ったり妨げたりする様をいいます。
野球を例にとれば、「走塁妨害」がオブストラクションに当たります。
ファシリテーションの英語「facilitation」の意味
ファシリテーションのおおもとは、英語の“facilitation”です。
“facilitation”とは集団による活動を支援し、容易にすることを指します。
つまり、複数の人間が集まって活動することを前提とした概念なのです。
単独で活動する場合は対象とならないことも覚えておきましょう。
まとめ
かねてより、日本人はリーダーシップをとるのが苦手だといわれてきました。よってリーダー性や発言力のある人物は重宝され、周囲も盲目的に同調しがちです。
しかし組織運営の場合、力を持った一部の人間が引っ張るだけでは限界があります。そこで全体最適を図り、冷静かつ公平な判断を行える人材が必要です。
ファシリテーションを実践できる人物、すなわちファシリテーターの需要は今後ますます高まっていくでしょう。