チェーン店など、フランチャイズ式の業態では欠かせないのが「ロイヤリティ」という語句。ロイヤリティといっても、日常生活の上では飲食店や小売店以外にあまり馴染みがありませんよね。
ロイヤリティは経済活動において必須の概念。飲食業や小売・サービス業といった業態を問わず、あらゆるビジネスにつきもののキーワードです。
ロイヤリティがわかれば、経済の基本がわかるといっても決して大げさではありません。
ロイヤリティの意味用法だけでなく、意義についても注目してみましょう。
日本語のロイヤリティの意味を詳しく解説
最初に日本語表現上のロイヤリティについて見ていきましょう。
カタカナ語のロイヤリティには、英語の“Loyalty”と”Royalty”両方の意味が入り混じっていることに注意が必要です。
場面ごとの用例について、“Loyalty”と”Royalty”どちらに由来するロイヤリティなのかを補足します。
ビジネスにおけるロイヤリティの意味「会社や組織への忠誠心」
英単語“Loyalty”には、国家や主君に対する忠義や誠実性を表す意味があります。
ビジネスシーンにおけるロイヤリティは“Loyalty”に由来し、「会社や組織への忠誠心」を表すものです。「愛社精神」という表現でもよいでしょう。
マーケティングにおけるロイヤリティの意味「顧客の信頼性・ブランド力」
マーケティングにおけるロイヤリティは英語“Loyalty”に由来し、「顧客から得ている信頼の度合い・信頼性」」のこと。
信頼性は「ブランド力」と言い換えてもよく、商品の品質や商品名・企業名に対する社会的な評価を表します。
コンビニなどのフランチャイズ事業におけるロイヤリティの意味「知的財産」
コンビニなどに代表される、フランチャイズ事業におけるロイヤリティは”Royalty”に由来し、「知的財産」を表します。
知的財産とは、昔ながらの日本語でいえば「のれん」に相当するもの。
特許権や著作権・商標権などが該当し、具体的にはフランチャイズ事業のロゴや看板を掲げたり、電話口でブランド名を名乗ったりする権利を指します。
経理会計の経費として、フランチャイズ事業本部に支払う「フランチャイズ加盟手数料」をロイヤリティと呼ぶ場合もあるので、併せて覚えておきましょう。
ロイヤリティの英語は「Loyalty」と「Royalty」どっちが正しいの?
カタカナ語のロイヤリティは、英語“Loyalty”と”Royalty”の2単語に由来すると述べました。
大事なポイントなので、語源である“Loyalty”と”Royalty”についてもう少し詳しくチェックしておきましょう。
英語の原語「Royalty」の意味
”Royalty”とは王位・王権・王族など、王や王室に関する権威を表す言葉。ピンとこない方でも、世界各国の王族に対する「ロイヤルファミリー」のロイヤル(Royal)に関係の深い語句だと聞けば納得でしょう。
王や王室という意味から転じて国家や組織のトップ、あるいは経営陣を指す意味が付け加えられました。
ちなみに知的財産使用料や特許権使用料という意味は”Royalty”にもあり、日本独自の用法ではありません。
英語の原語「Loyalty」の意味
“Loyalty”は忠実や忠節、忠義のこと。元々は王や国家を守る騎士や臣下の忠義を表す言葉であったと考えられます。
現代では組織のトップに対する忠誠心や所属会社に対する愛社精神のほか、顧客や消費者から得た信頼性・社会的評価・ブランド力などが当てはまります。
日本語のロイヤリティに使い分けの定義はなし
“Royalty”と“Loyalty”、カタカナ表記すると発音は同じですよね。ややこしいことにそれぞれの意味もよく似ており、RとLを区別して発音するのが苦手な日本人には悩ましい事案です。
呼称として“Royalty”を「ロイヤルティ」、“Loyalty”を「ロイヤルティ」と区別する用例も見られるものの、実際のところは個々人の解釈によるところが大きいとされています。
以上を踏まえ、現状では“Royalty”と“Loyalty”を区別するための厳密な定義や、公式なルールは存在しません。
カタカナ語のロイヤリティを見た場合は、文脈や前後関係を元に“Royalty”と“Loyalty”のどちらに近いかを判別する必要があるでしょう。
ロイヤリティの正しい使い方を例文でチェック
先述の通り、カタカナ語のロイヤリティには大別して3種類の意味があります。
ビジネス、マーケーティング、フランチャイズの3種類を取り上げ、例文形式で使い方をイメージしてみましょう。
例文:フランチャイズ
近所の中華料理屋は有名チェーンのフランチャイズ加盟店だが、ブランドのカラーに頼るだけでなく独自色を打ち出しており、地元のファンからも支持されている。ロイヤリティを本部に収め、マニュアルやオペレーションも遵守しているので、それ以外の部分については自由にやるべきだというのが店主のスタンスだ。
例文:ビジネス
私は会社組織ではなく、社長に対してロイヤリティを持っている。ウチの社長は近年では珍しい豪腕の経営者で好き嫌いは分かれるものの、やる気のある人間にどんどん仕事を任せるタイプだ。管理職でもない私に大きな仕事を任せてくれるので、期待に応えたいという気持ちが湧いてくる。
例文:マーケティング
長年培ってきた企業イメージ、商品ブランドは我社の自慢すべきロイヤリティだ。原材料高騰に伴い当社商品の店頭価格も見直すタイミングにきているが、値上げによってロイヤリティにキズが付かないかどうかを慎重に検討する必要がある。
例文:マーケティング
タレント、ビートたけし氏の誰もが知る有名ギャグといえば「コマネチ」。コマネチの由来はモスクワ五輪金メダリストのナディア・コマネチ氏と、当時の衣装である。ここまでは比較的有名な話だが、たけし氏が肖像権使用料としてコマネチ氏に約200万円支払ったという事実はあまり知られていない。ギャグにロイヤリティが発生したという、非常にユニークな事例だ。
例文:ビジネス
株主からの評価を得る前に、まずはスタッフの勤労意欲を促進せねばならない。ついては社員の帰属意識とロイヤリティを高める目的で、ノー残業デーの設定と有給取得を推奨する体制を整備した。不要な残業代の削減や、離職率低下も狙える一石三鳥の施策である。
ロイヤリティの付いた言葉の意味をチェック
ロイヤリティと組み合わせたフレーズは多種多様ですが、ロイヤリティの基本的な意味を把握していれば理解できるものばかりです。代表的なフレーズを列挙してみましょう。
ロイヤリティ契約の意味
ロイヤリティ契約とは、いわゆるライセンス契約のこと。具体的には特許使用やフランチャイズ加盟に関する取り決めなどを指します。
ロイヤリティ契約には対価が発生するのが一般的で、期間ごとの手数料のほか、技術力・労働力の提供などが契約内容に応じて定められるのです。
ロイヤリティフリーの意味
ロイヤリティフリーとは、いわゆる著作権フリーの媒体です。例えばネット上で公開されている無料画像や、著作権が切れており自由に放送することが許されている楽曲などが該当します。
注意点として、いかにロイヤリティフリーとはいっても、対象物を「自分が開発・制作した」という扱いにするのは社会的モラルとしてNGです。
ロイヤリティ相場の意味
ロイヤリティ相場とは、ロイヤリティ契約に伴うライセンス費用の相場です。
代表的な例としてはフランチャイズ加盟料が挙げられ、業界によって店舗の規模や売上高などに応じておおよその割合が決まっています。
諸条件を含めたロイヤリティの費用を表現する際、一言で済ませられるので「相場」という語句が好まれるようです。
ロイヤリティ相場とは一種の業界用語であると考えればよいでしょう。
ブランドロイヤリティの意味
ブランドロイヤリティとは、消費者が特定のブランドを愛顧し続けること。具体的には類似品や代替品が他にも存在するにもかかわらず、自分が支持するブランドの品を最優先して購入するといった行動が挙げられます。
ブランドロイヤリティは企業にとっての「ブランド力」とほぼ同義で、消費者にとって代えがたいブランドであることを表す言葉といえるでしょう。
カスタマーロイヤリティの意味
カスタマーロイヤリティは顧客ロイヤリティとも呼ばれるもので、顧客が企業もしくは商品・サービスなどに対して抱く信頼感や愛着のことです。広義の「顧客満足度」といってもよいでしょう。
従業員が会社に対して抱くロイヤリティは、愛社精神や忠誠心という意味ですよね。
従業員のロイヤリティと同じロジックで、顧客が特定の企業や商品・サービスなどに対して持つ感情、すなわち「思い入れ」を顧客ロイヤリティというわけです。
ストアロイヤリティの意味
ストアロイヤリティとは店舗に対するロイヤリティのこと。先述の通りブランドロイヤリティといえば、ブランドに対する思い入れですよね。同じ理屈で、ストアロイヤリティの場合は特定の店舗に対する顧客の思い入れを表します。
例えば同一の商品が、どこに行っても全く同じ価格で売られているとしましょう。せっかく同じだけの料金を払うなら、よりサービスが良く、満足度の高いお店で買い物したいですよね。
競合案件を抑えて顧客から選別され、贔屓にされる店舗の魅力こそがストアロイヤリティです。ストアロイヤリティを向上させることは、結果として店舗および会社の収益向上に帰結します。
ストアロイヤリティを高めるアプローチは様々で、人材育成によって名物店長や看板娘をプロデュースしても構いませんし、情報戦略を駆使して他店に真似できないキャンペーンを張ってもよいでしょう。
ストアロイヤリティを高める方法は無限にあります。特に人事担当者、マーケティング戦略担当者の手腕が問われる領域ですね。
ロイヤリティの類語「エンゲージメント」の意味
ロイヤリティの類語に「エンゲージメント」というカタカナ語があります。
エンゲージメント(engagement)といえば「婚約」の意味が有名ですが、他に「契約・約束」や「絆」という意味も。
経済活動におけるエンゲージメントとは、正に絆のこと。いわゆる精神的な結びつきというよりも、経済を媒介としたビジネス上の関係を指します。
具体的には宣伝・広告を中心としたマーケティング活動の結果、商品やサービスを通じて顧客と企業に関係が生まれることがありますよね。
規模の大小を問わず、売買契約や取引を通して生じるビジネス上の結びつきこそ、エンゲージメントの本質です。
一方ロイヤリティ(Loyality)はより精神的なニュアンスが強く、思い入れや愛着といった感情が作用する場合もしばしば。
類語といえども、ロイヤリティとエンゲージメントには明らかな違いがあるといえるでしょう。
まとめ
日本におけるロイヤリティには、英単語“Loyalty”と”Royalty”の意味が混在しています。最初は戸惑うかもしれませんが、順を追って読解すれば十分理解できる内容です。
話を単純化するため、ロイヤリティには感情に関するものと、金銭に関するものの2通りあると考えるのも有効でしょう。
ロイヤリティの意味用法を理解できれば、現代の経済活動についても相当理解が進むはずです。
当記事をきっかけとして、是非ロイヤリティの使い方をマスターされることをお勧めします。