精神を表すカタカナ語は沢山ありますよね。マインド、メンタル、スピリットなど。中でも当記事では「マインド」について注目します。
マインドはビジネスだけでなく、日常においてもしばしば使われる言葉。マインドと他の言葉を組み合わせたフレーズも多数存在します。
マインドに関する知識を身につけ、場面に応じて適切に運用できるようにしていきましょう。
直訳すると精神?日本語マインドの意味を詳しく解説
マインドを直訳すると「精神」もしくは「心」。類語のメンタルやスピリットも、直訳すると同じような意味になりますよね。
マインドに限らずほとんどの場合、カタカナ語を直訳するだけでは本質を掴めませんし、類語との違いも説明できません。
まずはマインドの持つ意味や性質を把握するため、由来などの詳細をチェックしていきましょう。
マインドの意味は英語「mind」が由来
マインドは英語の“mind”に由来するカタカナ語です。
英単語“mind”の意味を紐解くと、心・精神・知性・知力といったキーワードに加えて「身体と区別して、思考などの働きをする精神」や「感情と区別して、理性を働かせる知性」といった説明が付いているでしょう。
すなわちマインド(mind)の本質は、「思考や理性に基づく精神・知性」というわけです。
ビジネス用語のマインドが持つ意味
ビジネス用語としてのマインドは、単なる精神というよりも「志」に近いニュアンスで使われます。
具体的には成功するための意志や、出世して会社の要職に就いたり、あるいは起業したりといった意志を伴う思考・精神を指すということです。
動詞でマインドを使うときは意味が違ってくる
英語“mind”は動詞としても使われます。動詞としての“mind”は大きく分けて「~を嫌がる・嫌気する」といった否定的な意味と「~に注意する・~を気にかける」といった注意に関する意味があり、文脈によって変化するのが特徴です。
例えば日本語のポピュラーな口語表現に、「ドンマイ」というものがありますよね。
ドンマイとは“Don’t mind.”を略したもので、一言でいえば「気にするな」という意味なのです。
“Don’t mind.”で使われる“mind”は、「気に病む・嫌がる」といった意味ですね。
「注意する・気にかける」というニュアンスで“mind”を使う用例としては、次のようなものが挙げられます。
例文
・Mind your head.
(頭上に注意してください)
・You should mind your parents.
(両親の言うことを聞くように)
ビジネスシーンで見られるマインドの使い方を例文でチェック
マインドが使われる機会の多い分野といえば、やはりビジネスシーン。
基礎知識を踏まえ、マインドを文章形式で運用してみましょう。
マインドをもつ
「マインドをもつ」とは、意志を持つという意味。例えばどんな時もマニュアル通りの対応を機械的に行うのと、マニュアルにない対応もある程度柔軟に行うのとでは大きな差がありますよね。
一般的な前提として、マニュアルを無視する行為はいけません。
一方で、コストを払ってでもお客様に喜んでもらうことを優先したり、あるいは人道や倫理を優先したりするべき場面というものは多少なりとも訪れます。人命救助などは最たるものですね。
以上を踏まえて「マインドをもつ」のニュアンスを説明すると、「理性を働かせ、高い志を持つ」といった表現が妥当でしょう。
マインドが高い
「マインドが高い」とは、精神力が優れているという意味。理性や知性の度合いが高く、思考のレベルが優れているということです。
「志が高い」という意味合いも含まれますが、さらに理性や知性を伴った内容の表現であると考えればよいでしょう。
マインドを養う
「マインドを養う」とはマインドを磨き、成長させること。すなわち理性や知性を伴った健全な精神を培い、高い目標のために研鑽を積むというニュアンスです。
複雑な日本語表現のニュアンスを一言でまとめた高度なフレーズといえるでしょう。
マインドを発揮
「マインドを発揮」とは、養ったマインドの成果を表すという意味。
単独で使うよりも「ホスピタリティマインドを発揮する」や「コーチングマインドを発揮する」といった具合に、予めマインドの方向性に説明を付ける表現が多く見られます。
意味を理解してシーンで使い分けしたい!マインドの類語をチェック
マインドと同様に、精神や心に関する類語がいくつかあります。
マインドとの違いを把握するためにも、代表的な類語をチェックしておきましょう。
心の状態を意味「メンタル」とマインドの違い
「メンタル」とは心の状態を表すカタカナ語です。英語の品詞を辿ればわかる通り“mental”とは形容詞であり、「心に関する」もしくは「心理的な」といった意味を表します。
口語で「メンタルが弱っている・参っている」という表現がありますが、内容を的確な日本語で表すと「精神的に弱っている・ストレスで参っている」という意味なのです。
口語表現の上ではメンタルも名詞のように扱われていますが、内容を正確に解析すれば英語同様、形容詞の意味合いで使われていることがわかるでしょう。
名詞であるマインド(mind)とメンタル(mental)は表面上似ているものの、文法の面から見ても全く別の性質を持った言葉であるということですね。
気合や根性のようなニュアンスを含む「スピリット」とマインドの違い
「スピリット」もマインドの類語に挙げられます。
メンタルとは異なりスピリット(spirit)は名詞形なので、品詞の上ではマインドと同じ扱いですね。
英語“spirit”の和訳には次のようなものがあります。
- 心、精神、魂
- 霊魂・幽霊・亡霊・神などの超常的存在
- 元気、勇気、気迫
一方、日本語表現におけるカタカナ語のスピリットは③のニュアンスが強く、特にスポーツの分野で使われることが多い言葉です。
例えばファイティングスピリット(fighting sprit)は闘争心・闘志を表します。
改めてマインドの性質を思い出してみましょう。マインドの心や精神には、「理性」や「知性」が内在していますよね。かたやスピリットの心や精神は、「元気・勇気・気迫」を伴うもの。
以上を踏まえると、やはりマインドは主にビジネスなど仕事で使うのに相応しく、スピリットは主にスポーツで使うのが適切だと考えられるでしょう。
愛情などの感情を意味「ハート」とマインドの違い
心・心情に関するカタカナ語、「ハート」も忘れてはいけません。英語“heart”の意味として最初に挙げられるのは「心臓」。
心臓から転じて心や感情という意味が派生しているのです。ハートが心臓に由来することを踏まえると、頭脳・理性に対する心臓・感情という構図がイメージできるでしょう。
マインドに理性や知性の性質が内在することは、先述の通り。マインドが理性や知性に関する「精神」であるのに対し、ハートは心や心情に関する「感情」であるということですね。
ハートとマインドの違いを手っ取り早く理解するには、ラブソングをイメージするのが一番です。
ラブソングにおいて恋愛感情を表現する定番フレーズといえば、何といってもハート。
わざわざマインドを歌い上げるケースは滅多にありませんよね。
ビジネスで使える!マインドの付いた言葉の意味
類語との比較により、マインドはビジネスシーンに適した語句であることがおわかりいただけたはず。
今度はマインドのついたフレーズを紹介します。中にはご存知のものもあるかもしれません。
知名度を示すマーケティング用語「マインドシェア」
マーケティング用語の1つに「マインドシェア」というフレーズがあります。
マインドシェアとは、消費者の心を占める知名度のこと。例えば家電ジャンルの中から炊飯器をピックアップした際、自分の中で真っ先に思い浮かぶメーカーやヒット作品があるでしょう。
ブランドや会社名が深層心理に行き届いているといことは、消費者の心を掴んでいるという証なのです。
まとめると、「消費者の心を掴んでいる度合い」がマインドシェアだということですね。
効率化アップのノート術「マインドマップ」
「マインドマップ」はイギリスの著述家、故トニー・ブザン氏が考案した思考法です。
マインドマップとは人間の脳の仕組みに合った思考法で、発想や連想を地図の形で図示・可視化できるのが特徴。
漠然としたアイデアやモヤモヤとした疑問などを可視化し、表出させるのに有用です。
ロジカルシンキングの方法論として知られる「ロジックツリー」とよく似ていますが、マインドマップの原点は何といっても「連想」に尽きます。
ロジックツリーの場合は主題があり、いくつかの副題を設定するのがセオリー。自ずと問題解決の目的に用いられますよね。
一方マインドマップの場合、課題解決の目的は必須ではありません。
例えば移動中にパッと思いついたアイデアをまとめる程度の作業でも、マインドマップならば気軽に実践可能です。
特に最近では、スマホやタブレット向けのマインドマップアプリも登場しています。
五感をフル活用「マインドフルネス」
「マインドフルネス」は、古代インドにおける「サティ(気づき)」の英語訳に由来する言葉です。
マインドフルネスとは心のあり方に関する表現の1つで「今、自らが体験する瞬間に意識を向け、集中すること」というもの。
マインドの本質は、理性や知性に基づく精神。
一方マインドフルネスはマインドを瞬間的に高め、自分自身に向けて集中させます。いわばマインドの発展形というべき所作ですね。
マインドフルネスによって集中力や記憶力の促進がもたらされる効果に注目し、医療者が臨床カウンセリングに応用する例のほか、近年では瞑想にマインドフルネスのアプローチを取り入れた「マインドフルネス瞑想」というものも広まっています。
有名企業が、研修やリラクゼーションの手法としてマインドフルネス瞑想を導入した事例が報告されているのです。
企業や個人の物事の考え方「マインドセット」
「マインドセット」とは心理学用語の一つで、生活環境や教育、人生経験などによって形成される価値観や思考様式のこと。企業の場合は経営理念や企業理念などが当てはまります。
一般的なマインドに加えて、対象のマインドを形成している経緯や文化、歴史などの要素が含まれるのが特徴です。
近年ではマインドセットを「成功できるという信念を持つ」という未来志向の意味で用いる例も多くなっています。
過去の積み重ねによって形成された価値観や思考様式だけでなく、「今後どのような体験をしていくか・どのように成功していくのか」という、未来に向けてのマインドを抱くのです。
例えば「英語力を身につける」という目標を設定した場合、目標に対する実践方法として最初にマインドセットを行うのは非常に有効でしょう。
マインドセットを実施することにより、どのようにして英語力を身につけるのか、どうすれば英語力を養えるかという具体論につなげられるからです。
心理状態を制御・調整「マインドコントロール」
「マインドコントロール」は心理状態を制御・調整する技術で、日本でも比較的よく知られています。
メディアの報道で、判断力を奪われ逆らえない心理状態を指して「マインドコントロール状態に陥る」という表現がよく使われていますが、マインドコントロールという言葉そのものにはネガティブな意味はありません。
例えばスポーツ選手が自己の精神を高めて実際の能力以上のパフォーマンスを発揮したり、あるいは極度の緊張やプレッシャーを抑制したりするためにマインドコントロールを行う事例もあります。
マインドコントロールは一種の自己暗示としても役立つのです。
一方でマインドコントロールを悪用する例もあります。
人の思想や情報を恣意的に操作し、特定のベクトルや結論に誘導する手法は、マインドコントロールの悪い用例です。
歴史を見ても、悪質な指導者のマインドコントロール下にあった犯罪者の例は少なくありません。
マインドコントロールとは、使い方次第で良し悪しどちらにも転ぶ言葉であることを押さえておきましょう。
ビジネスマンの心構え「ビジネスマインド」
「ビジネスマインド」とは、一言でいえばビジネスマンの心得・心構えのことです。
古い言葉では、商人の心構え・心意気を「商魂」と表現しますよね。
ニュアンスやタッチこそ異なるものの、概念としてのビジネスマインドは商魂とよく似たロジックを持っています。
例えば事業を成功させる、取引先と良い関係を築く、出世して会社に貢献する、いずれもビジネスマインドとして適合しています。
ビジネスにおけるマインドは、単なる精神ではなく「志」に近い概念だと述べました。
ビジネスマインドとは、意志を伴ったビジネスマンの精神。人や企業の意志が反映され、それぞれの目標や夢の形で実を結んでいくということですね。
まとめ
何気なく使われているマインドにも、実は深い意味があることにお気づきいただけたのではないでしょうか。
カタカナ語を使うことは、時として安易であるとみなされる場合があります。
一方でカタカナ語の意味用法をしっかり理解し、ここぞというタイミングで使うならば日本語以上の効果をもたらす場合もあるのです。
今後日本語で「精神」と表現するよりも、「マインド」と表現する方が相応しい場面が訪れるかもしれません。