「お疲れ様でございます」は敬語表現として正しい?二重敬語かどうか、類似表現も解説!

相手をいたわる言葉の1つに「お疲れ様でございます」がありますよね。いくつかの類語がある中で、「お疲れ様でございます」を使うに相応しい場面も存在します。

「お疲れ様でございます」の意味や使い方、ドレスコードや敬語表現上の注意点なども含めてチェックしてみましょう。

この記事の内容

「お疲れ様でございます」は正しい日本語?敬語について詳しく解説

大前提として、まず「お疲れ様でございます」は日本語表現として適切なのかを確認しておきましょう。

また問題ない日本語だとしても、敬語としての問題はないものでしょうか。

「お疲れ様でございます」は二重敬語?文法的字解釈

「お疲れ様でございます」のフレーズは二重敬語なのではないか、という意見がありますよね。結論からいえば「お疲れ様でございます」は二重敬語ではなく、表現上の問題もありません。

後半の「ございます」について異論のある方はいないでしょう。丁寧の助動詞で、ポピュラーな語句ですよね。やはり問題は「お疲れ様」の部分です。

「お疲れ様」の品詞は名詞もしくは形容動詞。すなわち相手の疲れている様を指して「お疲れ様」と表現する言葉なのです。

形容動詞の場合は「お疲れ様だ」という言い方で、同じニュアンスでもっとカジュアルな言い回しをすれば「さすがにお疲れだ」「やあ、お疲れだね」といったフレーズがポピュラーでしょう。

「お疲れ様」には相手をいたわる丁寧なニュアンスが含まれるものの、敬語ではないということですね。「お疲れ様でございます」というフレーズは二重敬語ではなく、適正な日本語であるといえるのです。

「お疲れ様でございます」に違和感を覚える理由

ビジネスシーンをはじめ、アルバイトなどといった上下関係のある多くの環境で頻繁に使われるのは「お疲れ様でございます」ではなく、「お疲れ様です」の挨拶でしょう。

「お疲れ様でございます」という場合、印象は一気に堅苦しくなるもの。

特に聞き慣れない人の場合は違和感を覚えるでしょう。わずかな語句の変化であるにもかかわらず、補助動詞の言い回しひとつで全体のトーンが左右されるというわけですね。

目上の方に自然に使っている場合もあり

現代の人間関係において、「お疲れ様です」という挨拶は一種の潤滑油というべき役割を果たしています。特に深い意味を考えず、慣用的に使っている人も多いでしょう。

先述の通り、「お疲れ様です」とは本来相手をねぎらう言葉。目上の相手に対しては表現を変えるべきで、本来は「お疲れ様でございます」と言うのが適切です。

一方で、いわゆる目上の存在として位置づけられる人たちも、「お疲れ様です」という言い回しについて目くじらを立てるケースは少なくなっています。

というのも自分たちが若手の頃、目上の相手に対して「お疲れ様です」と発言してきたからですね。

型苦しすぎる「お疲れ様でございます」は相手や状況に応じて使おう

先の項でも触れた通り、本来「お疲れ様でございますと声をかけるべき相手に対して「お疲れ様です」ということは、今やある程度許容されています。

むしろ「お疲れ様でございます」は挨拶として堅苦しいという意見もあるでしょう。

「お疲れ様でございます」を使うべき相手、状況は相対的に少なくなってきているとはいえ、確実に存在します。

言葉選びのセンスはビジネスマンにとって必須のスキル。職場のライバルと差をつけるためにも、ここぞという時に最適な挨拶ができるように感覚を養っておくとよいでしょう。

「お疲れ様でございます」の正しい使い方を覚えよう

「お疲れ様でございます」に関する基礎知識を踏まえ、実際に運用していく場面を考えてみましょう。

午前中はNG?「お疲れ様でございます」を使うべき時間帯とは

午前中に「お疲れ様でございます」のフレーズを使うのは避けるべき、という暗黙の了解があります。

ビジネスマナーというほど厳密なものではありませんが、本来「おはようございます」というべき場面で「お疲れ様でございます」といわれるとやる気がなくなってしまう、などの理由によるものです。

参考までに、「お疲れ様でございます」を使うべき時間帯は夕方以降、午後4時を過ぎてからというのがひとつの目安になっています。

先述の通り、多くの職場では「お疲れ様でございます」の代わりに「お疲れ様です」の挨拶が飛び交っているはず。

時間帯による挨拶の制限とはルールでもマナーでもなく、あくまで暗黙の了解であり、実際のところは形骸化しつつあるということですね。

社内の上司や社長のみ?ビジネスでは社外や取引先には使わない

「お疲れ様でございます」はねぎらいの言葉。取引先や顧客といった社外の相手に使ってはいけません。先の項とは異なり暗黙の了解ではなく、公然のビジネスマナーです。

そもそも「ねぎらう」という行為は、身内に対して行うものです。取引先や顧客など、外部の相手をねぎらうことは上から相手を見下ろす行為であり、失礼に当たります。

大事なポイントなので、しっかり押さえておきましょう。

「お疲れ様でございます」を葬儀で使うにはマナー違反

たとえ相手が部下や同僚などの身内であっても、葬儀の場面で「お疲れ様でございます」と声をかけるのはNGです。

遺族の心労による疲れを慮るのは大事なことですが、葬儀は労働の場面ではありません。

葬儀の場で相手の心労を慮って挨拶する際には「心からお悔やみを申し上げます」など、場面に相応しい言葉を選びましょう。

ビジネスシーンで使う「お疲れ様でございます」以外の挨拶や代わる言葉をピックアップ

ビジネスシーンでは「お疲れ様でございます」以外の挨拶も多数です。場面に応じた挨拶ができなければ、対人関係で思わぬひずみを生んでしまうことも。

ビジネスシーンで、「お疲れ様でございます」以外に使われる主な挨拶をピックアップしてみましょう。

1日の始まりの挨拶「おはようございます」

1日の始まりの挨拶は「おはようございます」の一択です。役職や距離感にかかわらず、誰に対しても使える挨拶というのもポイントですね。

「おはようございます」 はビジネスに限らず、どんな分野でも必要な挨拶言葉の1つといえます。

部屋や会議室に入室する場合「失礼いたします」

部屋や会議室に入室する際には「失礼いたします」の一言を発する方がよいでしょう。

挨拶が必要な状況といえば室内に人がおり、会議中であったり取り込み中であったりする場合がほとんどだからです。

特に議論が白熱している時などは、第三者が入室することによって会場の空気が変わったり、発言者の集中力が途切れたりしてしまう可能性も。

やむを得ず入室する場合はその場の状況を察し、「失礼いたします」の一言を添えるべきでしょう。

上司や同僚が社外に出る場合「行ってらっしゃいませ」「行ってらっしゃい」

上司や同僚が外出する際にかける言葉は「行ってらっしゃいませ」もしくは「行ってらっしゃい」の2つです。

目上の立場である上司や先輩が対象の場合は、より丁寧な言い回しである「行ってらっしゃいませ」を選ぶべき。

一方、同僚や後輩など近い立場の相手に対しては、フレンドリーに「行ってらっしゃい」という方がさっぱりしていてよいでしょう。

上司や目上の相手が社内に戻った場合「お帰りなさいませ」

上司や先輩など、目上の相手が社内に戻った場合は「お帰りなさいませ」というのがセオリー。

「お帰りなさい」だと、やや馴れ馴れしい響きになってしまいます。

上司や目上の相手が先に退勤する場合「お気をつけてお帰りください」

上司や先輩など、目上の相手が自分よりも先に退勤する場合、自分は見送る側の立場になるはず。目上の相手が帰途につくことを予測し、「お気をつけてお帰りください」と声をかけるとよいでしょう。

ただし「お気をつけてお帰りください」のフレーズには、お客様に対する挨拶のようなよそよそしい響きもありますよね。

近年の風潮を踏まえ、見送りの挨拶をスマートに済ませるなら「お疲れさまでした」でも構わないでしょう。

取引先や社外の相手への感謝の言葉

取引先や株主など、社外の相手に対する定番の挨拶は「いつもお世話になっております」「本日はありがとうございます」の2つです。

「格別の配慮を賜り~」「日頃お世話に~」など、書き言葉用の挨拶は対面の挨拶に相応しくありません。

丁寧も度が過ぎると重々しくなったり、嫌味になったりするもの。言葉選びにもさじ加減が必要といえるでしょう。

取引先や社外の相手が来訪した場合「ご足労おかけしました」

取引先や株主など社外の相手が来社し、用件を済ませて退出する際には「ご足労おかけしました」もしくは「わざわざ足をお運びいただき、ありがとうございました」とお礼を述べるのがマナーです。

状況を客観的に見れば、迎える立場の会社はその場から動かずにいる一方、目上の立場であるはずの取引先や株主などが体を動かして訪ねてきている格好ですよね。

会社は目上の相手に来社してもらったことについて、できる限りの誠意をもって礼を述べる必要があるといえるでしょう。

「お疲れ様」と「ご苦労様」・「お世話様」の意味の違いや使い方とは?

ビジネスで使われる挨拶には複数の種類がある、と述べました。

「お疲れ様」以外の挨拶としてポピュラーな、「ご苦労様」と「お世話様」についても確認しておきましょう。

比較によって「お疲れ様」との違いも見えてくるはずです。

「ご苦労様です」は相手の努力や尽力をねぎらう表現

「ご苦労様です」は、相手の努力や尽力をねぎらうフレーズ。「ねぎらう」というニュアンスがある以上、目上の相手に使うのは控えるべきです。

目上の相手に対する挨拶は「お疲れ様です」「お疲れさまでございます」、同格もしくは目下の相手に対する挨拶は「ご苦労様です」と区別すればよいでしょう。

「お世話様」は力を尽くしてくれたことに感謝の意を表す表現

「お世話様」は、相手への感謝の言葉。ビジネスシーンで使われる類語の「お世話になりました」と比べると敬意の度合いが低いため、使いどころには気を配る必要があります。

例えばお世話になった目上の相手に対し、「お世話様」と挨拶するのはNGです。

「ご苦労様です」と同様、「お世話様」と声をかける相手は同格もしくは目下の相手に限る方が無難でしょう。

社外メールに使いたい「お疲れ様でございます」の英語表現

最後に「お疲れ様でございます」を、英文のメールで表現してみましょう。

例文

・You seem tired.
(お疲れのようですね)

・You did great job.
(よく働いたね)

・“Thank you for your hard work.”
(あなたの働きに感謝します)

以上のように、英語表現の場合は日本語の「お疲れ様でございます」と比べると、少しニュアンスが変わってきます。

相手の仕事ぶりをねぎらうべきか、それとも労働に伴う疲労をねぎらうべきか、文脈に応じて見極める必要があるといえるでしょう。

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