「かかわる」を漢字に変換するなら、どんな字を当てはめますか。多くの方は「関わる」と答えるでしょう。もちろん「関わる」が正解ですが、実のところ「係わる」という答えでもOKです。
「かかわる」の漢字表記は「関わる」が一般的だとされています。では、どうして「係わる」はあまり使われないのでしょうか。
上記の疑問に答えるべく、あまり使われない方の「係わる」にクローズアップして記事をまとめていきます。
「係わる」の読み方・送り仮名は?
普段使うことがない分、出し抜けに「係わる」を使われると戸惑ってしまう方もいるかもしれません。
まず最初に、初めて「係わる」という語句に触れる方を想定して書き出します。
「係わる」の読み方や送り仮名は、冷静に判断すれば決して難しくはないはず。順番に見ていきましょう。
「係わる」の読み方
「係わる」は「かかわる」と読みます。「けいわる」でも、「かかりわる」でもありません。
真っ先に「関係」という熟語を連想できれば容易に見当がつくのですが、初見だと戸惑いの方が先立ってしまう場合も。
「関わる」と「係わる」のように、常用・常用外の関係にある漢字はいくつか存在します。
語句には常用・非常用の漢字および関係性があることを認識しておくと、初見で驚かずに済むでしょう。
「係わる」の送り仮名は?
「係わる」の読み方がわかれば、自ずと送り仮名もイメージできるはず。
「係わる」は「かかわる」と発音するので、「関わる」と同様に漢字「係」と平仮名「わる」で区別すればOKですね。
ちなみに、与えられた語句だけで読み方や送り仮名を判別するのが難しい場合は、語尾を活用させてみるとよいでしょう。
「係わる」の場合であれば「係わらず」「係わらない」「係わり」などの要領で活用することにより、語句の原型を把握しやすくなります。
原型を把握できれば、読み方や送り仮名についても自ずと理解できるもの。テクニックの1つとして是非覚えておきましょう。
「係わる」の意味と使い方をチェック!
次は「係わる」の意味・用法を確認します。「関わる」との違いがあるか、併せて考えるとよいでしょう。
「係わる」の意味は?
「係わる」とは関係を持つこと、もしくはつながりを持つこと。
「係わる」の「係」は読んで字のごとしで、にんべんに糸で構成されており「人を糸で繋ぐ」という意味。「関」と比べて人のつながりや、人同士をつなぎとめるニュアンスが強いのが特徴といえるでしょう。
上記のような細かな差はあるものの、現代語の運用上、「係わる」と「関わる」は同義として扱われています。
「係わる」の使い方を紹介
繰り返しになりますが「関わる」と同じ意味であるという理由から、一般的に「係わる」が使われることは稀です。
敢えて「係わる」が選ばれる場面としては、「命に係わる」という表現をする時が挙げられるでしょう。先述のとおり、「係」には人同士をつなぐという意味があります。命は人のつながりとも密接に関係するもの。
上記を踏まえ、人命救助などの報道の際には「係わる」が使われているかどうか、チェックしてみるとよいでしょう。
ちなみに「命に係わる」ではなく「命に関わる」という表記がなされたとしても、もちろん誤りではありません。「係わる」が使われ得る機会の代表例として、参考までに紹介したものとお考えください。
「係わる」と「係る」の違いとは?
「係わる」について語る上で、「係る」にも触れる必要があるでしょう。
「係わる」と「係る」の相違点として、「関わる」との関連性が挙げられます。「係る」は独自の意味を持つ語句であり、「関わる」と同義ではありません。
「係る」とはどのような意味を持つ言葉なのか、是非チェックしておきましょう。
「係る」の意味は?
「係る」(かかる)とは、つながる・結びつきがあるという意味です。
漠然とした関係や関連を表す言葉である「まつわる」などと比べて、「係る」の場合はより直接的なつながりを表します。
「係る」の使い方を紹介
多くの方が古文の授業で「係り結びの法則」を習ったはず。「係り結びの法則」における「係り」こそ、正に「係る」の意味です。
「係り結びの法則」では係助詞がトリガーとなって、結びの語句の形が決定されるという直接的な因果関係が成立しています。
別の例でいえば、「特許出願に係る発明」というフレーズもありますよね。「特許出願に関わる発明」や「特許出願にまつわる発明」は相応しくなく、やはり「係る」という語句を使うのが最適です。
よく似た意味の同音異語で「掛かる」「懸かる」などもありますが、「係る」と完全にイコールのものはありません。「係る」との違いを説明するには、上記の例を引き合いに出すとよいでしょう。
「係わる」と「関わる」の違いは?
「関わる」と「係わる」の違いは、常用漢字と常用外漢字の区別によるもの。直感的におわかりのとおり「関わる」が常用漢字で、「係わる」が常用外漢字です。
「関わる」の詳細にも目を向けつつ、「係わる」と「関わる」の違いを見ていきましょう。
「関」の意味は?
「関」の意味はユニークで、「関所」のように仕切りや境・隔てを表す意味と、「関節」「機関」のように相互作用のつながりやからくりを表す意味があります。
直接的で明確なつながりを表す「係」と比べて、やや表裏のニュアンスを含む語句といえるでしょう。
「関わる」は常用漢字
最初に述べたとおり、「かかわる」に対応する漢字は常用漢字の「関わる」です。
「関」という語句単体と比べ、「関わる」は他のものとのつながりを表す意味合いが強いことが窺えます。「関与」や「関係」といった熟語を見れば明らかですね。
「係わる」は常用外漢字
「係わる」は常用外の漢字です。常用・常用外を踏まえて簡単に説明すると、「かかわる」という語句に対する漢字としては「関わる」が一般的で、「係わる」は例外扱いということを表します。
「係わる」と「関わる」の意味に違いはない
細かく見てきましたが、結論として「係わる」と「関わる」の意味に違いはありません。
「係」と「関」のように一文字単位で見れば性質に多少の違いはありますが、「係わる」と「関わる」の形では同義なのです。
従って意味の正誤云々は問題ではなく、単に漢字として常用か常用外かという部分がポイントということですね。
「係わる」の類語
説明してきた内容を踏まえ、「係わる」の類語を考えてみましょう。いずれも記事の中で登場してきたワードです。
関係
「関係」は字のとおり、「関わり」と「係わり」を組み合わせた熟語です。
意味そのものは「関わり」および「係わり」と同じですが、因果関係や相関関係などのように他の語句との親和性が高く、ビジネスを中心とした文語調の文章を書く際に有用といえるでしょう。
相関
「相関」とは「相互に関わる」という意味です。
一方的でなく互いに関係しているというのがポイントで、相関図・相関関係のように、物事の結びつきを形成する上でも大事な要素といえます。
「係わる」の英語表現は?例文付きで紹介!
「係わる」もしくは「関わる」の英語表現はいくつかありますが、日本語表現と少しずつニュアンスが異なります。場面に応じて適切なものを選ぶ必要があるでしょう。
・“get involved with A”
(Aとかかわる)
例文:
“We will get involved with the matter..”
(我々はその問題に関与する)
・“be related to B”
(Bとかかわりがある)
例文:
“She must be related to the news.”
(彼女はくだんのニュースとかかわりがあるに違いない)
・“influence C”
(Cに影響を与える・Cに関与する)
例文:
“He influenced our mind greatly.”
(彼は私たちの心に多大な影響を与えた)
まとめ
「係わる」を理解するには、常用漢字・常用外漢字の区別を認識する必要があります。「係わる」をあまり見ることがないのは、常用外漢字だからです。
一方で人命に関わる話題や特許権の手続きなど、「関わる」ではなく「係わる」こそが最適とされる用法もあります。
意味自体は同じでも、場面や状況に合わせて最適な言葉を選ぶのが社会人のあるべき振る舞い方。「係わる」についてもスマートに使いこなせるようにしておきましょう。