催し物やイベントといった対外的なものから、身内同士の飲み会といったものに対しても多く使われるのが「参加させていただきます」のフレーズ。社会人生活の中で使われる敬語の中でも、頻出表現の1つでしょう。
「参加させていただきます」の意味用法だけを機械的に覚えるのでなく、性質にも着目してはいかがでしょうか。類似表現、英語表現も紹介しますので、是非チェックしてみてください。
「参加させていただきます」の意味と性質を紹介!
「参加させていただきます」の意味そのものは平易で、周知の通り。問題はやはり、敬語表現の部分でしょう。敬語分類や敬意の対象といった視点を持ち込むと、少しハードルが上がります。
意味に加えて、敬語表現としての性質についても考えていきましょう。
「参加させていただきます」の意味は?
「参加させていただきます」の趣旨は、参加させてもらうということ。謙譲の補助動詞「~せていただきます」によって、へりくだるニュアンスが付加された表現です。
謙譲表現を使うからには、へりくだる対象が存在するのが前提。敬意の対象は他の参加者であったり、あるいは幹事や主催者だったりと様々です。
ちなみに「動詞 + ~せていただく」の組み合わせは、誰に対してもへりくだる姿勢を表すという点で処世術的に使われることもしばしば。特にへりくだる必要のない場面では、むやみに乱用しないように意識する方がよいでしょう。
「参加させていただきます」は二重敬語?
ネット上などで「参加させていただきます」は二重敬語ではないか、との意見が見受けられます。疑問が浮上したときは、文章を分解してみるのが一番の解決法。
動詞「参加する」は、後続の補助動詞に引っ張られて未然形の「参加さ」になっていますよね。「参加さ」はあくまで活用形であり、敬語表現でないことは明らかです。
すなわちフレーズ内で敬語表現に該当するのは「~せていただきます」という、補助動詞の部分のみ。
「~せていただきます」は謙譲語「~せていただく」と丁寧語「ます」という、異なる敬語分類を組み合わせた補助動詞です。
異なる敬語分類を組み合わせる表現技法は連続敬語というもので、一つのフレーズに同じ敬語分類を重複させる二重敬語とは異なります。
「参加させていただきます」は正しい敬語
先述の通り、表現技法の観点からも「参加させていただきます」は問題のない言い回しであり、正しい敬語です。
要点をまとめると「参加させていただきます」に使われている連続敬語は、正式な表現技法であるという点に尽きるでしょう。
「参加させていただきます」の使い方を解説!
「参加させていただきます」の意味や性質を踏まえ、実際に使う場面を考えてみましょう。言い回しのトーンからすると、やや改まった場面が当てはまりそうですよね。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンで「参加」という語句を使うケースは、主に会議や会合、説明会や発表会といった人の集まりや、第三者が開催する催し物が前提となります。
ただしドレスコードに注意が必要な場合も。例えば葬儀の会場に行く場合は「参列」というのがマナーであり、「参加」や「出席」といった表現はNGです。
メールでの使い方
メールで「参加させていただきます」を使う機会は、主としてアポイントメントに関するものが多いでしょう。
内容そのものはビジネスシーンの用例と同じであっても、メールの場合は参加・関与の是非について、より直接的な回答を返す必要があります。というのも口頭での対話と比べて、曖昧な回答が許容されにくいからです。
メールでアポイントメントのやり取りをする場合は結論を回収するのが目的なので、本文も手短に済ませて構いません。
挨拶の一言以外は、「お誘いいただいた件、参加させていただきます」もしくは「喜んで参加させていただきます」程度の一文でよいでしょう。
「参加させていただきます」と「参加いたします」との違い
「参加させていただきます」の類似フレーズに「参加いたします」があります。ともに敬語であり、ビジネスでも頻繁に使われる表現です。
両者の違いはどこにあるのでしょうか。順を追って解説します。
「参加いたします」の意味
「参加いたします」は、一般動詞「参加する」の丁寧表現です。「する」の丁寧語は「します」もしくは「いたします」の2つ。より丁寧の度合いが強い表現が「いたします」ですね。
動詞の原型に注目するとわかりやすいのですが、「参加させていただきます」の場合は「参加させてもらう」という、やや控え目なスタンスが前提です。
一方「参加いたします」の場合は「参加する」という、意志を伴った能動的な姿勢が窺えます。
「参加させていただきます」と「参加いたします」には敬語分類の違いだけでなく、微妙なニュアンスの違いもあることを把握しておくとよいでしょう。
「参加させていただきます」と「参加いたします」どちらが丁寧?
「参加させていただきます」と「参加いたします」は、どちらも敬語として問題なく使える表現です。
丁寧の度合いでいえば、一般的には相手に対してへりくだる姿勢を表す方が高い敬意を表すと認識されています。従って謙譲表現である「参加させていただきます」の方が、より丁寧な表現といえるでしょう。
補足すると、「させていただきます」には相手に対する感謝の意を含む場合があります。特にパーティーやイベントなど、吉事や祝い事におけるアポイントメントの取り付けであれば出席要請ではなく、「お誘い」の形です。
吉事や祝い事などのお誘いに対し、敬意を持ってへりくだる姿勢を見せるのは、マナーとしてごく自然の対応といえるでしょう。
「参加させていただきます」の例文3選!
基礎知識を踏まえ、「参加させていただきます」を文章形式で運用してみましょう。
例文
「実はこの度、結婚することになりまして。相沢様には是非とも披露宴にお越しいただきたく、お誘いいたしました」
「それはおめでとうございます!また披露宴へのお誘い、ありがとうございます。喜んで参加させていただきます」
例文
この度は御社新商品発表会にご招待いただき、まことにありがとうございます。当社からは営業部長の森田、同課長の佐々木が参加させていただきます。当日は何卒よろしくお願い申し上げます。
「参加させていただきます」の類似表現は?
「参加させていただきます」と同じ、もしくは似たニュアンスを表す言い回しも存在します。代表的なものを2つ紹介しましょう。
出席させていただきます
ビジネスシーンの会議・会合などにおいては、「参加させていただきます」よりも「出席させていただきます」の方がよいとみなされる場合もあります。
会議・会合の場では「席に着く」という概念がありますよね。出席者が全員着席し、体勢を整えるというプロセスを経て、ようやく話し合いがスタートするのです。
参加・出席のどちらがより適切、という議論は特に一般的ではありませんが、わずかにニュアンスの違いがあることは参考程度に覚えておくとよいでしょう。
参加いたします
「参加いたします」は「参加する」の丁寧表現です。先述の通り、「参加します」よりもいっそう丁寧な言い回しに当たります。
「参加させてもらう」という控え目な立場を取る「参加させていただきます」と比べ、「参加いたします」の方が自らの意志を積極的に打ち出すニュアンスです。
経験の浅い社会人は、特にへりくだる必要のない場面でも謙譲表現を使いがち。「参加させていただきます」も、へりくだるべき相手がいない場面では使う必要がありません。
敬語表現に限らず、意思表示やコミュニケーションはシンプルであるのが一番。「参加させていただきます」よりも「参加いたします」と発言する方が望ましい場合は、実のところ少なくないのです。
「参加させていただきます」の英語表現
「参加させていただきます」と同じ、もしくは近いニュアンスを英語で表現してみましょう。
“will participate in~”
“I will paticipate in the party.”
(パーティーに参加する予定です)
“would gladly like to attend~”
“We would gladly like to attend to the discussion.”
(喜んで、討議に出席いたします)
“join”
“I will join the celebration.”
(お祝いに参加します)
まとめ
記事で取り上げた論点の中で、一番大事なのが「参加させていただきます」と「参加いたします」の違いです。なぜなら敬語分類だけでなく意志の強弱、ニュアンスの微妙な違いなど、ビジネスシーンを渡り歩く上でのエッセンスが詰まっているからです。
例文でも触れたように、謙譲語はへりくだる対象が明確でなければなりません。「とりあえず謙譲語を使っておけば無難」といった程度の軽い認識では、誤解やトラブルを招いてしまいます。
言葉の意味だけでなく、性質を理解する必要があると述べたのも上記の理由によるもの。
「参加させていただきます」と「参加いたします」の違いを説明できるようになれば、敬語表現の要点を理解できたも同然といえるでしょう。