司会者や幹事・進行役などが「お楽しみください」と発言する場面がありますよね。TV放送であれば囲碁や将棋の対局観戦、生活の中ではパーティーや催事などが代表的でしょう。
当記事では「お楽しみください」が使われる場面、ドレスコードを解説。また言い換え表現のほか、英語表現・中国語表現も紹介します。
「お楽しみください」の意味用法を理解し、正しく使えるようにしましょう。
「お楽しみください」の意味と使い方
「お楽しみください」の大意は誰もがご存じの通り。相手に対し、置かれた状況を楽しんでほしいと促すニュアンスです。
「お楽しみください」を理解するには語句の意味以上に、トーンやドレスコードを把握する事が大切です。順を追って解説します。
もてなしの気持ちや自由行動を促す意味合い
「お楽しみください」は、単に楽しんで欲しいという意味ではありません。主催者が用意したプログラムや食事などを受け取り満喫して欲しいという、いわばもてなしの意味合いが含まれます。
また「ご歓談をお楽しみください」のように、自由行動を促す場合も。もちろん、試合やゲームの観戦などに対して使われるように「状況をありのまま楽しんで欲しい」という意味もあります。
「楽しんでください」は口語なのでNG
「楽しんでください」を紐解くと、動詞「楽しむ」+丁寧の補助動詞「~してください」で構成されていることがわかります。
一見すると、丁寧語が含まれる敬語表現なので問題なさそうですよね。実のところ「楽しんでください」を、改まった場面での使うのはNGです。
というのも「~してください」のみでは敬意の度合いが低く、口語表現とみなされるため。また本意でなくとも、指示・命令と解釈される場合があるからです。
「お楽しみください」は敬語表現としてOK?
先の節を踏まえ、「お楽しみください」は敬語表現として問題ないかを考えてみましょう。
「お楽しみください」を単語レベルで分解すると、尊敬の助詞「お」+動詞「楽しむ」+丁寧の補助動詞「~ください」の構成であることがわかります。
ポイントは尊敬の助詞「お」で、フレーズの中に尊敬語が含まれることによって敬意の度合いが引き上げられます。後に補助動詞「~してください」が続いても、全体のトーンとしては相手に敬意を払った言い回しと受け止められるのです。
以上より、「お楽しみください」は敬語表現として問題のない表現といえます。ちなみに語尾を少し変えて「お楽しみくださいませ」にすると、より丁寧な言い回しです。
「お楽しみください」を使う場面は?
基礎知識を踏まえ、「お楽しみください」が使われる主な場面を紹介します。
接客
フルコースの料理を提供する飲食店のように、時間をかけて本格的に接客するサービス業では「ごゆっくりお楽しみください」といった挨拶の言葉が定番です。
いわゆるおもてなしの決まり文句であり、ファストフードのように慌ただしい応対ではなく、誠意を込めてサービスする気持ちを表します。
すなわち、単に料理の味を楽しむだけでなく、店内で同席者と寛ぐ時間を楽しんで欲しいという意味合いも含まれるのです。
飲み会や催事の司会
飲み会や催事における「お楽しみください」の言葉は、簡単にいえばパーティーを始めるかけ声です。飲み会・催事のいずれも、一旦は席に着いたり会場に集合したりといった団体行動が必要なもの。
幹事や司会進行役がひと声かけることで、はじめてパーティーが本格的にスタートします。理屈の上ではTV番組の司会と同じで、「どの時点から本格始動するか」という区切り・スタートラインをを付ける役割を担っているのです。
結婚式の司会
結婚式における「お楽しみください」の用法も飲み会や催事と概ね似た位置づけです。違いとして結婚式では、会のプログラムが明確に定められている点が挙げられます。
新郎新婦のVTRやスピーチなどといった静かに話を聞くべき場面と、料理・余興・自由歓談などのざっくばらんに楽しむべき場面とで、会場のスイッチを切り替えねばなりません。
司会者による「お楽しみください」の一言は、会場のスイッチを切り替えるきっかけとして役立つのです。
「お楽しみください」の類義語・言い換え
「お楽しみください」にも類義語・言い換え表現が存在します。「お楽しみください」と同じニュアンスを、別の言い回しで表現してみましょう。
乞うご期待
相手の期待を煽る言い回しとして、「乞うご期待」というフレーズがあります。「乞うご期待」とは「期待を乞う」の倒置表現で、「期待してください」の意味です。
「期待してください」には文章然とした響きがありますが、「乞うご期待」という場合は1つのフレーズ・決まり文句の色合いが強く出ています。このため意味は同じでも、伝わる印象は異なるでしょう。
余談ですが、「乞うご期待」は昭和後期~平成初期にTVの予告CMを中心として流行したことがあります。馴染みのある方もいらっしゃるかもしれません。
ご堪能ください
「ご堪能ください」は、相手に提供したものを楽しむよう促す言い回し。意味合いだけでなく、尊敬+丁寧表現という敬語の組み合わせである点からも、「お楽しみください」とほぼ同じ表現です。
「ご堪能ください」の対象は幅広く、料理や酒類のほか、映画・演劇・音楽・美術・レジャーといった娯楽や鑑賞物などをもカバーします。
ちなみに同じ意味合いでも、「楽しむ」より「堪能する」という方が改まった響きがあります。「お楽しみください」と「ご堪能ください」についても、状況に応じてより適切な言い回しを選ぶとよいでしょう。
ご賞味ください
「ご賞味ください」は、「味わってください」をより丁寧に表現する言い回しです。飲食物を提供する際の改まった挨拶言葉であり、「ご堪能ください」よりも直接的に飲食を促すニュアンスがあります。
ご歓談ください
「ご歓談ください」は、結婚式・パーティーにおける歓談時間の始まりを宣言するフレーズです。式においては司会者や幹事が宣言しない限り、自由行動はできません。
司会者や幹事が「ご歓談ください」と一言告げることで、はじめて自由行動できるようになるのです。
「お楽しみください」の英語表現は?
「お楽しみください」の英語表現は、比較的平易な単語やイディオムで完成します。代表的なものは次の2つです。
“Enjoy.”
“Enjoy your vacation.”
(バカンスをお楽しみください)
“Have fun.”
“Have fun.”
(楽しんでください)
両者について補足すると、“enjoy”は日本語の「堪能する」「満喫する」に近いニュアンスです。一方、“fun”には「面白がる」「愉快がる」といった意味合いがあります。
派生語の“funny”からも窺える通り、“fun”には娯楽や戯れのニュアンスがあるため、場合によっては失礼に当たるケースも。
英語圏では日本ほど上下関係について厳しくないとはいえ、特に親しくない相手に対して“Have fun.”の発言はNGです。トラブルを避けるためにも覚えておきましょう。
「お楽しみください」の中国語表現は?
「请享受。」
Qǐng xiǎngshòu
(お楽しみください)
「请慢慢享用。」
qǐng mànmàn xiǎngyòng
(どうぞごゆっくりお楽しみください)
まとめ
「お楽しみください」と発言することは、相手が楽しむ場を提供するという一定の責任を伴う行為です。必然的に司会者や幹事、あるいは料理長といった責任ある役割の人物が使うことになります。
「お楽しみください」には一つの決まり文句としての側面もありますが、一方で少なからぬ責任を伴う言葉であることも知っておくとよいでしょう。