ビジネス敬語は、自分の立ち位置を表すツールとなります。上司と部下、社員と外部などの人間関係を表すだけでなく、相手との距離感を遠ざけたり近づけたりするなど有効性は高いです。
敬語をきちんと使えれば、オフィシャルな場に適した人物と高評価されます。もちろん、それが人脈や営業成績などに直結することは言うまでもありません。
たとえば、スーツをきちんと着こなしたビジネスマンが敬語を使いこなしているのは、一流の大人に見えますし、信頼できるビジネスパーソンという印象を与えます。
敬語には、使う人をレベルアップさせる働きが期待できるからそう見えるのでしょう。当然ですが、はじめから完璧に敬語を使いこなせるわけではありません。
謙譲語と尊敬語
ビジネス敬語には、おもに謙譲語と尊敬語の2種類があります。
その二つを混同したり間違って使っている方も時々見受けられますので、この機会によく覚えておきましょう。
謙譲語とは
こちら側を低めることで、相対的に先方を高める言葉です。
謙譲語の型は二つあります。一つは「お(ご)~する」の形式で謙譲語にする一般的な型です。
- 「伝える」⇒「お伝えする」
- 「会う」⇒「お会いする」
二つ目は、言い換えて謙譲語にする特有の型です。
- 「言う」⇒「申し上げる」
- 「聞く」⇒「伺う」
尊敬語とは
正に相手側を引き立てる言葉です。
尊敬語も、謙譲語と同じように型は二つあります。
一つは「~れる」「お(ご)~になる」の形式で尊敬語にする一般的な型です。
- 「聞く」⇒「お聞きになる」
- 「会う」⇒「お会いになる」
二つ目は、言い換えて尊敬語にする特有の型です。
- 「食べる」⇒「召し上がる」
- 「行く」「来る」⇒「おいでになる」
謙譲語と尊敬語の2つのポイント
敬語に慣れ親しんでいないと謙譲語と尊敬語を勘違いして使ってしまう事例がよくあります。
よくある例が、取引先に自分の上司の話しに言及する場合、「~とおっしやっていました」というものです。上司というのは分かりますが、これは全くダメな例です。
謙譲語と尊敬語は、一番初めに「誰を高めるのか」、その次は「内は低めて外を高める」という基本を守りましょう。
取引先やお客様は外ですから高めるべき相手として尊敬語を使います。上司でも取引先やお客様の前では内(身内)ですので低めた表現の謙譲語を使います。
この二つのポイントをしっかり押さえておけば、上記の例は「おっしやっていました」ではなく「申しておりました」が正しいと理解できるでしょう。
敬語の使い分け
敬語と言ってもいろいろな場面によって使い分けなければいけません。
ここでは、敬語の使い分けについて学びます。
そこに誰がいるのか?
敬語を使う場合には、そのシチュエーションが大切です。そこに社内の人間しかいないのならば、上司や先輩には尊敬語を使います。
その場に取引先やお客様など社外の人がいる場合には、その外部の人を上位に扱いましょう。基本的に社外の人には尊敬語です。
取引先やお客様の前で、上司や同僚の言動について話すときは謙譲語を使います。上司も、○○さんなどではなく呼び捨て、また役職などもいりません。
NGな敬語
最近は、コンビニやレストランやショップなどで「~のほう」「~になります」などと話す場面に遭遇しませんか?これは、敬語と言うよりも間違った日本語です。
普段から使っていると、ビジネスの場でも知らず知らずのうちに使いかねませんので気をつけて下さい。
例えば、「お名前のほうを頂戴できますか?」「こちらが資料になります」などの使い方ですね。
「~のほう」は、丁寧表現ではありませんから「お名前を伺えますか」ですし、「なる」は変化するときに使う言葉ですから「こちらが資料です」が正解です。
敬語の覚え方
謙譲語や尊敬語のことが分かっても、実際に使うのはなかなか大変です。新人の内は戸惑うことも多いかもしれません。
これは慣れていくしかないのですが、どうせなら効率よく覚えていきたいと思うのが当然です。
この章では、敬語の覚え方についてご説明します。
敬語を覚える順番
新人の時から敬語をしっかりと使いこなすのはなかなか難かしいと思います。そんな場合の良い方法として、まずは「態度的敬語」からスタートしてみましよう。
態度的敬語とは、読んで字のごとく態度で敬意を表すことです。例えば、会話では姿勢を真っ直ぐにして目を見ながら話したり、コピーなど何か用事を頼まれたら「ハイ」と返事をして素早く行動するとかの態度示すことです。
これなら誰にでもその気さえあればできるのではないでしょうか。
態度的敬語が身についたら、次は「丁寧語」です。語尾に「です」「ます」付けるだけでも敬意は伝わります。
態度的敬語と丁寧語の二つを並行して実行してみると効果的です。
丁寧語は、目の前の相手だけを考えて話せばいいのでハードルは低いですし、態度的敬語は行動すればいいだけですから慣れるのも早いでしょう。
尊敬語と謙譲語に慣れよう
丁寧語に慣れてきたら、謙譲語と尊敬語にトライしてみましょう。
謙譲語も尊敬語も相手側を高める言葉ですが、謙譲語は自分側を低めることで結果的に相手を高める言葉です。
尊敬語は、相手側を高める言葉です。この2つにポイント押さえれば慣れるのも早いでしょう。
少しずつでいいので、会話の中で謙譲語や尊敬語を実際に使ってみるのが一番です。
敬語の意外な使い方
敬語には隠れた使途があります。それが「相手との距離を置く」ときに使うパターンです。
例えば、あまり親しくなりたくない相手に敬語を使えば、他人行儀とか境界があるように感じられるため、一定の距離を置くことができます。
そういった使い方ができるようになると、敬語を使いこなせるビジネスマンになったと言うことです。つまりは、人間関係の形成の仕方が上手な人と言うことです。
この域に達するように頑張ってみてください。
まとめ
ビジネス敬語は、学生時代には経験がほとんどないと思いますので、マスターするのがなかなか大変かもしれません。
しかし、マスターしてしまえば最強のビジネスツールとなりますので、少しずつでも慣れるようにしてください。