今や接続詞の1つとして定着している「なので」は、元々口語・俗語です。
浸透したとはいえ、ビジネスシーンや外部の相手とのやり取りで「なので」を使ってはいけません。「なので」と同じニュアンスを伝えるためには、言い換え表現が有効です。
本記事では「なので」の意味・使い方を踏まえ、状況に合わせて言い換えることにフォーカスします。
ビジネスシーンを中心として「なので」を言い換える場合や、敬語に言い換えた表現をピックアップ。類語・英語表現も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
「なので」の意味と使い方を解説!
言い換え表現に踏み込む前に、まずは「なので」の意味・使い方を確認しましょう。文法上の扱いについても解説します。
「なので」の意味・役割は?
「なので」は断定の助詞「~だ」と、順接の接続詞「ので」を組み合わせた語句。直前に述べた内容を受けて、後続の文章につなげる意味があります。
「だから」「~であるので」のように、因果関係を説明する役割ということですね。
「なので」の使い方は?
「なので」の意味を踏まえ、どのように使うかを考えてみましょう。理由と結果をつなぐ点と、文頭では使えないという2点について説明します。
原因と結果をつなぐ言葉として使う
先述の通り「なので」は因果関係を説明する語句です。もう少し詳しくいうと原因と結果、それぞれの文章を結びつける機能を持ちます。
例として「昼から雨が降るそうなので傘を持っていくことにした」の一文を挙げると、「昼から雨が降るそうだ」「傘を持っていくことにした」と、理由と原因の要素を併せ持っていますよね。
すなわち理由と原因でそれぞれ成立する文章の内容を、接続詞「なので」によって一文につなげられるということです。
文頭では使えない
「なので」を文頭に配置することはできません。例えば、「昼から雨が降るそうだ。なので、傘を持っていくことにした」といった使い方はNGです。
実際には口語表現としてしばしば使われる言い回しですが、本来口語としても適切な表現とはいえません。
「なので」を文頭に置く言い回しは当時の人気文化人が多用したもので、ツイッターを中心としたSNSの人気に火が点いた時期とも重なります。
文章媒体としてのSNSの特徴は、話し言葉と書き言葉が曖昧であること。本来ブロークンな接続詞である「なので」も、自然なものとして受け入れられたようです。
「なので」の注意点は?
「なので」の意味と使い方を踏まえ、注意点をまとめます。既に挙げたものもありますが、いま一度整理しておきましょう。
「なので」はブロークンな接続詞
繰り返しますが、「なので」は元々口語・俗語。一般的に浸透したため接続詞とみなされているものの、本来はイレギュラーな言葉です。
シーンや媒体ごとに避けるべき理由を後述しますが、そもそも「対外的にはNG」という一点を押さえておくと理解しやすいでしょう。
ビジネスシーンでは避ける
「なので」をビジネスシーンで使うと軽薄な印象を与え、信頼性の低下を招きます。社外の相手にはもちろん、社内でも使うのはおすすめできません。
休憩時間など、ざっくばらんに話せる場面であればOK。業務上のコミュニケーションにおいては、軽薄な言葉を挟まないようにすることが大事です。
文書・メールでは使わない
「なので」はあくまで口語です。文書・メールといった文章媒体では「なので」を使わないようにしましょう。
対応策としては「なので」と同じ意味を持ち、書き言葉として使える接続詞で言い換えるのがポイントです。
ビジネスで使える「なので」の言い換え表現は?
「なので」が使えないシーンや媒体においては、言い換え表現で対応しましょう。
「なので」と同義であるだけでは不十分で、ビジネスシーンでも使えるトーンであることが条件です。代表的な言い換え表現3つを紹介します。
「したがって」
「したがって」は書き言葉としても話し言葉としてもスマートな接続詞です。先に述べた内容を受けて続きを述べる、という従属関係を表します。
注意点は「したがって」と平仮名で表記すること。漢字で「従って」と表記する場合は、動詞「従う」の活用形に限られます。
「そのため」
「そのため」は指示代名詞「その」と接続詞「ため」を組み合わせた語句です。前述の内容を理由として続きを述べる際、接続詞として使われます。
やや固い表現で、話し言葉としては不向き。書き言葉として文書・メールの中で使うのが一般的です。
「ゆえに」
「ゆえに」も「そのため」と同様、書き言葉として使われる語句です。主な用例としては数学や物理などの演算や論述の際、ロジックの因果関係を結びつける役割があります。
書き言葉の中でも文語調の固いトーンであり、ビジネスシーンでもあまり使われません。
マナー違反や失礼に当たるわけではありませんが、堅苦しい印象を与える可能性があることを覚えておきましょう。
「なので」を敬語で言い換えると?
ビジネスでは上司や外部の相手に対し、「なので」とは発言できない旨を先述しました。「なので」を敬語に言い換えた表現を考えてみましょう。
「したがいまして」
「したがいまして」は「したがって」の敬語表現です。「したがって」を丁寧に整えつつ、話し言葉としての親しみやすさも含んでいます。
書き言葉としては本来望ましくありませんが、文章媒体の中でもメールにおいては許容される傾向です。
「ですから」
「ですから」は「だから」の丁寧表現です。そもそも原型の「だから」が話し言葉であるという点で、「したがって」とは異なります。
話し言葉としても、ビジネスシーンで使うことはおすすめしません。特に上司や取引先など、目上の相手に対して「ですから」と発言するのはNGです。
ビジネスシーンで使う場合は同じ部署の先輩など、ごく近しい相手までに留める方がよいでしょう。
「ですので」
「ですので」は「なので」の丁寧表現です。「ですから」と同様、敬語になっても元々が口語であるためビジネスシーンでは使えません。
「ですから」との大きな違いは、文頭に配置できないこと。「なので」が文頭に使えないのと同じ理屈で、「ですので」は句点で区切られた別々の文章をつなぐことができません。
ビジネスではNG!「なので」と同じトーンの類語
「なので」と同様、接続詞として使われているものの、ビジネスシーンではマナー違反とみなされる語句が存在します。代表的な語句は下記の3語です。
「だから」
「だから」は俗語や若者言葉ではなく、元々存在する言葉。元々「であるから」から派生した語句です。
「なので」とは異なり、「だから」は文頭に配置して前後の文章をつなげられるのが特徴。口語につきビジネスでは使えない、という点でピックアップします。
「なもんで」
「なもんで」は、「なもので」を崩した俗語です。関連語「~なものだから」「~なもんだから」と、同義だと補足すればわかりやすいでしょう。
非常にカジュアルな言い回しなので、ビジネスでは使えません。語感がユーモラスなことから、お笑い芸人がよく使う言葉でもあります。
「そんなわけで」
「そんなわけで」は、「そのような理由で」を崩した表現です。話し言葉の指示語「そんな」、理由の俗語「わけ」ともにカジュアルな言い回しで、ビジネスシーンでは好まれません。
ビジネスシーンで言い換えるなら「そのような理由により」のように、語感の引き締まった表現を選ぶ必要があります。
「なので」を含むその他の言葉を紹介!
「なので」の関連語、「なのだ」から派生して使われるようになった語句もあります。主なものを2語確認しておきましょう。
「なのでは」
「なのだ」の疑問形で、「なのでは」と問いかける用法があります。「なのではないか」「なのでは?」
のように活用するのが主で、接続詞「なので」とは使い方が異なります。
「なのですが」
「なのですが」は「なのだ」の逆接表現です。前述までの内容に対し、後述の内容がそぐわない場合に使われます。
「なのですが」と「なので」は接続詞である点において共通です。ビジネスシーンでは使えなくとも、セットで覚えておくとよいでしょう。
「なので」を英語で言い換えると?
「なので」が順接の接続詞である点に注目し、英語での言い換え表現を考えてみましょう。代表的な語句3つを例文付きで紹介します。
“therefore”:だから
“I have no money, therefore I can’t buy PC.”
(お金がない。だから、PCを買うことができない)
“as”:なので
“As she is good at cooking, she wants to be a cook.”
(彼女は料理が得意なので、料理人になりたいと考えている)
“since”:ゆえに
“Since he is wealthy, he is planning for stock investment.”
(裕福であるがゆえに、彼は株式投資を計画している)
まとめ
「なので」のように元々俗語だった語句が浸透し、口語や品詞の1つとして認知されることは珍しくありません。
「言葉は生き物」といわれる通り、時代の流れとともに位置づけや扱い方も変化します。
「なので」のように崩した言い回しの語句に触れる際には、本来の意味を正しく把握し、場面に合わせて適切な表現に言い換えることが大事といえるでしょう。
「なので」を使ってよい場面とNGの場面を区別し、上手に活用するよう心がけてください。