「見送る」には2つの意味があるのをご存じでしょうか。人に対して使う場合は「送別」を表す一方、人以外が対象の場合は「中止」「延期」「不参加」の意味になります。
当記事ではビジネスで使われることの多い、中止・延期・不参加を表す「見送る」について解説します。類語や組み合わせのフレーズを交えて紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
「見送る」の意味は対象によって変わる!
「見送る」は使う対象によって意味が変わる、ユニークな言葉です。意味の違いを生むトリガーは、対象が人であるか否か。具体的に見ていきましょう。
対象が人の場合は「送別」「送り出す」
人に対して「見送る」という場合は「相手との別れに立ち合い、自分は残って送り出す」という意味を表します。
来客応対の終わりを例にとると、玄関まで付き添って別れの挨拶を済ませ、相手が去っていく様を見届けるといったものが代表的でしょう。
対象が機会や出来事の場合は「中止・延期」「不参加・欠席」
「見送る」の対象が人以外のものである場合は「中止・延期」「不参加・欠席」といった意味を表します。
人以外の対象とは、機会や出来事のことです。例えばコンサートや握手会といったイベント・催し物などがわかりやすいでしょう。主体が為手側か、受け手側かによっても使い方に違いがあります。
コンサートの運営側が「見送る」という場合は「中止・延期」の意味。一方、コンサートの参加者が「見送る」という場合は「不参加・欠席」の意味が当てはまります。
「見送る」の使い方は?
「見送る」の基本的な意味を踏まえ、主にビジネスで使われる「中止・延期」「不参加・欠席」での用法を解説します。
ビジネスにおいては主に「中止・延期」「不参加・欠席」
ビジネスにおける「見送る」は、「中止・延期」「不参加・欠席」の意味で使われます。
ビジネスは計画・予定なくして成立しません。ビジネスパーソンは日々スケジュールに追われながら、ノルマを達成したり進捗具合をチェックしたりしています。
時にはスケジュールが思い通りに進まず中止・延期、もしくは不参加・欠席を余儀なくされる場合もあるはず。このような場面で使われる表現が「見送る」なのです。
開催する側・参加する側両方で使われる
「見送る」は為手側・受け手側によって意味が異なると先述しました。為手側・受け手側とはすなわち、開催する側と参加する側の関係をいいます。
会議・催し物・イベントを企画・運営・開催する側が「見送る」と発言する場合は、開催そのものを中止・延期するということ。
一方、会議・催し物・イベントに参加する側が「見送る」という場合は参加しない、すなわち不参加・欠席を意味します。
カタカナ語「スルー」のニュアンスに近い
ビジネスで使われる「見送る」は、実のところカタカナ語の「スルー」に近い言葉です。敢えて見逃す・無視するという意味では、正にスルーと同義といえます。
ちなみにカタカナ語のスルーは、語源である英語“through”の意味とは異なります。英語“through”は通過する・駆使するといった意味ですが、そもそも副詞であり動詞ではありません。
“go through~”のようにあくまで動詞と組み合わせるのが基本であり、日本で使われているカタカナ語のスルーとは性質が大きく異なります。
「見送る」と組み合わせて使うフレーズを紹介!
「見送る」の基本的な意味と用法を踏まえ、応用編として他の言葉と組み合わせたフレーズを考えてみましょう。
代表的なフレーズは下記の4つです。
開催を見送る
「開催を見送る」は、為手側が使う表現です。企画運営する側が、予定していた会議・イベント・大会を取りやめることを表します。
中止と延期両方の意味で使われるため、結論として中止・延期のどちらなのかはその都度要確認です。
実施を見送る
「実施を見送る」も為手側が使う表現です。予定していた施策・戦略・計画などを取りやめる意味で、会議やイベントなどの開催見送りに対しては使いません。
あくまで「実施」のアクションが当てはまるものが対象になります。
参加を見送る
「参加を見送る」は受け手側が使うフレーズ。会議・イベント・大会に参加する資格や権利があるものの、最終的に不参加の判断を下すことをいいます。
購入を見送る
「購入を見送る」は、購入しないと判断することです。「購入を避ける」よりも拒絶のニュアンスが弱く、当たりの少ない言い回しのため商談や取引など相手を前提としたやり取りにおいてよく使われます。
「見送る」の類語をピックアップ!
「見送る」には同義語・類語が存在します。
代表的な語句を3つチェックしておきましょう。
見合わせる
「見合わせる」は「見送る」とよく似ていますが、やや拒絶のニュアンスが控えめです。
再考する・検討するといった意味に近いため、結論を先送りにする曖昧な返し方とみなされます。
相手を傷つけないようやんわりと断るには有用ですが、YES・NOをはっきりさせるべき場面には不向き。特にビジネスにおいては誤解を生み、逆効果となるおそれがあります。
取りやめる
「取りやめる」は中止すること。元々予定していた内容を取り消す意味があり、いわゆるキャンセルと同義です。
別の機会が期待できる「延期」や「中断」とは異なり、白紙に戻す意味であることに注意しましょう。
断る
「断る」とは、相手からYES・NOを問われてNOと回答することです。他人が関与せず、自己完結できる判断であれば「断る」の表現は当てはまりません。
問いかけの内容は申し出・提案・お誘いなどが代表的。内容に対して是非を問われる状況に限り、「断る」の表現が成立します。
「見送る」を使った例文5選!
「見送る」や組み合わせのフレーズを使って、実際に文章を作ってみましょう。
例文
諸般の事情で参加を見送ることにいたしました。せっかくお誘いいただいたのに申し訳ありません。
例文
コロナ禍による人員不足のほか機材確保の目途が立たないため、大変恐縮ながら夏季興行を見送ることに決定いたしました。秋季興行にお越しいただけることを心待ちにしております。
「見送る」の外国語表現は?
最後に、「見送る」の外国語表現を紹介します。
英語と韓国語の簡単なイディオムをピックアップしてみましょう。
英語
・“decide not to~”(~しないことを決める)
・“Maybe next time.”(次の機会に)
韓国語
・“중지”(中止する)
・연기하다(延期する)
まとめ
「見送る」は対象が人か人以外で違う意味を持つ言葉です。対象が人以外の場合は、さらに「中止」「延期」「不参加」などと分岐します。
多くの場合は前後関係から読み取れる一方、丁寧であっても結論が不明瞭な文章も少なくありません。
特にビジネスの場合、丁寧さを重視するあまり真意を伝えられないようでは本末転倒です。「見送る」の言い回しにこだわらず、結論を正確に伝えることにも留意するとよいでしょう。