「お伺いしたい」の意味と使い方を解説!二重敬語って本当?組み合わせフレーズも紹介!

ビジネスシーンで目上の相手に相談・打診する際、よく使われるのが「お伺いしたい」のフレーズです。

「お伺いしたい」は二重敬語との指摘がある一方、テレビや広告といったオープンな媒体で使われることもしばしば。正誤について疑問をお持ちの方も多いでしょう。

当記事では「お伺いしたい」の意味・使い方のほか、二重敬語かどうか・言い換え表現についても解説します。ぜひ最後までお読みください。

この記事の内容

「お伺いしたい」の意味は?

「お伺いしたい」には2つの意味があります。目上の相手に対して訪問を希望する意味と、質問を希望する意味です。それぞれ詳しく解説します。

動詞「伺う」とは

そもそも「お伺いしたい」とは、目上の相手に対して「伺う」ことを丁寧に相談する趣旨のフレーズです。

「伺う」とは、「訪ねる」もしくは「尋ねる」という意味。いずれも相手あっての行為で、自己完結することはできません。

ちなみに同音異義語の「窺う」は、「様子を探る」という意味を表します。

「伺う」とは異なり自己完結できることから、意味・性質ともに全く別の言葉であるものの、誤用例が非常に多いため要注意です。

訪問に関する相談

「お伺いしたい」は目上の相手に対し、訪ねたい・訪問したい旨をへりくだって伝える表現です。

もう少し簡単な言い回しとしては「お邪魔したい」と似通っていますが、謙譲表現である「お伺いしたい」の方が低い姿勢を表します。

質問に際してのクッション言葉

「お伺いしたい」には、目上の相手に対して質問の意志を伝える意味も。

いきなり質問を投げかけるのでなく、「質問したい・聞きたいことがある」といった趣旨でワンクッション置く意味合いがあります。

特に身分や役職の高い人物が相手の場合、まずは相手の都合を優先するのがマナー。

質問の前に「お伺いしたい」のクッション言葉を挟むことは、やり取りを円滑にするためにも必要といえます。

「お伺いしたい」は二重敬語?

「お伺いしたい」を語る上で欠かせないなのが、二重敬語か否かの論点です。二重敬語に関する行政の見解を踏まえ、考察してみましょう。

文法上は二重敬語

結論からいえば、「お伺いしたい」は二重敬語に当たります。

まず1点目として、「伺う」は謙譲語。2点目として、自動詞である「伺う」の前に置く接頭語「お」は、自分の行動をへりくだって表現する謙譲語です。

以上より、謙譲語が続けて2回重複していることから、「お伺いしたい」は二重敬語だと結論付けられます。

「お伺いしたい」は黙認されている?

文部科学省は二重敬語に対し、一般に適切ではないとする一方、「語句によっては習慣として定着しているものもある」と述べています。

すなわち二重敬語の中にも、例外的に許容される語句があるということです。

許容の例として「お伺いする」が挙がっていることを踏まえると、「お伺いしたい」も同様に黙認されていると考えられます。

「お伺いさせていただく」は問題ない?

「お伺いする」と同様、「お伺いさせていただく」もよく聞く言い回しですよね。敬語表現として適切か、確認しておきましょう。

謙譲語が3連続の三重敬語

「お伺いする」が謙譲語が重複した二重敬語なので、さらに謙譲の補助動詞「させていただく」が加わった「お伺いさせていただく」は、いわゆる三重敬語に当たります。

いかに二重敬語の「お伺いする」が許容されているとはいえ、三重敬語となれば完全にNGです。

「お伺いいたしますなら」OK

「お伺いしたい」が許容されていることを踏まえ、補助動詞の部分を丁寧語に変化させた「お伺いいたします」なら問題ありません。

ビジネスシーンでは比較的よく使われる表現です。

より丁寧に表現したい場合は「伺いたく存じます」

丁寧な類似表現としては「伺いたく存じます」が挙げられます。

「存じます」も謙譲の動詞「存ず」+丁寧の補助動詞「ます」の構成であり、「伺いたく存じます」だと謙譲語が重複しますが、実際のところは許容されているようです。

「お伺いしたい」は交渉・相談に便利!

「お伺いしたい」がビジネスシーンでよく使われるのは、交渉・相談の場面で役立つから。主にアポイントメントの取り付けや、質問の前置きとして使われます。

アポイントメントに使える

「お伺いしたい」の一言で、訪問の意志を表すことができます。自分から出向いて足を運ぶ姿勢を見せることで、言外の表敬を表す効果も。

先に訪問する意向を伝えることで、日時・用件・論点といった詳細を決めやすくなります。

アポイントメントに使われることの多い組み合わせのフレーズとしては、下記3つが代表的です。

お伺いしたいのですが

「お伺いしたいのですが」と切り出すことで、「ご都合はいかがでしょうか」「ご在宅でしょうか」のように相手のスケジュールや所在に関する話題に移りやすくなります。

お伺いしたいのですがよろしいでしょうか

「お伺いしたいのですが」の後に「よろしいでしょうか」とつなげるのは、定番の組み合わせフレーズです。

話し言葉・書き言葉いずれにも使え、メールで使われることも少なくありません。

お伺いしたいと存じます

「お伺いしたいと存じます」は、先述した「お伺いしたく存じます」と同義です。二重敬語の中でも許容されている表現であり、ビジネスシーンでは比較的よく使われています。

質問のクッション言葉として使える

「お伺いしたい」は、質問を投げかける前のクッション言葉としても役立ちます。

目上の相手に対するコミュニーケーション手法として、必要以上の摩擦を減らすためにも有効なアプローチです。

「お伺いしたい」と組み合わせて使うクッション言葉は、下記の2つが代表的です。

お伺いしたいことがございます

「お伺いしたいことがございます」は、「質問したいことがある」旨をへりくだって表現するフレーズです。

「お伺いしたいことがあります」でも失礼には当たりませんが、語尾を「ございます」とかしこまった丁寧語にすることで、より高い敬意を表します。

ちょっとお伺いしたいのですが

「ちょっとお伺いしたいのですが」は、口頭での軽い質問の前に投げかける際に有効なフレーズです。

敬意は表しつつも、堅苦しい印象を与えずに済むのが特徴。

目上の人物や敬意を持って接するべき相手でも、ある程度距離が近い場合は許容されることもしばしばです。

「お伺いしたい」の類語・言い換え表現は?

「お伺いしたい」は二重敬語であり、本来は最適な表現とはいえません。下記の言葉で言い換えられるようにしておきましょう。

お尋ねしたい

目上の相手に対して質問する場合、尋ねるの謙譲語で「お尋ねする」と表現する用法があります。

対面で意志表現する場合は「お尋ねしたい」と伝えればOKです。

お聞きしたい

「お聞きしたい」も「お尋ねしたい」とほぼ同義で、目上の相手に質問を投げかける場合に使えます。

「お聞きしたい」の場合は質問よりも聴取・聞き取りのニュアンスに近く、「話を伺いたい・拝聴したい」といった意味合いと同じです。

お話を伺いたい

「お話を伺いたい」は目上の相手に対し、話を聴取したい旨を伝えるフレーズです。

必ずしも質問や問答とイコールではなく、インタビューのような形の場合も当てはまります。

ちなみに主な構成は尊敬語の名詞「お話」+謙譲語の「伺う」であり、文法上も問題のない表現です。

お訪ねしたい

「お訪ねしたい」は「訪ねたい・訪問したい」の意味をへりくだって伝える謙譲表現です。

謙譲語1つのみのシンプルな敬語表現のため、当然二重敬語には当てはまりません。

お邪魔したい

「お邪魔したい」は「お訪ねしたい」とほぼ同義ですが、もう少しカジュアルな表現です。

目上の相手に限らず、他人の家や職場・店舗などを訪ねる際には慣習的に「お邪魔する」と表現しますよね。

「お訪ねする」と伝えるには堅苦しいと考えられる場合は、「お邪魔する」くらいの言い回しだとしっくりくる可能性があります。

「お伺いしたい」の英語表現を紹介!

最後に「お伺いしたい」を英語で言い表してみましょう。

・“want to ask”
(お尋ねしたい・質問したい)

・“want to visit”
(訪問したい・お邪魔したい)

まとめ

「お伺いしたい」が二重敬語だと聞いて、意外に思われた方も少なくないでしょう。裏を返せば、それだけ浸透しているということでもあります。

「言葉は生き物」とも言われる通り、頭から否定するのではなく、原則を踏まえながら実情に合わせて運用していくことが大事です。

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