首相・社長といった、国や組織の代表が持つ考え・意思などを「ご意向」と表現する場合があります。
「お考え」もしくは「ご意思」でも意味は通じますよね。
なぜ「ご意向」という言い方をするのでしょうか。ポイントは、敬語表現と「意向」の持つ性質にあります。
以上を踏まえ、「ご意向」の意味・性質・組み合わせフレーズなど、役立つ情報をまとめまてみました。
「ご意向」の意味を解説!
「ご意向」は名詞「意向」の尊敬語です。「意向」の表現が当てはまる役割・ポジションは、ある程度限られる点に注目しましょう。
そもそも「意向」とは?
名詞「意向」は、特定の主体が持つ意思・考えのことです。語句の性質として、組織の代表格に相当する人物の意思・考えを呼び表す傾向があります。
「ご意向」と敬語表現にしなくとも、語句そのものに格式が内在していると考えるのが妥当です。
「ご意向」の敬語分類は?
敬語分類上、「ご意向」は尊敬表現に当たります。
「意向」に尊敬の接頭語「ご」を付けたもので、主に代表的な立場にある人物が持つ考え・意思という意味です。
ちなみに、自分に対して「ご意向」と表現することはできません。
「ご」は他者に向けての敬意を表する接頭語。加えて、自分自身の意思を「意向」と述べることも不適切です。
「ご意向」の意味は?
先述した内容を踏まえてまとめると、「ご意向」とは代表的な立場にある目上の人物が持つ考え・意思のこと。前提として、目下の人物が敬意を込めて表す言葉である点も重要です。
自分に無関係の人物であれば、尊敬語で表現
する必要がありません。また、組織を代表する人物でなければ「意向」の語句も不要です。
自分の目上で、かつ代表的な立場にいるからこそ「ご意向」と表現するものと理解しましょう。
「ご意向」の使い方を紹介!
「ご意向」の意味・性質を踏まえ、具体的な使い方を紹介します。
目上の相手に直接「ご意向」という場合は意思確認、「ご意向」が確定した状態で立ち回る場合は意思の執行・実行を表すのが一般的です。
目上の相手の意思を聴取・確認する
目上の相手に直接「ご意向」と発言する場合は意思の内容を伺い、聴取する時です。
「ご意向をお聞かせ願います」のように質問・ヒアリングの形で意思の内容を確認するほか、場合によっては代表者としての意思決定を促します。
目上の相手の意思を踏まえて発言・行動する
代表者の意思に基づきアクションする場合、「社長のご意向により」「首相のご意向に基づき」などと前置きする場合がしばしば。
トップによる決定事項である旨を伝えることで、場合によっては経緯・説明などを省略することもできます。
重要施策や難しい判断がなされた後、関係者が報告・報道する中で使うことも多い表現です。
「ご意向」と組み合わせて使う言葉を紹介!
「ご意向」を使う層・使う場面についてある程度イメージを掴んだところで、組み合わせて使われることの多いフレーズを考えてみましょう。
「ご意向に沿う」
自分よりも目上の、特定人物の意思・期待に適合することを「ご意向に沿う」と表現します。
商品企画や人材の採用においてよく使われるフレーズで、例えば採用基準を設定した責任者・当事者の狙い・コンセプトなどが代表的。
採用試験を受けた側に敬意を表しつつ、当事者の意思を尊重する場合も同様に表現することがあります。
「ご意向に沿えず」
「ご意向に沿えず」は、目上の立場にある特定人物の意思・期待に応えられなかった場合に使う表現です。
「ご意向に沿えず」とネガティブな内容で切り出すため、「申し訳ありません」「お詫び申し上げます」のようなお詫びの言葉につなげる使い方が多く見られます。
「ご意向にそぐわない」
「ご意向にそぐわない」は、目上の立場にある特定人物の意思・期待に相応しくない・及ばないという意味です。
そもそもベクトルが違っていたり、方向性は良くても不足があったりと理由は様々でも、結果として不合格ということですね。
「ご意向を汲む」
目上の立場にある特定人物の意思・期待に沿った様を「ご意向を汲む」といいます。
動詞・形容詞両方の用法があり、形容詞の用法では「ご意向を汲む企画」「ご意向を汲んだ作品」のような言い回しをするため要注意。
形容詞の用法では多くの場合、名詞とつなげて使います。
「ご意向」を使った組み合わせフレーズは?
「ご意向」は組み合わせのフレーズで運用されることが多い言葉です。代表的な組み合わせフレーズを3つ紹介します。
ご意向をお聞かせください
目上の相手に聴取・ヒアリングする際、「ご意向をお聞かせください」と投げかけるアプローチがあります。
「ご意思をお聞かせください」「ご意見をお願いします」と問うよりも幾分当たりが柔らかく、目上の相手を立てる表現として有効です。
ご意向に沿えず申し訳ありません
「ご意向に沿えず申し訳ありません」とは、目上の立場にある特定人物の意思・期待に応えられなかった場合に使うお詫びの言葉です。
方針・戦略などが定まっており、執行・実行する立場の人物がミスしてしまった場合によく使われます。
採用試験における合否判定で、企業側が受験者に不採用を通知する際に使うケースもしばしばです。
ご意向に沿えるよう
「ご意向に沿えるよう」は主として、目上の人物からの期待に応えるべく前向きに臨む姿勢を表すフレーズ。
所信表明・新任挨拶といった機会に使われることが多く、「ご意向に沿えるよう取り組みます」「ご意向に沿えるよう励んでまいります」などといった組み合わせが一般的です。
ご意向を承りました
目上の人物から伝えられた指示・命令などに対し「ご意向を承りました」と返せば、理解・承服した旨を表します。
意見聴取・ヒアリングの際に「ご意向を承りました」と発言する事例は稀であり、基本的には目上の人物からの指示・命令・注文に対する受け答えのフレーズです。
「ご意向」の類語を紹介!
「ご意向」のニュアンスに近い語句を4つピックアップします。
ご要望
「ご要望」は目上の人物が持つ要望のことです。
やや距離のある相手に対して用いる場合が多く、顧客・取引先など、外部の対象からニーズを汲み取る際に使われます。
ご意思
「ご意思」は「ご意向」とほぼ同義。目上の特定人物の持つ考え・理念・方針などのことです。
企業の場合は、下位の者にとっての上層部の方針や判断を指し、従業員やステークホルダーに大きな影響力を及ぼします。
ご意志
「ご意志」とは目上の特定人物が持つ意志のことです。「志」が含まれることから個人としての志を指すことが多く、「ご意思」とは区別して扱います。
ちなみに企業の場合「意思決定」ということはあっても、「意志決定」とはいいません。
ご所望
「ご所望」は「ご要望」とほぼ同義です。「ご要望」は外部の相手に使われることが多いのに対し、「ご所望」は距離が近く直接的に関わる相手に対して使います。
アンケートを例にとると「ご意見・ご要望」と表現することはあっても、「ご所望」の表現はありません。
別の例を挙げると、距離の近い相手から「お茶を所望する」と言われるのは自然ですよね。一方、「お茶を要望する」と言われた場合は注文のようなよそよそしいやり取りになってしまい、不自然です。
「ご意向」を使った例文3選!
最後に、「ご意向」を使った例文を3つ紹介します。
例文
「企業側から、1次面接通過の連絡がありました。おめでとうございます。ご意向はいかがですか?」
「ありがとうございます。是非、次のステップに進ませてください」
例文
「部長、会計システム変更案に関するご意向をお聞かせください」
「面白い案だけど、コストに見合うかが問題だね。一旦保留にして、他のプランも考えてみよう」
まとめ
組織の中である程度の立場になると、代表者の意志を下位の者に伝える必要性が生じます。代表者の意志を簡単に表現するには、「ご意向」とまとめるのが合理的です。
「意向」と区別して「ご意向」と述べる意味・意義を理解し、的確に運用するようにしましょう。