目上の人物から受ける指導・手ほどきについて、「ご指南」と表現することがありますよね。
「ご指導」「お手ほどき」とはどう違うのか、そもそも敬語表現する必要性はあるのかといった点に疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。
当記事では「ご指南」の意味・使い方のほか、類語との違い・組み合わせフレーズについても解説します。
「ご指南」の意味を解説!
「ご指南」は「指南」の敬語です。最初に「指南」の由来、次いで「ご指南」の敬語分類について解説します。
以上2点を押さえることで、「ご指南」の意味・性質をつかみましょう。
「指南」の由来は?
「指南」は元々、「指南車」に由来します。指南車とは古代中国で考案された軍事用の機材で、常に南の方角を指し示すことから行軍・進軍の道しるべとして重宝されました。
やがて指南車の役割・機能にちなんで「指南」「指南する」といった表現が生まれたのです。
「ご指南」の意味と敬語分類
「ご指南」は名詞「指南」の尊敬表現です。目上の特定人物によって施される指南であるため、単なる指南ではなく尊敬語として扱います。
敬語で表現するからには、自分以外の他者に対して敬意を見せる必要があるということ。
すなわちコミュニケーションの対象が当事者、もしくは下位の人物であっても、指南を施す特定人物への敬意を表す必要があります。
「ご指南」と「御指南」の違いは?
「ご指南」の代わりに「御指南」と表記する場合もありますよね。同義語の「御指南」についても理解しておきましょう。
「御指南」は格式の高い言い回し
「御指南」は「ご指南」の同義語であり、誤字ではありません。
「御指南」は「ご指南」の原型で、「御指南」をより一般的な表記にアレンジしたものが「ご指南」です。
「御指南」と表記する場合は、格式の高い表現が必要な時。例としては将棋・囲碁のように、師匠と弟子の関係が存在する前提で使う要領が挙げられます。
稽古・実技指導の意味合いが強くなる
「御指南」と表記する場合は、稽古・実技指導の意味合いが強調されます。
例えば師匠が弟子に将棋・囲碁の指し方を手ほどきする場合は、「御指南」が相応しいでしょう。武術・芸事の稽古に使われることもしばしばです。
「ご指南」の使い方・注意点は?
「ご指南」の意味・性質を踏まえ、具体的な使い方を考えてみましょう。注意点についても解説します。
目上の人物による指導・手ほどきが前提
先述の通り「ご指南」は尊敬語であるため、目上の特定人物によって施されることが前提です。
仮に指導・手ほどきの実施者が外部の人物だった場合、尊敬語を使うことが絶対条件とは限りません。
一方、上司や師匠といったように明確な上下関係が介在する場合は、目上の特定人物による指導・手ほどきであるため「ご指南」と表現するのが妥当です。
自分が主体の場合は使えない
尊敬の接頭語「ご」は目上の相手に使う語句。自分に対して「ご意向」と表現することはできません。
立場が同格、もしくは下位の相手から手ほどきを受ける場合も同様。
そもそも指導・指南という表現をせず、「教えてもらう」といった平易な言い方をする場合がほとんどです。
「ご指南」の類語・言い換え表現は?
「ご指南」には複数の類語・言い換え表現があります。主なものは次の4つです。
ご指導
「ご指導」は目上の特定人物による指導・指揮のこと。教え導く性質が内在するため、目的に向かってリードする要素が強い言葉です。
実際のところは指南と同義の位置づけですが、語句本来の意味はわずかに異なります。
ご教授
「ご教授」は目上の特定人物による、いわゆるレクチャーです。知識・ノウハウなどを教えて授けることが主眼であり、必ずしもゴールに到達することとイコールとは限りません。
ご鞭撻
目上の特定人物による厳しい指導・強めの励ましを「ご鞭撻」といいます。「教鞭を振るう」「鞭打つ」などのニュアンスで、積極的に推進するという意味。
「ご指導・ご鞭撻」のようにセットで使われることもしばしばです。
手ほどき
「手ほどき」は、主に目上の特定人物による実技指導のこと。指南・指導よりも直接的な手本を見せる意味合いが強く、具体的な動作・実演を伴うのが特徴です。
ご教示
「ご教示」とは、目上の特定人物が教え指し示すことをいいます。アドバイスや指摘・ヒントなども含まれるため、必ずしも「ご指南」と同義とは限りません。
「ご指南」と組み合わせて使うフレーズを紹介!
「ご指南」は単語よりも、組み合わせによるフレーズで使われることが一般的です。主なフレーズを4つ紹介します。
「ご指南ください」
目上の相手に指南をお願いしたい場合には、アプローチとして「ご指南ください」と声がけするのがストレートです。
師弟関係を申し込むようなやや古めかしい言い回しであり、ビジネスで使うと若干堅苦しい印象を与えます。
「ご指南くださいますよう」
「ご指南くださいますよう」は、「ご指南ください」とは似て非なる敬語表現です。
「ご指南くださる」行為の主体は相手であり、補助動詞「くださる」の主体も目上の相手。
尊敬語である点からも、自身が使う丁寧語「ください」とは性質が大きく異なります。
「ご指南いただきたく」
「ご指南いただきたく」は目上の相手に指南をお願いする旨のフレーズで、「ご指南くださいますよう」と同義です。
もっと格式ばった表現としては「ご指南賜りたく」がありますが、より柔らかい言い回しをしたい場合に適しています。
「ご指南のほど」
「ご指南のほど」は「ご指導のほど」と同じ位置づけ。「ご指南のほどよろしくお願いいたします」とつなげるのが定番の組み合わせです。
メールで使える!「ご指南」の例文4選
最後に、メールを前提とした「ご指南」の例文を4つ紹介します。
例文
年始の恒例行事として、来年初頭に剣道の寒稽古を実施する予定です。つきましては昨年と同様、武田様にご指南いただきたく、お便りさせていただきました。
例文
在職中はご指南いただき、まことにありがとうございました。末筆になりますが、皆様のご健勝をお祈りしております。
例文
メールにて失礼します。本社から転属になった松木です。営業の仕事は初めてなので、ご鞭撻・ご指南いただけますようお願いいたします。
例文
キャッシュフローに関する知識がないため、ご指南いただきたくメールさせていただきました。大変恐縮ですが、ご都合のつく時にチェックしていただきませんでしょうか。
まとめ
日常生活・ビジネスの上では、「ご指南」よりも「ご指導」を使うことの方が多いもの。一方で武道・芸事の分野などでは「ご指南」もよく使われます。
「ご指南」の由来・性質などを理解し、場面に応じて適切に使うことが大切です。