記憶する・覚えておくといった行為と区別して、特定の事象に意識を向け、注意を払い続ける様を「気に留める」と呼び表します。ビジネスでは「リマインド」といった言い方をする場合も多いですね。
「リマインド」とは注意喚起・意識づけのことであり、「気に留める」と同義です。記憶を意味する「メモリー」との違いを考えればわかりやすいでしょう。
当記事では「気に留める」の意味・使い方を理解するとともに、類語・言い換え表現・敬語表現などについても解説します。ぜひご一読ください。
「気に留める」の意味を解説!
最初に「気に留める」の語句の成り立ち・読み方といった基本の要素を確認しましょう。
各要素を把握することで、フレーズとしての「気に留める」も理解できるようになります。
そもそも「留める」とは?
「留める」とは「維持する・保持する」といった意味。
ボタンを留める・目を留めるなどの要領で、ストップを意味する「止める」「停める」とは区別して使います。
読み方は「とめる」
「留める」は「とめる」と発音します。同音異語の「とどめる」との区別は文脈によって行い、気に留める・ボタンを留めるといった表現の場合では「とめる」です。
「とどめる」との違いは?
「留める」の表記には「とめる」「とどめる」と2通りの読み方があります。同音異語であるものの、読み方・意味ともに似ているため判別には要注意。
「とめる」の場合は気に留める・ボタンを留めるのように、自分の意志に基づいて維持する・保持する行為を表します。
「とどめる」の場合は「原型をとどめる」のように、客観的な視点で物事を表現する際に使うのが一般的です。
「とめる」「とどめる」ともに、維持・保持のニュアンスは共通しているのが大事なポイント。
どちらの読み方が適切であるかについては、文脈によって判断する必要があります。
「気に留める」の意味は?
「気に留める」とは特定の事象に意識を向け、注意を払い続けることです。漠然と記憶・暗記するのでなく、意識を向ける心構えを指します。
注意喚起や危機管理を呼びかける際に使われることが多く、特定事象に備えて事前準備をするような場合に有用です。
「気に留める」の敬語表現は?
目上の相手に「気に留める」と発言する場合は、敬語で表現する必要があります。
特に管理職・責任者の立場だと、年上の相手に注意喚起しなければならない場面もあるもの。
以下では「気に留める」を敬語で表現する方法を解説します。
「気に留める」を敬語分類別に紹介
「気に留める」を敬語表現するには、語尾に適切な補助動詞を当てはめることがポイントです。
ちなみに目上の相手に「気に留める」を伝える場合は、主にお願いする形のケースが一般的。相手の立場を尊重しつつお願いする表現を、敬語分類別に考えてみましょう。
尊敬語
「気に留める」の尊敬表現は、「気に留めてくださる」「気に留められる」などが代表的です。
お願いの仕方としては「気に留めてくださるようお願いいたします」「気に留められるようお願いします」といった言い回しになります。
謙譲語
「気に留める」を謙譲表現する場合、用途に応じて「気に留めていただく」「気に留めさせていただく」の2通りに分かれます。
謙譲語で目上の相手に対してお願いする場合は「気に留めていただく」が適切。「気に留めていただきますようお願いします」のように、自らへりくだって相手を立てる言い回しをします。
ちなみに「気に留めさせていただく」は、自分が気を留める側の立場で使う表現。同じ謙譲表現でも、目上の相手にお願いする使い方としては不適切です。
丁寧語
「気に留める」の丁寧語は、主に「気に留めてください」「気に留めます」の2種類。相手にお願いする場合と、自分が主体となる場合に分かれます。
目上の相手にお願いする言い回しとして、「気に留めてください」はやや乱暴。なぜなら「~してください」の表現は丁寧語であるものの、指示・命令のニュアンスが強いからです。
トップダウンで動く組織なら許容される場合もありますが、一般的には「気に留めてください」の表現は避ける方が無難と考えられます。
「気に留めます」は、自分が主体となった場合の表現。目上の相手にお願いする際には使いません。
メールでの使い方
メールで「気に留める」を使う場合は、スタッフへの注意喚起が一般的。
文章媒体では話し言葉よりも丁寧に表現するのがセオリーであるため、適用する敬語分類は尊敬語・謙譲語のいずれかです。
尊敬語でお願いする場合の表現としては、「気に留めてくださいますようお願いいたします」が適切。
一方、謙譲語でお願いする場合は「気に留めていただきますようお願いいたします」といった表現が妥当です。
「気に留める」の組み合わせフレーズを紹介!
「気に留める」を文章の中で使う際には、他の語句との組み合わせによるフレーズの形が少なくありません。
主な組み合わせのフレーズを3つ紹介します。
気に留めるよう
他者に注意を喚起する目的で「気に留める」と発言する場合には、「気に留めるよう」という言い回しをします。
敬語表現か否かを問わず、「気に留める + ~するよう」と促す部分がポイントです。
目下の相手であれば「気に留めるよう」「気に留めるように」だけでもOK。目上の相手に対しては、、「気に留めるようお願いします」といった敬語表現で対応できます。
気に留めることなく
「気に留めることなく」は、意に介さず・注意を払うことなくといったニュアンス。
現代語風にいえば「スルーする」と同義で、気づいたとしても無視して構わない様を表します。
気に留めるべき
「気に留めるべき」とは、意識して覚えるに相応しいという意味合いです。
単に記憶するだけでなく、事象として優先順位の高い位置づけであることも表すのがポイント。
類似のフレーズでは「念頭に置くべき」に一番近いといえます。
「気に留める」の類義語・別の言い方は?
「気に留める」には類義語や言い換え表現も存在します。別の言い方として、どのようなものがあるかを覚えておきましょう。
留意する
「留意する」は「気に留める」の同義語。「気に留める」との違いとして、「留意」のように名詞形での運用も可能です。
「留意願います」「留意するよう」のように名詞・動詞どちらからの表現もしやすく、使い勝手がいい語句といえます。
注意する
「注意する」は「気に留める」の類語です。「気に留める」と比べると直接的な緊張・警戒を促す意味合いが強く、記憶よりも行動に関する呼びかけに使われることが多いといえます。
心配する
「心配する」とは注意を払って心配りすること。主として、思わしくない事態に対する懸念や危機意識を持つことを指します。
意識づけする
「意識づけする」とは意識を向けさせること。特定の事象に対してアンテナを張るようなイメージで、優先的に注意する際に使われます。
念頭に置く
「念頭に置く」とは、優先的に意識づけすること。単に漠然と記憶するのでなく、優先事項とみなして予め備えるといった意味合いがあります。
敬語を使った「気に留める」の言い換え表現は?
目上の相手に対して「気に留める」のニュアンスを伝える際には、敬語表現が必要です。
「気に留める」をベースとした敬語表現は紹介済みなので、類語・言い換え表現を敬語にしたフレーズを紹介します。
お含みおきください
「お含みおきください」とは、「頭に入れておいて欲しい」の意味を丁寧に表したもの。内容としては「念頭に置く」と同義です。
「ご留意ください」「ご注意ください」と比べると緊張を強いるニュアンスが少なく、品の良い印象を与えます。
尊敬語+丁寧語の組み合わせのため、「~ください」で結んでも当たりが柔らかいのもポイントです。
ご承知おきください
「ご承知おきください」とは、事前情報・予備知識として覚えておくよう促す言い回しです。
「気に留めるよう」「ご留意ください」などの表現と比べると注意喚起の意味合いは少なく、情報提供や助言の目的で使われることが多いといえます。
「気に留める」の英語表現
最後に「気に留める」の英語表現を2つ紹介します。
“take care”(注意を払う・気を付ける)
“Please take care on the way home.”
(気を付けて帰ってください)
“pay attention to”(留意する・注意を向ける)
“Please pay attention to safety.”
(安全に留意してください)
まとめ
管理職・責任者の立場において、危機管理は大きな仕事の1つです。情報を提供し、注意喚起する機会も少なくありません。
「気に留める」の一言によって情報の中で注意を払うべきポイントを強調できる上、適度な緊張感も生み出せます。
情報提供の際には「気に留める」を上手に活用し、話のメリハリを付けることが大事です。