感謝・お礼を表す言葉のひとつに「大変ありがとうございます」があります。普段聞き慣れない言い回しであるものの、間違った表現ではありません。
当記事では「大変ありがとうございます」の意味・表現としての正当性・言い換え表現などを詳しく解説します。
外国語表現も併せて紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
「大変ありがとうございます」は日本語表現として正しい?
「大変ありがとうございます」の表現に違和感を覚える方は少なくありません。違和感の主な理由は、使用割合の小ささによるものです。
まずは「大変ありがとうございます」の意味・表現としての妥当性などを解説します。
「大変ありがとうございます」の意味は?
「大変ありがとうございます」は、深い感謝の気持ちを表すニュアンスです。
感謝の意を示す「ありがとう」を丁寧に表現した敬語表現で、目上の相手に対しかしこまった姿勢を表します。
「大変ありがとうございます」の表現は文法上OK?
「大変ありがとうございます」は「副詞+形容詞」の組み合わせで成り立っています。
「大変」は「とても」「非常に」などと同義の副詞であり、主に形容詞を強調する働きです。
一方、「ありがとう」の文法上の位置づけは単純ではありません。そもそも「ありがとう」は形容詞「ありがたい」の連用形です。
「大変ありがたい」「とてもありがたい」の言い方はできても、「大変ありがとう」「とてもありがとう」といった表現は一般的ではありません。
以上を踏まえると、「大変ありがとうございます」は文法上問題のない表現であるものの、必ずしも最適ではないと考えられます。
「大変ありがとうございます」に違和感を覚える理由は?
「大変ありがとうございます」にまつわる違和感の原因は、「大変」と「ありがとう」の組み合わせによるところが大きいでしょう。
「ありがとう」は定型句・慣用表現として定着しており、現代では形容詞・品詞としての位置づけを意識する機会がほとんどありません。
先述の通り、「大変ありがとうございます」は文法上許容される組み合わせであるものの、実際に使われることは稀。同義の表現に言い換えられる場合がほとんどです。
「大変ありがとうございます」は日本語表現として正しい?
先述の通り「大変ありがとうございます」は文法上問題なく、日本語として正当な表現です。
一方、現代では「大変」+「ありがとう」の組み合わせが使われる機会は少なく、浸透していません。というのも、定型句「ありがとう」の前に副詞を付ける慣習がないからです。
以上の理由から、「大変ありがとうございます」は正当な日本語表現であるものの、実際のところは別のフレーズに言い換えられる場合が多いといえます。
「大変ありがとうございます」の主な使い方
「大変ありがとうございます」を使う場面は、目上の相手に対してひとかたならぬ感謝の意を示す時です。
使いどころとしては、一般的に「誠にありがとうございます」「喜びに堪えません」といった表現をする場面が当てはまります。
ちなみに、「誠にありがとうございます」「喜びに堪えません」の代わりに「大変ありがとうございます」と発言した場合、聞き慣れない表現だと受け取られることはあっても、失礼には当たりません。
「大変ありがとうございます」は敬語表現?
「大変ありがとうございます」が目上に使う言葉であることは、直感的にわかりますよね。そもそも「大変ありがとうございます」は敬語表現であるのか、整理しておきましょう。
敬語分類上は丁寧語
「大変ありがとうございます」は、敬語分類上丁寧語に当たります。敬語に該当するのは「ございます」の部分です。
「ございます」は「です」の丁寧語で、形容詞にのみ接続する補助動詞。
形容詞「ありがたい」の連用語「ありがとう」に「ございます」を接続することで、はじめて「ありがとうございます」のフレーズが完成します。
「大変ありがとうございます」の敬意の度合いは?
「大変ありがとうございます」を構成する感謝の語句は、いくつかの組み合わせが可能です。
①ありがとう
②大変ありがとう
③ありがとうございます
④大変ありがとうございます
上記のように4パターンの組み合わせが可能で、目上の相手に使えるのは③・④の2通りのみ。強調の副詞「大変」が付く分、③よりも④の方が丁寧です。
以上より、謝意を表す言葉の中でも「大変ありがとうございます」は、非常に丁寧な表現といえます。
「大変ありがとうございます」の使い方をシーン別に紹介!
「大変ありがとうございます」を実際に使う状況を想定し、場面ごとの用例を考えてみましょう。
ビジネスシーンでの会話
ビジネスシーンで「大変ありがとうございます」と発言する場面は、常ならぬ良い出来事が起こった機会です。
例としては成功する見込みの薄かった商談がまとまったり、競争率の高いコンペティションを勝ち抜いて受賞したりといったケースが挙げられます。
ちなみに実際には、「大変ありがたく存じます」「誠にありがとうございます」といった言い回しをするのが一般的です。
ビジネスでのメール
ビジネスシーンにおけるメールでの「大変ありがとうございます」は、好ましい出来事に対するお礼のほか、文頭・文末の挨拶に使われることもあります。
メール文の場合は書き言葉のため、改まった言い回しをしても不自然な印象を与えません。
したがって「大変ありがとうございます」と記述しても問題なく、会話時のように言い換え表現にこだわらなくともよいでしょう。
催事・慶事での挨拶
催事・慶事での挨拶言葉には、普段よりも格調高い言い回しが推奨されます。
話し言葉ではあっても口語ではなく、改まった表現を選ぶことが必要です。
以上の理由から、「大変ありがとうございます」のフレーズは催事・慶事の場面に適しています。
「大変ありがとうございます」の例文3選!
紹介してきた基礎知識を踏まえ、「大変ありがとうございます」を使った例文を考えてみましょう。
例文①:結婚式での新郎挨拶
この度はご多忙のところ、私ども夫婦のためにお集まりいただき大変ありがとうございます。
例文②:ビジネス文書での書き出し
平素は当社および当社商品をお引き立ていただき、大変ありがとうございます。
「大変ありがとうございます」の言い換え表現は?
「大変ありがとうございます」を使えない場面では、言い換え表現が有効です。主な言い換えのフレーズを3つ紹介します。
心より感謝申し上げます
「大変ありがとうございます」は「心より感謝申し上げます」と言い換えられます。
「大変」の部分を「心より」、「ありがとうございます」の部分を「感謝申し上げます」と言い換えた形です。
「大変」には良い意味と悪い意味の両方があるため、文脈に合わせて判断するところがポイントです。
厚く御礼申し上げます
「心より感謝申し上げます」とほぼ同じトーンのフレーズに「厚く御礼申し上げます」があります。
「大変ありがとうございます」よりも格調高い表現のため、使いどころは多くありません。
ビジネス文書・メール、もしくは慶事・催事の挨拶言葉としての用途が主と考えられます。
喜びに堪えません
「大変ありがとうございます」とほぼ同じトーンで使えるのが「喜びに堪えません」のフレーズ。
書き言葉よりも話し言葉のトーンであり、「大変ありがとうございます」よりも洗練された美しい言葉遣いといえます。
挨拶言葉として上手に使えば良い印象を与えられるでしょう。
「大変ありがとうございます」の外国語表現
最後に、「大変ありがとうございます」の外国語表現を英語・中国語・韓国語に分けて紹介します。
「大変ありがとうございます」の英語表現
・“Thank you very much.”
・“I really appreciate it.”
「大変ありがとうございます」の中国語表現
・“非常感谢。”(Fēicháng gǎnxiè)
・“真是谢谢。”(zhēnshi xièxie)
「大変ありがとうございます」の韓国語表現
・“대단히 감사합니다。”(daedanhi gamsahabnida.)
・“정말 감사합니다。“(jeongmal gamsahabnida)
まとめ
「大変ありがとうございます」は扱いに注意を要するフレーズです。日本語表現としては正当であるものの、あまり浸透しておらず使いどころも限られます。
適宜言い換えて対応するか、もしくは「ありがとうございます」とシンプルにまとめても失礼には当たりません。
大事なのは感謝の意を伝えることです。言い回しにこだわらず、言葉を通して素直な気持ちを表す本質を忘れないようにしましょう。