目上の相手に教えを請う際の決まり文句として「ご指導のほど」というフレーズがあります。
「ご指導のほどよろしくお願いします」のように組み合わせて使う場合がほとんどであるものの、「ご指導のほど」のフレーズ自体にも意味があるのです。
当記事では「ご指導のほど」の意味・使い方・組み合わせフレーズなどを紹介します。ぜひ最後までお読みください。
「ご指導のほど」の意味は?
「ご指導のほど」とは、目上の相手に指導をお願いする意志を表すフレーズです。
敬語表現であるため、「ご指導いただきますよう」「ご指南くださいますよう」などと同じ意味を表します。
多くの場合は「お願いいたします」のようなお願い言葉が付くものの、ニュアンス自体は「ご指導のほど」で表現されているのがポイントです。
「ご指導のほど」の使い方を解説!
フレーズの意味を踏まえ、「ご指導のほど」の使い方を解説します。敬語分類のほか、どのような相手に対して使うのかについてもチェックしておきましょう。
「ご指導のほど」の敬語分類は?
「ご指導のほど」は、自分よりも目上の相手に対して指導や教えを請う場合に使うと先述しました。
対象が目上の相手に限られる理由として、「ご指導」の部分に敬語表現が使われている点が挙げられます。
「ご指導」は名詞「指導」の尊敬語であり、「目上の人物による指導」といった意味。
同格・目下の相手から指導を受ける場合に、「ご指導」と表現しないことは自明ですね。
「ご指導のほど」を使うべき相手の例
「ご指導のほど」を使うべき相手の具体的な例としては、職場で初めて会う上司・先輩や、スポーツ・習い事の師範・教官などが当てはまります。
職場であれば着任挨拶、スポーツ・習い事であれば入部・入団といったタイミングで指導者に挨拶するのが一般的ですよね。
「ご指導のほどよろしくお願いします」は挨拶言葉として半ば定型化しているものの、尊敬表現で相手を敬うニュアンスが含まれていることを押さえておきましょう。
「ご指導のほど」の注意点は?
「ご指導のほど」を使う上で注意すべき点がいくつかあります。表記・組み合わせの仕方などについて注意点を解説します。
漢字表記「ご指導の程」は避ける
文書・メールといった文字媒体において、「ご指導のほど」ではなく「ご指導の程」と表記する事例があります。
一般的には「ご指導のほど」が適切であり、「ご指導の程」の表記は避ける方が無難です。
「ご指導の程」と表記しても特段失礼に当たるわけではありませんが、特にこだわる理由がなければ適切とされる表記を選びましょう。
「ご指導のほどありがとうございました」は誤用?
「ご指導のほど」は、未来に向けて指導をお願いする前提で発せられる言葉です。
「ご指導のほどありがとうございました」のように、過去の出来事に対するお礼の言葉として組み合わせる用法は一般的ではありません。
指導してもらった事実に対するお礼の気持ちを伝えたい場合は、「ご指導いただきありがとうございました」と表現する方がスマートです。
外部の相手には「ご指導のほど」以外の表現が望ましい
目上の相手でも取引先・株主・顧客のように、ある程度距離のある関係性が前提の場合は「ご指導のほど」以外の言葉を選ぶようにしましょう。
具体的には「ご愛顧」「ご愛用」「ご支援」などが候補に挙がりますが、相手によっては相応しくない語句も存在します。
相手との関係性を踏まえ、最適な語句を当てはめることが大事です。
「ご指導のほど」の組み合わせフレーズを紹介!
紹介してきた基礎知識を踏まえ、「ご指導のほど」と組み合わせて使うフレーズを4つピックアップします。
ご指導のほどよろしくお願いいたします
「ご指導のほどよろしくお願いいたします」は「ご指導のほど」を使ったフレーズの代表格です。
挨拶言葉としてほぼ定型化されており、細かい意味を考えなくとも使える点で無難な表現といえます。
ご指導のほど何卒よろしくお願いいたします
「ご指導のほど何卒よろしくお願いいたします」は、「ご指導のほどよろしくお願いいたします」と同じニュアンスをより丁寧に伝えるフレーズです。
非常にかしこまった表現であり、堅苦しい響きもあるためスポーツ・習い事においてはやや大げさに捉えられる可能性があります。
ご指導ご鞭撻のほど
「ご指導ご鞭撻のほど」は「ご指導のほど」と同じニュアンスを重ねたもので、定型文の1つです。
「鞭撻」は鞭を振るって指導するさまの例えであり、「教鞭を振るう」と同じ意味を表します。
したがって実質的に「ご指導のほど」を2回繰り返して表現しているのと同じであり、聴き手によっては回りくどいと捉える可能性も否定できません。
ご指導いただきますよう
「ご指導いただきますよう」は「ご指導のほど」の言い換え表現です。注意点として、「ご指導いただきますよう」の場合は敬語分類が異なります。
「ご指導いただく」は目上の人物から指導してもらうさまを謙譲表現したものであり、尊敬語ではありません。
尊敬語の「ご指導」が名詞「指導」に尊敬の接頭語「ご」を付けたものであるのに対し、「ご指導いただく」の場合は「指導してもらう」のフレーズ全体を謙譲語に入れ替えたものです。
一見すると違いがわかりづらいものの、「お聞かせいただく」「お知らせいただく」などが「お~いただく」「ご~いただく」の謙譲表現であることを想起するとわかりやすいでしょう。
「ご指導のほど」の言い換え表現は?
「ご指導のほど」のニュアンスを別の言葉で言い換えた場合、下記の2つが該当します。
ご教示のほど
「ご教示のほど」は教えを請うための表現です。
指導よりも教える・指し示す意味合いが強いため、知識・ノウハウを伝授するような場面に適しています。
単純に知らないことを質問する場合にも使えるため、汎用性の高い言葉です。
ご指南いただきますよう
「ご指南いただきますよう」は「ご指導いただきますよう」「ご指導のほど」とほぼ同義です。
やや古めかしい言い回しであり、ビジネスシーンよりは空手・剣道・柔道などの武道や、囲碁・将棋といった伝統的な分野で使うのが相応しいと考えられます。
「ご指導のほど」を使った例文3選!
紹介してきた知識を踏まえ、「ご指導のほど」を使った文章を考えてみましょう。
例文
「新入社員の高嶋です。ご指導のほどよろしくお願いいたします」
「課長の島田です。若手は少ないから注目されてるよ。よろしく!」
例文
「この仕事の手順をご指導のほどお願いします」
例文
「剣道は体育の授業以来初めてです。ご指導のほどよろしくお願いします」
「最初はみんなそんなものですよ。ウチはそこまで厳しくないですから、楽しく覚えていきましょう」
「ご指導のほど」の英語表現
最後に「ご指導のほど」に近いニュアンスの英語表現を2つ紹介します。
“Please advice me~”(助言をお願いします)
“Please advice me not to lose.”
(失敗しないよう、助言をお願いします)
“Could you tell me~?”(教えていただけますか)
“Could you tell me the way to the nearest station near from here?”
(最寄り駅への行き方を教えていただけますか)
まとめ
「ご指導のほど」を使う機会・場面は多くありません。だからこそ、適切な使い方を覚えておくことが大事です。
敬語分類についても正しい理解が必要。特に言い換え表現として紹介した「ご指導いただきますよう」との違いがポイントといえます。
「ご指導のほど」を上手に活用し、円滑な人間関係を構築しましょう。