トラブルや異常のないさまを伝える際、「問題ございません」と表現する場合があります。
目上の相手を前提とした敬語表現であり、ややかしこまった言い回しです。一方で相手の立場・場面によっては上からものを言う形になるため、正しい理解が欠かせません。
当記事では「問題ございません」の意味・使い方・組み合わせフレーズ・言い換え表現などについて解説します。ぜひご一読ください。
「問題ございません」の意味を解説!
そもそも「問題ございません」とはどんな意味を表すのかを確認しましょう。詳細は以下の通りです。
「問題ない」の敬語表現
「問題ございません」は「問題ない」の敬語表現であり、丁寧語に分類されます。
「ございません」は、有無を表す補助動詞「ございます」の否定形。
目上の相手に対して「問題ない」とは受け答えできないため、「問題ございません」のようにかしこまった丁寧語で回答します。
「問題ありません」との違い
「問題ありません」は「問題ございません」と同系統の敬語表現です。
敬語分類上は丁寧語で同じであるものの、丁寧の度合いが異なります。「問題ありません」は主に社内・上司といった身内に対する受け答えに適した表現です。
一方「問題ございません」は、よりかしこまったトーン。顧客・株主といった外部の相手に対する受け答えに適しています。
「問題ございません」の使い方を紹介!
紹介した意味を踏まえ、「問題ございません」の具体的な使い方をチェックしましょう。詳細は以下の通りです。
進捗状況についての確認・質問に対する回答
業務の中では現場監督・工場長・部課長といった責任者や上司から、仕事・工程・プロジェクトなどに関する進捗状況をたずねられる場合があります。
進行上の異常・問題がない場合は、「問題ございません」と受け答えすればOK。正常に進行している旨を簡潔に伝えられます。
相手の懸念・不安を払拭するための受け答え
「問題ございません」は相手の懸念・不安などを解消するためにも有用です。
たとえば商品入荷の時期やオーダー品の仕上がり時期などをたずねる顧客は、自分のスケジュール・使用予定時期に間に合うかどうかを心配しているもの。
相手の都合を聞いた上で「問題ございません」と伝えれば、顧客の懸念・不安を払拭するのに役立ちます。
相手の提案に賛意を示すための一言
相手の提案に賛意を示す際に「問題ございません」伝えれば、「異存ございません」と同義です。
注意点として、ややもって回ったような印象を与える可能性があります。というのも、賛意を表すだけなら「賛成です」のような肯定の表現で済むからです。
特に目上の相手に対する受け答えとしては望ましくありません。
「問題ございません」の注意点は?
「問題ございません」は時として失礼な印象を与える可能性があり、使い方には注意が必要です。具体的な注意点を紹介します。
相手・場面に注意
「問題ございません」は、いつ誰に対しても使えるわけではありません。
たとえば招待を受けたり参加を促されたりした場合、「問題ございません」と返すと消極的な姿勢を表す形になってしまいます。
上司からの指示・命令に対する受け答えとしても不適切です。詳しくは後述します。
指示・命令に対する返事としてはNG
上司からの指示・命令に対し「問題ございません」と回答するのはNGです。
指示・命令に従う場合は「承知しました」のように肯定のトーンで答えるのがマナー。
指示・命令に対して「問題ございません」と返すと「構いません」と同義とみなされ、消極的で上から目線の横柄な印象を与えてしまいます。
上司に限らず、目上の人物に対して受け答えする場合は注意を払いましょう。
「問題ございません」の組み合わせフレーズを紹介!
紹介した意味・使い方を踏まえ、「問題ございません」の組み合わせフレーズをピックアップします。詳細は以下の通りです。
問題ございませんでしたら
「問題ございませんでしたら」は、相手に判断を促すためのクッション言葉の1つです。
たとえば契約書・会員登録といった手続きを行う際には規約の内容を承諾する、もしくは記載事項について誤りがない点で同意する場合があります。
上記のような手続きを促す際、運営側から「問題ございませんでしたら」と一言添えるとスマートです。
問題ございませんでした
「問題ございませんでした」は、問題がない旨を報告する言い回しです。
たとえばビジネスシーンにおける業務の進捗状況や、店舗の在庫・備品の過不足などをチェックした後、責任者に対する結果報告の一言として使います。
問題ございませんでしたでしょうか
「問題ございませんでしたでしょうか」は目上の相手に対して、提供した内容に不具合・不満といったネガティブな問題がなかったかをたずねる一言です。
たとえば商品・サービスを提供した後、相手からの感想・反応を伺いたい場合に使います。
注意点として、「問題ございませんでしたでしょうか」は文法上適正な表現であるものの、語感がややくどいです。
「問題ございませんでしたか」でも失礼には当たらないため、言い換える方がスマートと考えられます。
全く問題ございません
「全く問題ございません」は「問題ございません」の強調表現です。
たとえば心配している相手を安心させたい場合に、異常・不具合などが一切見られない点を強調すれば効果的です。
直接現場を確認できない相手に対し、メール・電話などで状況報告する際に適しています。
そちらの日程で問題ございません
「そちらの日程で問題ございません」は、対面・電話といった口頭での応対時に適した言い回しです。
注意点として「そちらの日程で」は内容が具体的でないため、書き言葉には相応しくありません。
「そちら」「ごちら」のような指示語は相手の発言を直ちに受け返せる対面・電話だからこそ成り立つ表現であり、乱用はNGです。
「問題ございません」の言い換え表現もチェック!
紹介した基礎知識を踏まえ、「問題ございません」の言い換え表現もチェックしましょう。主な表現は以下の4つです。
差し支えありません
「差し支えありません」は「差し支えない」の丁寧表現です。
「問題ございません」よりも「問題ありません」のトーンに近く、多くの場合は予定・都合などを尋ねられた際に使います。
ビジネスシーンよりは日常の会話で使われやすい表現です。
構いません
「構いません」は主として、提案・要請などを受け入れるために用いられる一言。
「問題ございません」との大きな違いとして状況報告に代表されるような、上司に対する言葉としては相応しくありません。
あくまで、相手から話を向けられた際に受諾するための表現である点に注意しましょう。
承知しました
「承知しました」は提案・指示・命令などに対し、相手の意向に従う姿勢を表す一言です。
特に上司からの指示・命令に対しては、「問題ございません」「異存ありません」のような返し方だと横柄で失礼な印象を与えてしまいます。
積極的な姿勢を表すためにも「承知しました」と言い換えて対応しましょう。
異常ありません
「異常ありません」は、主に報告のための一言です。
作業現場の状況・調査結果・試験結果などについて上司や責任者から報告を求められた際、「異常ありません」と回答すれば「問題ございません」と同じ意味を表します。
「問題ございません」の誤った言い換え表現に注意!
「問題ございません」の言い換え表現には、一部正しくない言い回しもあります。代表的な事例は以下の2つです。
大丈夫です
「大丈夫です」は典型的な若者言葉・バイト言葉です。
肯定・否定のどちらの意味でも使われる点で誤解を招きやすいほか、そもそもビジネスの言葉としては相応しくありません。
特にメール・文書といった書き言葉の媒体では厳禁。安易に使うと軽薄な印象を与えてしまいます。
平気です
「平気です」は「大丈夫です」とは異なり、誤った日本語表現ではありません。
ただし実際には口語表現であり、基本的には身体・健康状態などを表すために使うのが一般的。
たとえば上司から状況報告を求められた再、「平気です」と受け答えするのはNGです。
使用する場合は、あくまで日常会話の範囲に留めましょう。
「問題ございません」の英語表現
最後に、「問題ございません」の英語表現を紹介します。
・“No problem.”(問題ありません)
・“That’s fine.”(問題ありません)
・“You don’t need to worry.”(心配無用です)
まとめ
「問題ございません」は使う場面・トーンなどに配慮すべき表現です。
意味そのものはシンプルである一方、状況によっては使うのに相応しくないタイミングもあります。
当記事の内容を参考に、「問題ございません」を正しく活用しましょう。