ビジネス用語としての「アセット」の意味を考えます。
アセットという言葉そのものはかなり浸透しており、「アセットマネジメント」のようにビジネスとしてだけでなく一般的に使われるフレーズとして定着しつつあります。
そこで、ビジネスシーンでアセットを使うに当たって意味や用法、関係語などを改めてチェックしてみましょう。
アセットの意味とは?
まずはアセットの意味を確認しましょう。
ビジネス用語であるか否かを問わず、言葉を適切に扱う場合は必ず本来の意味を把握する必要があります。
会計学でいう資産や財産
アセットは元々会計学の用語で、「資産」や「財産」を表します。
具体的には現金同等物、もしくは株式や投資信託などの有価証券を指し、総じて換金性の高いものをアセットと呼ぶのが一般的です。
なお会計学上の考え方として、資産とは現在価値だけでなく将来的により大きな価値を生む可能性のあるものを指すという性質を押さえておきましょう。
利点や長所の意味もあり
英単語“asset”を紐解くと、会計学由来の意味の他に「利点」や「長所」という意味もあることがわかります。
このことから金銭的な価値だけでなく、有用なものを総括してアセットと表現するという考え方もあるといえるでしょう。
社会経済におけるアセットマネジメントの使い方
次に、関係語の中でも特によく使われる「アセットマネジメント」について触れましょう。
アセットマネジメントがカバーする範囲は非常に広く、今では社会経済において欠かせない言葉の一つになっています。
資産管理における投資信託と投資顧問
社会経済においてアセットマネジメントの概念そのものは従前から存在していました。
金融資産や不動産などの資産を管理する手法や業務のことで、特に金融業界では「投資信託」と「投資顧問」が一般に浸透しています。
投資信託とは資金運用の専門家が投資家から資金を集め、まとまった資金を運用することで生み出した利益の一部を投資家に還元するというビジネスです。
一方、投資顧問とは、専門家が一般の顧客に対し、投資などの資金運用について相談やアドバイスなどのサービスを提供する業務のことです。
「資産運用」という大きなスケールではなくとも、投資を主としてアセットマネジメントは一般社会に浸透していることがおわかりいただけるでしょう。
アセットアロケーションとの違いは?
アセットマネジメントに比較的近い言葉として、「アセットアロケーション」があります。
アセットアロケーションとは所有する資産の構成を整理し、資産配分を適正に行うことです。
PC用語の「ファイルアロケーション」に馴染みがあれば理解しやすいはずで、不動産に比重を置くかそれとも現金同等物を重視するかというように資産の総額や構成を考えながら各資産のボリュームやバランスを整えるという点がポイントです。
アセットマネジメントとアセットアロケーションの違いを述べると、アセットアロケーションはアセットマネジメントの一手法であるということができます。
考え方としては「アセットマネジメントを実施するに当たって、アセットアロケーションの手法を用いるかどうか」という点が重要であり、語句そのものの違い以上に両者を体系立てて理解することが肝心といえるでしょう。
土木事業のアセットマネジメント
土木事業や水道会社の業界におけるアセットマネジメントは少し意味合いが変わってきます。
取り扱うものが土木・水道という社会インフラに関わる事業ということもあり、建物や水道設備の建造そのものを資産とみなして管理・評価するという考え方が前提となります。
その上で中長期的な観点で資産の状態を予測し、予算成約の中で最適な建造活動と維持管理を行うことをアセットマネジメントと呼んでいます。
余談ですが、マンション管理においても建物や部屋の品質を中長期的に維持・管理する「プロパティマネジメント」という概念があります。
大筋においてアセットマネジメントと同様の考え方といえるでしょう。
IT業界におけるデジタルアセットの使い方
IT業界におけるアセット、いわゆる「デジタルアセット」の使い方をご紹介します。
アセットが様々な資産や財産を包括することは既知の通りで、それはPCやスマホなどにおけるデータやソフトウェアなどといった電子情報、いわゆるデジタルデータをも網羅します。
デジタルデータ資産とは?
IT業界における電子情報のアセットは「デジタルデータ資産」と言い換えることもできます。
PCやスマホ上に存在するデジタルデータも立派な資産であり、個人や企業が所有する財産です。
特に会社内部の機密や公開前の財務情報は最重要事項に相当し、デジタルデータ化されている場合も多々あります。
なおデジタルデータ資産に限らず、このように直接の金銭的価値で測れないものであっても所有者にとって大事なものはアセットとみなすことが一般的です。
重要視されるWEB広告業界でのアセット
ITビジネスシーンの中でもWeb広告業界におけるアセットは、集客やターゲット層に対する戦略展開の上で非常に重要視されています。
WEB広告業界でのアセットとは、事業を行う上での様々な情報やデータベースといった知的財産全般を指します。
例えば昨今話題のビッグデータは広告業界において特に有用なアセットといえるでしょう。
また近年急成長を遂げている動的検索広告はWEB広告業界のアセットを利用した手法の1つです。
自社が発信している広告の内容に近い情報をWEB検索したユーザーに対して、広告を自動的に表示するように設定することができるのが特徴です。
闇雲に不特定多数の相手に広告を出すよりも訴求率が高く、無駄が少ない点からも効果的であると考えられています。
Photoshopの画像アセットとは?
画像編集ソフトウェアPhotoshopには「画像アセットの生成」という機能があります。
これは既存の画像データから一部分を切り出し、新たに「画像アセット」として生成するという機能です。
画像アセットは「画像ファイル」とほぼ同義ですが、編集の行為には自己の意思が反映されており資産や財産の意味合いがより強調されています。
アセットは様々な分野で使われている!
アセットは幅広い用途で使われています。これまで述べたような物資や金銭類だけを指すわけではありません。
例えば私達人間も労働力を提供する資産、すなわちアセットであるという見方が可能です。
ヒューマンアセットは企業成長のポイント
「ヒューマンアセット」とは日本語の「人材」のことです。
ヒューマンアセットには単なる労働力としてカウントするのではなく成長性や将来性などを加味し、文字通り会社の資産として活用していくという考え方が根底にあります。
企業成長に欠かせない存在ということができるでしょう。
軍事面でのミリタリーアセットのもつ意味
「ミリタリーアセット」とは「軍事行動に関わるアセット」といった意味で、日常生活とは区別して使われます。
軍事行動の指す範囲は非常に広く、そのためミリタリーアセットの具体例といえば武器や攻撃・防衛設備および生産設備といった物質的な意味のほか、大小の部隊や諜報員(スパイ)といった人的資産を指す場合もあります。
状況や文脈によって内容は変化するため、会話や読解の際には前後関係に注意しましょう。
アセットとリソースの違いとは?
横文字に通じている方であれば、アセットと似た意味を持つ「リソース」という言葉をご存知でしょう。
ここでいま一度リソースの意味をチェックし、アセットとの違いを把握しておきましょう。
リソースとは「資源」もしくは「経営資源」と訳されるもので、主に消費や投入に要する財のことを指します。
両者は非常に似た言葉ですが、アセットが資産・人材といった個人や企業の財産という意味合いが強いのに対して、リソースは資材・燃料・労働力といった汎用的な消費財のニュアンスが強いと理解すればよいでしょう。
会計学上の考え方を当てはめてもOKで、アセットが将来的な価値を生む財産であるのに対してリソースは単純に消費するだけの原材料に相当するといえるでしょう。
アセットを使ったワンランクアップの例文集
最後に、アセットを使った例文を紹介します。実用的で意義のある使い方によりワンランクアップを図りましょう。
例文
終活と息子への生前贈与を兼ねて株式や不動産をいくつか売却して資金化し、アセットアロケーションを行った。
例文
公共福祉とアセットマネジメントの観点に基づき老朽化した橋を修繕するか、それとも一から作り直すかを判断する必要がある。
例文
当社の強みはITベンチャーならではの独自のデジタルアセットと、急成長を支えるヒューマンアセットだ。
例文
開示前の決算情報は会社の重要アセットであり、外部への流出や持ち出しは厳禁。金融庁へのデータ提出完了までは一切の情報を伏せることを徹底する。
まとめ
アセットという言葉がカバーする範囲は非常に幅広く、それでいてビジネス用語の中でも意味がわかりやすい言葉です。
なぜならば文脈や前後関係によってある程度内容が変化するにせよ、根底にあるものが資産や財産であるという点が明快で馴染みやすいからです。
アセットには関係語や業界用語も多数あります。アセットの本来の意味を押さえつつ、それぞれの関係語や業界用語にも対応できればあらゆる場面で問題なく使いこなせるでしょう。