一般生活でも馴染みのある言葉「アテンド」。CAがキャビンアテンダントの略であることが認知されているように、アテンドというフレーズそのものは既に広く浸透しているといえます。
とはいえ、ビジネス用語としての使い方、また語源や正確な意味となれば話は別でしょう。
そこで今回はそんなアテンドの詳しい内容についてご紹介します。
アテンドは和製英語と英語では意味が違ってくる!?
外来語やカタカナ用語の中には、元々の意味とは異なるニュアンスで輸入され、日本国内に浸透していった言葉があります。アテンドもその一例です。
そこで、日本で使われている和製英語のアテンドと、語源である英語のアテンド(attend)の双方をチェックしてみましょう。
アテンドは日本独自で進化した言葉
意外に思う方も多いでしょうが、アテンドは日本独自で進化した言葉です。
由来そのものは英語“attend”なのですが、用法は大きく変化しており意味合い・対象ともに全く異なります。
和製英語「アテンド」の意味と使い方
和製英語「アテンド」の意味は主に「~の世話をする」「~に付き添う」といったものです。特に使い方の面で重要なこととして、第三者を対象としている点が挙げられます。
日本語表現でのアテンドに間してはこの点を押さえておきましょう。
英語「attend」の意味と使い方
上記を踏まえ、今度は英語の“attend”についてチェックしましょう。
和製英語のアテンドが人を対象とするのに対し、英語“attend”は主として「~に参加する」「~に出席する」といったように主体が自分自身であることが挙げられます。
なお、和製英語のアテンドとして浸透した「~に付き添う・随行する」といった用法もありますが、用法としては副次的でありメインではありません。
しかし、日本語に輸入される際にはむしろこちらの用法がクローズアップされたという経緯がが見て取れます。
そもそもアテンドの語源や由来とは?
英語の“attend”を話題に出したところで、この機会にアテンドの語源および由来をチェックしましょう。
英語“attend”の語源はラテン語における熟語“AT + tendere”に由来し、その意味は「~に心を向ける・注意する」というものです。
つまり、そもそもラテン語から英語に輸入された段階で意味合いが少し変容しているということがわかります。
つまり“AT + tendere”がラテン語から英語に輸入された際、そのニュアンスが<心を向ける⇒関心を持つ⇒参加する・出席する>というように転じていったことが想像できます。
すなわち、輸入当時における国の文化的土壌や国民性、時代背景などが作用しその時点で最も相応しいニュアンスとして浸透していったのです。
また、このような現象は日本のみで見られるわけではないということもこの事例から読み取れます。このように見ていくと、言語の歴史は非常に興味深い文化であるといえるでしょう。
シチュエーション別アテンドの使い方と例文
さて、次はシチュエーション別にアテンドの用例をご紹介します。
主な例文として取引先とのやり取りや、旅行業・接客業での使い方、さらにゴルフでの用例をご紹介します。
取引先をはじめとしたビジネスシーンで使われるアテンド
例文:付き添い・立ち会い
監査法人による当社B支店の業務監査に、山本課長がアテンドすることになった
例文:随行・随伴
取引先A社との懇親会会場まで、先方の出席者を駅からアテンドすることにした
旅行業・接客業で使われるアテンドサービス
例文:ホテルの案内
お客様のお部屋までアテンドいたします
例文:道案内
現地のガイドさんにアテンドしていただいたので、旅先でも迷わずに済んだ
アテンドはゴルフでメジャーな用語
例文:サポート
彼が長年プロゴルファーを続けている所以のひとつに、あの名物キャディさんのアテンドがある
アテンドスタッフ(アテンダー)ってどんな仕事?
先の例文で、アテンドにも場面や仕事に応じて細かい違いがあることがわかりました。
ここでは、アテンドを主な仕事とするアテンドスタッフ(アテンダー)をご紹介します。
サポートを主とした職業
アテンドスタッフとは先述の職業別用例における例文のように、場面に応じて相応しいサポートを行うスタッフのことです。
ただしアテンドスタッフに関する厳密な定義はなく、この呼称はあくまで便宜的なものといえます。
つまりアテンドスタッフとは「職業」というよりも「役割」の意味合いが強いです。
普段は他の仕事に従事している人が場面に応じてアテンドスタッフを担当していることも多い点に注意しましょう。
アテンドナースなどのアテンドがつく熟語
アテンドのフレーズが付いた熟語をご紹介します。ここではアテンドナースとブライダルアテンドの2つの職業を取り上げます。
まず、アテンドナースとは、いわゆる添乗ナースのことでツアーナース、旅行添乗ナースとも呼ばれています。
具体的な仕事の内容は主に修学旅行などの長距離旅行に随行し、怪我や病気に見舞われた参加者に対する応急処置やファーストエイドを行います。
ブライダルアテンドとは結婚式や披露宴といった婚礼に関わる行事進行をサポートする仕事です。
具体的にはタイムスケジュールに合わせて新郎新婦を美容室や式場に案内し、食事に関するサポートや式場での振舞いに関する情報伝達を行います。
両者いずれもアテンドの名が示す通り主に介助・サポートの役割であることがうかがえます。
アテンドの類語や反対語をチェック!
アテンドに関する反対語・対義語は特にありません。
類語を把握することによって、アテンドの意味合いをよりいっそう深く理解できるはずです。
アテンドとアサインの正しい使い方
類語の1つとして真っ先に挙げられるのは「アサイン」です。特に旅行業界においては違いがわかりづらいため、改めてご紹介します。
アテンドが荷物運びや部屋の案内といった介助・サポートを指すのに対し、旅行業界におけるアサインは「部屋や席などを割り当てる」という意味を表します。
つまり、サービス提供者が利用客に対して適切な場所や環境を確保し提供するという、管理・運営側が使う言葉なのです。
アテンドとアサインは類語であるものの、本質的に全く異なる言葉であるといえるでしょう。
アテンダンスとの違いとは?
次に、アテンドの派生語である「アテンダンス」をご紹介します。アテンダンス(attendance)に関しては英語の訳がそのまま適用され「出席」「参加」「出勤」といった意味合いになります。
つまり日本語表現上ではアテンダンスはアテンドの派生語でありながらも、訳に関しては完全に異なる意味であることにご注意ください。
英語の知識がある人にとっては不可解に感じられる部分ですが、これも言語輸入に伴う影響の一例といえるでしょう。
外国人をアテンドするときに喜ばれる好印象フレーズ
最後に、外国人をアテンドするケースを想定してみましょう。
文化や生活習慣の違いは無意識のうちにストレスや緊張を生んでいるはずです。
手軽で簡単に使えて、なおかつ相手に喜んでもらえる効果が期待できる好印象フレーズを数点ご紹介します。
例文
Shall I carry your luggage?(荷物をお運びしましょうか?)
例文
Shall I walk more slowly?(もう少しゆっくり歩きましょうか?)
例文
After you.(お先にどうぞ)
まとめ
和製英語アテンドと英語“attend”では意味が異なるのに、派生語のアテンダンスと“attendance”では同じ意味として使われるという事例は和製英語の要注意点です。
やはり和製英語については英語の用法に立ち戻ること、さらに英語以外に語源がある場合は遡って調べてみることが非常に大事です。
言語は文化や歴史と密接につながっています。興味が湧いたなら、言語に関連する情報を集めてみましょう。深い理解につながるはずです。