「ジョイントベンチャー」ってどんなもの?M&Aや提携との違いは?

業界や企業の垣根を超えた事業を取り沙汰する際、欠かせないのがジョイントベンチャーという概念です。

ジョイントベンチャーについて理解し、時代の流れを読む契機につなげましょう。

この記事の内容

ジョイントベンチャーってどんな意味?

そもそも、ジョイントベンチャーとはどんな意味でしょうか。

まずは言葉のルーツからチェックしていきましょう。

日本語でいう合弁会社のこと

ジョイントベンチャーは、日本語の合弁会社に相当します。

つまり特定の事業を目的に、複数の会社が出資して誕生した会社のことです。

ジョイントベンチャーは2つの英語が熟語に!

ジョイントベンチャーは英語に由来します。英語の“joint”と“venture”を組み合わせて出来上がった熟語で、元々は英語圏で誕生した言葉です。日本特有の造語ではありません。

“joint venture”をカタカナ語にしたものが、ジョイントベンチャーというわけですね。

ジョイントベンチャーの仕組みを詳しく解説

次にジョイントベンチャーの仕組みを解説します。

合弁といわれても今ひとつピンとこないかもしれません。合併との違いもわかりづらいですよね。

そこで、ビジネスシーンにおける合弁の要領を確認しましょう。

ジョイントベンチャーの設立方法や出資比率・会計処理

ジョイントベンチャーを立ち上げるということは、新しく会社を設立するということでもあります。

会社設立に関する所定の手続きを済ませる必要があります。

ジョイントベンチャーの立ち上げについて、特に重要と思われる項目を抜粋します。 ジョイントベンチャーの設立方法は次のようにまとめられます。

設立方法

  1. 新事業立ち上げの目的、理念を設定する
  2. 合弁する企業を選定し交渉を実施
  3. 新会社の基本事項を決定(定款記載事項、役員構成、出資割合等)
  4. 公証人と打ち合わせの上、定款内容の確定
  5. 資本金を発起人口座に払込む
  6. 公証役場で定款認証
  7. 法務局へ設立登記申請

なお、ジョイントベンチャーの案を持ちかける側か、持ちかけられる側かによって対応要領が変わります。

特に案を持ちかけられる側の場合は、発案側の思惑を汲み取ってメリット・デメリットを見極める必要があります。

出資比率・会計処理

ジョイントベンチャーの場合、意思決定の権利は出資比率に応じて付与されます。話を単純化すると、出資比率が多いほど大きな発言権を得られるということですね。

出資比率については、合弁の核となるメイン企業が最も多く負担するのが一般的です。例えば50:50のように、全く平等な力関係というのはむしろ稀だとされています。

次にジョイントベンチャーの会計処理をチェックしましょう。ジョイントベンチャーは新会社であり、本来はいずれの参加企業からも独立した会計方式(独立会計方式)を採用するのがベストです。

しかし実際のところは、合弁の代表企業が運用している会計システムを流用する場合が一般的です。

具体的には代表企業が運用している既存の会計システムに、ジョイントベンチャーに関する全ての取引を取り込んで処理することになります(取り込み方式)。

メリット・デメリット

ジョイントベンチャーによって得られるものはメリットだけではありません。残念ながら、避けられないデメリットも生じます。

そこでメリットとデメリットを、それぞれ箇条書きの形で列挙します。

メリット

  • 100%の全額出資よりも投資額を抑えられる
  • 損失・倒産のリスクやコストを低減できる
  • 出資を伴うため一般的な提携関係よりも解消されにくい
  • 合弁先のブランドやリソース、ノウハウを活用できる

デメリット

  • リターンは出資額に見合う分に限られる
  • 合弁相手の意志を無視できず摩擦や対立の可能性を生むリスクがある
  • 自社のノウハウが流出するリスクがある

やはりメリット・デメリットは表裏一体であることがわかりますね。

ジョイントベンチャーは設立時の契約がカギ

異なる文化を持った複数の企業が合弁するのですから、全てが順風満帆で進むとは限りません。時として摩擦や軋轢が生じるとしても、何らおかしくはないでしょう。

不測の事態に備えて、利害調整を図る予防策が必要です。そこで役立つのが、新会社設立時に交わす契約の存在です。

契約書への記載事項として、業務内容や利益の支払い方法を明記するのは当然ですね。加えてトラブルが発生した場合についても、できるだけ細かく対処法を網羅するべきです。

特に一方的な不利益を被ることがないよう、注意を払うのがポイントです。損失に関する記載事項は典型例といえるでしょう。

ジョイントベンチャーの正しい使い方を例文でみてみよう

さて、文章の形でジョイントベンチャーを使う場合を考えてみましょう。例文を3つ紹介します。

例文

海外進出に当たり、100%出資で現地法人を置くべきか、それともジョイントベンチャーを組める現地の会社を探すべきか。コストを抑えるならジョイントベンチャーのプランが望ましいといえる。

例文

当社はジョイントベンチャーのV社に40%出資している。よって決算の際には子会社ではなく、関係会社として会計処理する必要がある。

例文

ジョイントベンチャーで開発と販売を行っている商品に、リコールが発生した。クレーム処理に関する契約に基づき、合弁企業C社との負担割合によって損失計上を行った。

ジョイントベンチャーと「コンソーシアム」や「業務提携」意味の違い

ジョイントベンチャーに比較的近い共同事業として、コンソーシアムや業務提携の2つが挙げられます。

コンソーシアムとは2つ以上の個人・企業・団体・政府から成る団体です。主に非営利団体の形態をとることが多いとされます。

コンソーシアムの大きな特徴は、株主のために利益を追求するのではないという点です。営利目的のコンソーシアムも存在しますが、事業体を存続させること自体を目的とする場合が多いといえます。

次に業務提携の特徴を見てみましょう。業務提携とは、複数の企業が独立性を保ちながら協力し合うことを指します。

つまり資本参加する場合でも、拒否権が発生するほどの大きな影響力は持たないということです。

またノウハウは提供するが、出資しないという選択も可能です。コンソーシアム、業務提携ともに、ジョイントベンチャーとは異なる性質を持つことがわかりますね。

関連語をチェック

ジョイントベンチャーには関連語がいくつかあります。

主なものを簡単に紹介します。

ジョイントベンチャーパートナー

ジョイントベンチャーパートナーとは、合弁した共同企業のことです。

読み書きするには長くなりがちなので、JVパートナーと略されることもしばしばです。

アライアンス

アライアンスとは、主として事業における提携関係のことです。元請け・下請けとは異なり、上下関係は特に発生しません。

また企業間の業務提携に限らず、産学共同事業のような形態もあるのが特徴です。

パートナーシップ

パートナーシップとは、企業同士の協力関係を指します。

具体的な内容は場合によって異なり、提携を指すケースもあれば一時的な協力を指すこともあります。

M&A

M&Aとは“Mergers and Acquisitions”の略語で、企業買収による吸収・合併とのことです。

ジョイントベンチャーや提携と異なる点として、相手企業を取り込み支配下に置くという特徴があります。

ジョイントベンチャー3つの事例

最後に、ジョイントベンチャーの事例を3つ紹介します。

LINEとサイバーエージェント

2014年、LINE社とサイバーエージェント社がジョイントベンチャーとして㈱グリーンモンスターを立ち上げると発表しました。

業界としては珍しい、ゲーム事業の共同運営会社ということで話題になりました。開発はサイバーエージェント社が担当し、LINE社が自社プラットフォームLINE GAMESにてマーケティングを行うというスタイルで展開しています。

合弁出資バス事業者

2012年の新高速バス制度施行に伴い、旅行代理店が自社系列のバス会社を設立し始めました。

旅行代理店とバス運行委託事業者との共同出資による、ジョイントベンチャー型の事業者が各地で見られるようになったのです。

ビックロ

ジョイントベンチャーの中でも最も有名な事例が、2012年に誕生したビックロです。

言わずとしれたビックカメラとユニクロの混成店舗で、専用のロゴまで作成したのも話題になりました。

新宿駅東口という、国内トップクラスの集客エリアなので店舗運営費は莫大なものです。

しかし共同運営する形にすれば、コストを大幅に削減できますよね。実に見事な戦略といえるでしょう。

まとめ

以上、当記事ではジョイントベンチャーについてまとめました。新たな事業のビジョンを描いたとしても、独力では実現不可能だと気づくことがあるでしょう。

独力で行き詰まった時には、共同事業の形態をとることで実現の可能性が見える場合があります。

しかし、M&Aや業務提携が常に最適なプランとは限りません。そんな時、ジョイントベンチャーは有力な選択肢の1つになるでしょう。

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