ドラマやゲームなどのシナリオ展開で、近年よく見られるのがパラレルの手法です。パラレルワールドと聞けばピンとくる方も多いでしょう。
同一の時間軸に2つの世界が存在する、という設定が多いですよね。別の世界では自分自身が異なる人物になっている、というのもよくある描写です。
パラレルの概念や思考法は実にユニークなものです。改めてパラレルに注目し、日々の仕事や生活に役立てましょう。
パラレルとはどんな意味?使い方や由来を解説
既に多くの方が、パラレルの意味や使い方をご存知でしょう。
しかしおさらいする機会も大事です。
また由来や語源にも注目し、パラレルについての理解を深めましょう。
パラレルの意味は「並行」「平行」
パラレルとは日本語の並行・平行に相当します。並行は同時に行う・並んで進むという意味です。
一方、平行は交わらないという意味ですね。
複合語の名詞として使用
パラレルは複合語の名詞として使われることも多い言葉です。後述するパラレル通信、パラレルターンなどが好例ですね。
複合語でパラレルが登場した時には、並行と平行のどちらの意味なのかを意識するとよいでしょう。
英語「parallel」の語源はギリシア語
パラレルは英単語“parallel”に由来します。実は“parallel”もオリジナルの言葉ではなく、語源があります。
“parallel”の語源はギリシア語で、超越して・反対側にという意味です。
パラレルの使用シーンを例文を使ってみていこう
次にパラレルの使用シーンを想定しましょう。
例文も併せて紹介します。
パラレル回路
パラレル回路とは、電流の並列回路に相当します。
ちなみに対義語であるシリアル回路は、直列回路のことです。
例文
シリアル回路を変換し、パラレル回路に設定した。
パラレルに進める
パラレルに進めるとは、仕事や作業などを同時並行で進行させることです。
ちなみにスタッフに指示を出す立場の人などが「パラで進める」と表現することがありますが、意味は同じです。
パラレルを「パラ」と、簡略的に使う場合があるということですね。
例文
A社とB社、両方の案件をパラレルで進めることになった。納期に余裕があるため、2つの案件でも一人で担当できると判断されたらしい。
パラレルな関係
パラレルな関係とは、主に人間関係におけるスタンスや距離感を表します。
つまり交わらないというニュアンスでのパラレルであり、話し合いであれば平行線という言い方もできます。
また恋愛の話題でもしばしば登場するので、比較的有名なフレーズですね。
例文
彼はサークル内の誰とも深くは関わらないが、実力は折り紙つきだ。また誰に対しても同じスタンスで接し、より好みもしない。チームメイトとして尊敬できるし、気を遣わずに済む相手ともいえる。
パラレルな場
パラレルな場とは元々、精神科作業療法の一形態です。トポスという別称でも知られています。
パラレルの場の特徴として、人が集まる場所でありながらも行動を強制されたり、制限されたりすることがありません。
また他人との同一性を要求されないので、任意のタイミングで任意の利用法を選択できるという点も挙げられます。
例文
マンションの規則により、自宅では楽器の演奏が禁じられている。しかしギター教室に通ったり、一人でスタジオに入って弾いたりするのはためらってしまう。そこで、パラレルの場というものに注目している。パラレルの場であれば、思い思いに時間を過ごせるという。楽器の演奏もOKらしい。
パラレルに考える
思考法の一つとして、パラレルに考えるというものがあります。物事を並行視点で捉え、複数の見地から思考するということです。
ちなみに並行視点といっても、視点を2つに限定する必要はありません。3つでも4つでもOKで、視点が複数であるという点が重要なのです。
例文
いわゆる仕事のできる人は、自分一人の立場でものを考えることをしない。必ず第三者の立場で状況を把握し、複数の視点に基づき最適な判断を下す。つまり物事をパラレルに考える習慣がついているのだ。
様々なジャンルで使われるパラレルの意味をチェック
先の項で少し触れた、複合語の名詞をまとめて紹介します。
中には馴染み深いものもあるはずですよ。
パラレルワールド
近年の創作物で一種のトレンドになっているのが、パラレルワールドで物語を展開するシナリオです。
パラレルワールドとは全くの異次元ではありません。次元は同じである一方で、我々が認識している現実とは別に存在すると仮定された現実世界を指します。
パラレルワールドにおいては、自分自身も別の人格で存在している可能性があるというわけです。
概念としては、いわゆるifシナリオのような捉え方が近いといえるでしょう。
パラレル通信
パラレル通信とはデータ伝送方式の1つで、日本語の並列伝送方式のことです。電流回路の方式とよく似た仕組みで、直列伝送方式をシリアル通信という点も理屈は同じです。
パラレル通信の特徴は、複数の通信回線を用いてデータを一度に伝送することです。
シリアル通信と比べてコストがかさむものの、高い転送速度を得られるとされています。
パラレルポート
パラレルポートとは、パラレル通信を利用してPCと周辺機器を結ぶ接続端子の一つです。主にプリンタを接続する用途で普及していました。
しかし2000年代に入るとシリアル通信を利用した技術が主流となり、現在のようにUSBによる接続が一般的になりました。
パラレルターン
パラレルターンはスキーにおける滑走技術の1つです。方向転換する際に、両足を揃えてエッジを効かせるのが特徴です。
動作の際に、両足のスキー板が平行に揃う形になる様からパラレルターンと名付けられました。
パラレルキャリア
パラレルキャリアはオーストリア人経営学者、P.F.ドラッカー氏が提唱した概念です。
ドラッカー氏によれば、パラレルキャリアとは並行して積んでいくキャリアという意味です。
つまり、単なる副業や小遣い稼ぎに留まるものではないということですね。いわば将来を見据えて研鑽を積むべき職能といえるでしょう。
パラレルの反対とは?対義語「シリアル」の意味
電流や通信の例でも紹介した通り、パラレルの反対語はシリアルです。
シリアルとは「連続した」「ひと続きの」という意味です。いまひとつピンとこないという方でも、シリーズの派生語だと聞けば納得でしょう。
ちなみに英語“series”の形容詞形が“serial”です。それぞれストレートにカタカナ語化されていることがわかりますね。
パラレルの類語や同義語をチェック
パラレルには類語・同義語が2つあります。1つ目は並行です。同時に行う・並んで進むという意味で、ビジネスでは同時並行という言い回しでよく使われます。
2つ目は平行です。交わらないという意味で、話し合いや議論がまとまらない場合などによく使われます。平行線を辿るという言い回しも多いですね。
パラリンピックの由来も「パラレル」の意味を理解すればスッキリ
実はパラリンピックも、パラレルにちなんだ名称です。
パラリンピックは本来、下半身不随(paraplegia)とオリンピック(olympic)に由来する造語でした。
しかし1985年以降、対象を下半身不随者に限定することを廃止しました。そしてハンディのある方全てに参加資格を広げたのです。
また時期を合わせてパラリンピックの名称はそのまま残しつつ、パラレル(parallel)とオリンピック(olympic)の組み合わせであると位置づけるようになりました。
新たなパラリンピックの概念と語呂合わせは次第に広まり、今ではすっかり定着しているというわけですね。