近年ビジネスシーンを中心として、急速に浸透しつつあるのがベストプラクティスという概念です。
方法論やメソッドとよく似ていますが、イコールではありません。
単なる手段や方法ではなく、「最善の方法」といった意味合いで使われるのです。
ベストプラクティスの日本語の意味とは?
ベストはともかく、プラクティスという言葉は馴染みが薄いですよね。
まずは意味を把握するためにも、ベストプラクティスを日本語で表現してみましょう。
1番よいやり方「最善慣行」「最良慣行」
ベストプラクティスを漢字で表すと、最善慣行もしくは最良慣行が当てはまります。
簡単にいえば「一番良いやり方」という意味ですね。
英語から生まれたビジネス用語「成功事例」
ベストプラクティスは英語から誕生したビジネス用語。プラクティス(practices)には慣行・慣例という意味があります。
ビジネスシーンにおいて、最も優れた仕事のやり方は成功の事例として慣行・慣例化していくのが道理ですよね。すなわち仕事術のスタンダードとして定着していくのです。
まとめると、優れた仕事術が慣行・慣例化し、成功事例として定着する様を“best practice”と表現したわけですね。
英語「best」+「practices」に由来
ベストプラクティスは、英語の“best”と“practices”を組み合わせて生まれたフレーズです。日常生活で“practices”といえば、練習や訓練の意味で使う方が多いでしょう。英語圏でも同様です。
辞書を引いても、習慣・慣行といった意味の優先度は高くありません。
ビジネスシーンと日常生活で、“practices”の位置づけは異なることがわかりますね。
ベストプラクティスの正しい使い方を例文と一緒に解説
ベストプラクティスの用例を見ていきましょう。
使い方がイメージしやすくなるよう、例文形式で紹介します。
例文
今回のプロジェクトは前例がないため、常に手探りの状態だ。メンバー間でよく話し合って選択肢を吟味し、ベストプラクティスで進めていく必要がある。
例文
トヨタ社の強みとして、横展開の文化が根づいている点が挙げられる。優れた仕事術は社内的に評価され、他の部門やチームにも波及するのである。横展開とはすなわち、ベストプラクティスの共有と同義なのだ。
例文
経営手法の1つにベンチマーキングというものがある。同一のプロセスに関する優良・最高の事例と自社との比較分析を行い、業務効率の向上を図るという手法だ。優良・最高の事例との比較分析はベストプラクティス分析と呼ばれており、ベンチマーキングに欠かせないプロセスといえる。
ビジネス以外でよく耳にするベストプラクティスの使われ方
ベストプラクティスはビジネスシーン以外でも使われています。
一例を紹介しましょう。
医療従事者のスキンテアにおけるベストプラクティスの意味
皮膚裂傷のことをスキンテアといいます。医療の分野ではスキンテアがつきものです。
特に高齢者は皮膚が弱くなっており、スキンテアを引き起こしやすいといえます。
絆創膏を剥がす際、一緒に皮膚が剥がれてきたり、車椅子移乗のときに皮膚が擦れて裂傷になったりする場合があるのです。
医療従事者にとってはスキンテアを予防し、発生リスクを排除していくのが一つの課題になっているわけですね。
スキンテア予防のベストプラクティスとして、栄養管理、ベッド環境・車椅子環境の整備、皮膚の保湿などが挙げられています。
感染管理におけるベストプラクティスの意味
ウイルスによる感染症は大変な脅威ですよね。ベストプラクティスの概念は感染管理においても大事で、特に医療の分野では重視されています。
ベストプラクティスのアプローチとしては感染経路を把握し、対策を打つのが有効です。
感染経路は接触・飛沫・空気と、ある程度絞り込めますよね。自ずと手洗い・うがい・手袋やマスクの着用といった対策法が浮かんでくるでしょう。
感染管理におけるベストプラクティスは、ロジック・アプローチともに意外とシンプルなのです。
「AWS」や「salesforce」におけるベストプラクティスの意味
「AWS」とはAmazon Web Services(アマゾンウェブサービス)、「salesforce」とはsalesforce.com, Inc.を指します。
AWSにおけるベストプラクティスとはクラウドサービスのインフラを提供し、計算資源やネットワーク、ストレージなどあらゆる機能をWeb上で賄うこと。
一方、salesforceにおけるベストプラクティスとは、クラウドサービスを利用した企業向けの営業支援を低コストかつ効果的に実施することといえます。
主に販売活動に関するアプリケーションを展開しており、大規模マルチテナント型と呼ばれるシステムを利用して数千単位の企業にインフラを提供しています。
ベストプラクティスの類語の意味や使い方をチェック
ベストプラクティス類語として、代表的なものを3つ紹介します。
意味や使い方をチェックしてみましょう。
ベンチマーキング
ベンチマーキングとは国や企業などの組織が運用する製品やサービス、プロセス、慣行を継続的に測定し、競合他者のパフォーマンスとの比較・分析を行うことです。
PCの性能チェックを意味するベンチマーキングと概ね一緒ですが、ビジネス用語の場合は競合する優良企業等との比較を行う点が特徴ですね。
クエリ
クエリ(query)とは問い合わせる・たずねるという意味のIT用語です。
一般的にはデータベースクエリを指し、データベースから情報を引き出す命令に当たります。
Web上で検索用のキーワードを入力し、検索エンジンを作動させる行為を思い浮かべればわかりやすいでしょう。
レプリケーション
レプリケーションはIT用語の1つです。
複製という意味の「レプリカ」に由来する、と聞けば少し馴染みやすくなるのではないでしょうか。
簡単に説明すると、特定のデータベースを別のデータベースに複製し、同期させる機能を指します。
一般的なバックアップは人手が介在しますよね。バックアップを取るにせよ、バックアップからデータを復旧させるにせよ作業が必要です。
一方レプリケーションの場合、複製元が停止すると即座にレプリカが機能を代替します。
さらに複製元の動作が復旧した場合、停止中に加えられた変更もレプリカ経由でフィードバックされる仕組みです。
まとめ
ベストプラクティスは聞こえがよく、指示を出す際にも使いたくなる言葉の1つですよね。
ベストプラクティスには成功事例や比較検証の意味が含まれますが、単に「ベストを尽くせ・過去に倣え」という意味で使ってはいけない、重みのある言葉なのです。
意義や使うべきタイミングを理解し、ここぞという場面で運用できるようにしていきましょう。