経営者などのエグゼクティブ層にとって、ステークホルダーは必須ワードの1つといえます。
エグゼクティブ層でなくとも、例えば株主総会に馴染みや関心のある方ならばステークホルダーの意味をご存知でしょう。
近年では経営活動などのビジネスシーン以外でも、ステークホルダーを用いた表現が増えつつあります。
ステークホルダーに関する最新情報をチェックし、正しい運用を図りましょう。
ビジネスにおけるステークホルダーの意味をわかりやすく簡単解説
基本情報として、ビジネスにおけるステークホルダーの知見は必須です。
語源や由来を含めてチェックしていきましょう。
企業経営における利害関係者のこと
ステークホルダーとは、企業経営における利害関係者のことです。
利害関係者と聞いて真っ先に浮かぶのは、企業に出資している株主でしょう。
主要な取引相手である仕入先・得意先も代表的な利害関係者といえます。
ステークホルダーの役割とは?
ステークホルダーとは利害関係者のことだと説明しましたが、あくまで簡便化した表現です。
「利害関係」というと、あたかも損得勘定のみでつながった計算高い関係性のように思われがちですよね。
もちろんビジネスなので、損得や駆け引きの要素もある程度介在します。とはいえ、決して損得勘定が全てではありません。
ステークホルダーの本質は、企業を中心として相互利益をもたらすことです。
企業に対して積極的に関わっていくことで企業が潤い、関与した人たち全体に恩恵がフィードバックされるのが本来のあり方といえるでしょう。
単に企業を利用するだけでも、自分が利用されるだけでも不適切です。
企業との関わりの中で相互利益を生み出すことこそ、ステークホルダーの役割というわけですね。。
英語のステークホルダーの意味は?語源や由来
ステークホルダーは「債権の保有者・債権者」を意味する、英語“steakholder”に由来します。
“steak”が賭け金や投資を指す言葉であり、“holder”が保有者というニュアンスです。
ステークホルダーの語源は西武開拓時代のアメリカに遡り、移住民が自ら開拓した土地に杭を打ち込んだことがきっかけといわれています。
移住民は自分たちが切り開いた土地の権利を主張するべく、杭を打って目印としました。もうおわかりでしょう、“steak”とは元々「杭」という意味なのです。
“steakholder”とは杭の所有者を意味する言葉であり、後に財産や権利の保有者というニュアンスに転じました。
ステークホルダーとは単なる利害関係者ではなく、自らの権利を主張できる立場にある人を指すということですね。
対企業に限らない!様々なステークホルダーの例から利害関係をチェック
ステークホルダーの由来や語源を知ると、言葉の性質にも理解が及ぶはずです。
ステークホルダーの性質に注目しつつ、分野ごとの用例を確認してみましょう。
株主によるステークホルダーの意味
株主はビジネスにおける代表的なステークホルダーです。
株式は“steak”の概念に最も近い媒体で、株主とは株式の保有者という意味です。
株式会社とは株主の出資によって構成されるものであり、株主の意向によって会社の方針も変化します。
筆頭株主や大株主ともなれば会社の方針に対して大きな発言力・影響力を発揮でき、さらに発行済株式の過半数を取得すれば会社運営の支配権までも獲得できます。
従業員によるステークホルダーの意味
従業員も主なステークホルダーの1つ。
株式会社の運営主体は社長・会長をトップとする取締役陣ですよね。
とはいえせっかく運営主体ができあがっても、従業員がいなければ部門や組織を構成できません。
従業員がいない場合は各取締役とも選手兼監督として勤務することになり、担当レベルの仕事まで全て自分でこなす必要があります。
やはり従業員も会社を動かす原動力であり、ステークホルダーなのです。
消費者や顧客によるステークホルダーの意味
株主の他に挙げられる体外的なステークホルダーとしては、消費者や顧客が筆頭格でしょう。
商品を購入したり、支持したりといった行為は売上増進・知名度向上につながり、自社を存続させる原動力になります。
株主のように権利の保有者が明らかな形態ではないにせよ、消費者や顧客は企業の命運を左右するカギを握っています。
企業がTVやWebなどを通じて広報・広告活動を行うのも、不特定多数の消費者や顧客にポジティブな心理的影響を与え、自社商品に対する関心を喚起したり、企業イメージの向上を図ったりする狙いがあるというわけです。
ステークホルダーの中でも消費者や顧客は不特定多数であり、しかも潜在しているという点でユニークですね。
得意先によるステークホルダーの意味
得意先は体外的なステークホルダーの中でも、ちょうど株主と消費者・顧客の中間に当たる存在です。
過去の取引に基づく信頼関係が構築されており、対象も明確ですよね。
また安定的に発注がありまとまった金額の取引を行うことも多いので、企業の業績に大きな影響を与える存在といえます。
地域住民によるステークホルダーの意味
企業にとっては、地域住民もステークホルダーです。
多くの企業はいずこかの地域に建物を所有もしくは賃貸契約し、事業所や店舗を構えるのが一般的でしょう。
現地での事業活動を通じ、結果として社員が意識せずとも地域に参加しているのです。
例えば企業が税金を納付する際、国税だけでなく地方税も納めることで間接的な地域貢献につながります。
県や市、役所といった行政機関も地域のステークホルダといえるでしょう。
また、企業といっても会社の中で行う活動だけが地域との関わり方ではありません。
社員が昼休みに近隣の食堂に入り、かけそばを一杯注文するのも立派な地域参加の形です。
地域住民の理解を得ている企業は事業活動もしやすくなる一方、反対に地域住民から忌避されている企業は社会的にも不利な立場に追いやられるでしょう。
最悪の場合は地域からの撤退・立ち退きといった、物理的影響を被ることになります。
やはり企業にとって、地域住民も大事なステークホルダーなのです。
ステークホルダーの正しい使い方を例文でみてみよう
ステークホルダーについての基本知識はクリアですね。
次に、文章の中にステークホルダーを組み込んで運用してみましょう。
例文
我が社にとってD銀行はメインの金融機関であると共に、当社株式保有率10%の大株主だ。名実ともにステークホルダーの代表格である。
例文
従業員も立派なステークホルダーだ。仮に従業員がボイコットすれば、役員自ら事務作業や電話取次まで対応することになる。また従業員の中から新たな役員が生まれる可能性もあり、やはり軽視してはいけない。
例文
消費者や顧客は目に見えないステークホルダーだ。潜在的な需要を掘り起こして期待に応えれば支持層も顕在化し、売上として数値に表れるだろう。
プロジェクトを成功させるためには?ステークホルダーのもつ意味を解説
ステークホルダーと経営用語を組み合わせたフレーズも存在します。
特にプロジェクトを管理運営する際、成功のカギとなるフレーズを紹介しましょう。
ステークホルダーマネジメントの意味
ステークホルダーマネジメントとは、アメリカの非営利団体PMI(Project Management Institute)が考案したノウハウです。
ステークホルダーマネジメントはプロジェクトなどの大規模な事業において運用するもので、プロジェクトをとりまく関係者全体をステークホルダーと位置づけ、計画的に管理していきます。
何よりも大事なのが、ステークホルダーの特定と優先順位の決定です。
プロジェクトなどを手がける場合は規模の大きさゆえに、ステークホルダーの範囲は社外にも及ぶ場合が多いでしょう。
一方時間や予算などとの兼ね合いから、ステークホルダーとみなす対象をある程度限定する必要があります。
プロジェクト成功のためには重要性の高い対象を選別・選抜し、優先的にコミュニケーションを図っていくことが肝心なのです。
企業の経営戦略に欠かせない!?ステークホルダー分析とは?
ステークホルダー分析とは、事業やプロジェクトに関わるステークホルダーの特徴を分析する手法のことです。
具体的には事業やプロジェクトへの影響度、技術力や資金力といったチェック項目を設定し、各ステークホルダーの属性を見極めるアプローチを行います。
分析の結果を踏まえ、どのステークホルダーに対してどのように働きかけていけばよいかを検討するというわけです。
予めステークホルダーごとの属性や特徴を把握しておけば、例えばターゲットをグループ分けして折衝に割り当てる担当を選抜したり、アプローチの仕方を練ったりといった対応がしやすくなるでしょう。
ステークホルダーの関連語まとめ
ステークホルダーの関連語を3点列挙します。
ステークホルダーマップ(ステークホルダー図)の意味
ステークホルダーマップは、ステークホルダー分析の発展型といえます。
ステークホルダー分析の結果を図示し、さらに関係性や関与の度合いを可視化させるのがポイントです。
ステークホルダー分析が主として各ステークホルダーの属性を把握するためのものであるのに対し、ステークホルダーマップの場合は相関関係や距離感なども網羅できます。
ステークホルダーエンゲージメントの意味
ステークホルダーエンゲージメントとは企業が事業や意思決定を行うに当たって、ステークホルダーの関心事を理解しようとする取り組みを指します。
ステークホルダーの範囲は社内外に及ぶため、株主向けに説明会や懇談会を実施したり、地域社会に向けて講演会や工場見学を開催したりといった多種多様なアプローチが考えられるでしょう。
ステークホルダーダイアログの意味
ステークホルダーダイアログとは企業が様々なステークホルダーを集め、双方向の対話を行うことです。
各ステークホルダーの利害や関心事、また企業活動によるステークホルダーへの影響を把握し、ニーズに適した商品の提供やCSR活動を促進します。
内容を簡単化すれば、自社の社会・環境的活動に対するステークホルダーの意見を反映させる機会を作るということですね。
企業によるCSR活動とステークホルダーへの影響度を考える
企業が株式会社の形態をとる以上、利益追求を旨とするのとは当然のことです。
一方、公明正大な事業活動により社会的にも貢献していく必要があります。
仮に企業が非倫理的な手法によって利益を上げたとしても、例えば株主の立場としては利益還元を喜べないどころか、そもそも出資したことを後悔するでしょう。
カギとなるのがCSR活動です。今や企業にとってCSR活動は、社会的責任の1つになっています。
CSR活動を始めるに当たって、目に見えない他者や社会をどのように認識すればよいか、スタートの段階ではわかりづらいかもしれません。
CSR活動の対象として、まずはステークホルダーをイメージするとよいでしょう。活動内容がステークホルダーに高く評価されれば、自ずと社会貢献につながります。
自社にとってのステークホルダーを把握するには、記事の中で紹介してきたステークホルダーエンゲージメントやステークホルダーエンゲージメントが有用な手立てになるはずです。
やはり、CSR活動とステークホルダーには強い相関関係があるといえるでしょう。
まとめ
ステークホルダーとの関わりを考える際、近江商人の思想「三方よし」を想起する方は多いでしょう。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の考え方には、ステークホルダーの概念と共通する要素がふんだんに詰まっています。
現代的な響きのあるCSR活動も、「世間よし」の一環であると考えれば納得できるのではないでしょうか。
「三方よし」のようにステークホルダーとの良好な関係を維持しつつ、相互繁栄を継続できる会社こそが生き残っていくのかもしれません。