「報告」といえば、ビジネスに限らず広く使われる言葉ですよね。
一方「ご報告させていただきます」という敬語表現の場合、使用の場面は自ずと限られるものです。
当記事では「ご報告させていただきます」という言い回しを分析し、敬語表現を解説します。
メールやツイッターなどの文章媒体での使い方、英語表現についてもカバーしますので、役立つ情報が満載です。
「ご報告させていただきます」は日本語として正しい?
「ご報告させていただきます」は、日本語として正しくないという指摘がなされることもしばしばです。
「ご報告させていただきます」を使うことに問題はないものか、最初に確認しておきましょう。
厳密には不自然な日本語
実のところ「ご報告させていただきます」は、敬語表現の原則から外れたフレーズです。
従って結論からいえば、不自然な日本語であるということになります。
敬語表現としての「させていただく」は本来、まず相手の許可を得てからアクションに移るのがセオリー。
ところが実際に「ご報告させていただきます」という発言をする際、相手の許可を得てから報告に移ることは稀ですよね。
すなわち、事前の承諾なしに報告を行っているケースがほとんどなのです。
実際は許容されており、定着している
「させていただく」は本来、事前に相手の許可を得た上で使う言葉だと述べました。
実際のところ「させていただく」は慣習的に違和感なく使われており、許容・認容されています。
「させていただく」は自らがへりくだり、相手を立てる謙譲表現。そもそもが敬語表現の上でも丁寧な言い回しなので、原則通り「相手の許可を得る」という部分がなくとも取り沙汰されないものと考えられます。
許可の有無よりも、敬意の有無の方が重視されているというわけですね。
「ご報告させていただきます」は日本語表現として、問題なく使えるフレーズだといえるでしょう。
敬語表現上、「ご報告させていただきます」は適切?
「ご報告させていただきます」という改まった言い方をするからには、報告の対象が目上の相手であるという前提を忘れてはいけません。
上記を踏まえ、敬語表現の観点から「ご報告させていただきます」を分析してみましょう。
「ご報告させていただきます」は正しい敬語
「ご報告させていただきます」は正しい敬語のフレーズです。
二重敬語ではないかと疑う意見もありますが、、異なる謙譲語を組み合わせた構成であり、分類上は連続敬語として扱われます。
謙譲の接頭語「ご」+謙譲語「させていただく」
「ご報告させていただきます」は2つの謙譲語を組み合わせたフレーズです。
後半の「させていただく」については比較的ポピュラーな謙譲語なので、問題なくご理解いただけるはず。ポイントはやはり、前半部の「ご報告」でしょう。
「ご報告」のややこしいところは、あたかも自分自身に対して尊敬表現しているかのように思われがちな点。
今回の例のように「目上の相手に対して報告というアクションを行う」という意味であれば、「ご報告する」というフレーズがひとつの謙譲表現として成立します。
類似例でいえば、「お借りする」というフレーズも一見自分に対する尊敬語のように思われますよね。
実は「お借りする」も謙譲語。「ご報告する」と同様、目上の相手に対して謙譲の接頭語「ご」や「お」を付けてアクションの内容を表記する場合は、自らへりくだる謙譲表現に当たるというわけです。
大事なポイントなので、しっかり押さえておきましょう。
「ご報告させていただきます」の表記
「ご報告させていただきます」のほかに、「ご報告させて頂きます」と表記する事例を見たことはありませんか。
実は表記の要領にもルールが存在し、結論からいえば「ご報告させていただきます」の方が正解です。
上記の問題は「いただく」という語句がキーワード。「いただく」には同じ発音で、動詞・補助動詞という2つの意味があります。
動詞としての「いただく」は「目上の人からもらう・頂戴する」という意味で、漢字表記すると「頂く」です。
一方補助動詞の「いただく」については、文部科学省の指針により平仮名表記するよう定められています。
以上を踏まえると「ご報告させて頂きます」における「頂きます」は、補助動詞であるにもかかわらず漢字を当てはめているという点において、NGだということがわかりますね。
「いただく」のように、発音が同じでも動詞・補助動詞に分かれる語句については、表記に注意が必要といえるでしょう。
「ご報告させていただきます」をメールやツイッターで使ってみよう
ビジネスに限らず、連絡の手段としてメールやツイッターを使う機会は多くなっていますよね。
メールやツイッター上で「ご報告させていただきます」を使う場面を考えてみましょう。
文頭に「~についてご報告させていただきます」
メールやツイッターの本文書き出しに、「~についてご報告させていただきます」と記述するパターンがあります。
はじめに報告の要旨を明示することによって、投稿全体の内容・趣旨をある程度説明してしまうのです。
「~についてご報告させていただきます」を先に書き出すのはビジネスライクな要領ですが、読み手にとっては投稿の内容が自分に関係あるかどうか、あるいは興味のある内容か否かを判断しやすくなるともいえます。
後から連絡する場合は「改めてご報告させていただきます」
メールやツイッターに投稿した内容について、用件が一部未了であったり、事後報告が必要であったりする場合には「改めてご報告させていただきます」という一文を添えるのも有効です。
結果や結論が不明な状態で話を強制終了されるのは、気分の良いものではありませんよね。
「改めてご報告させていただきます」と報告の続きが約束されれば、読み手の印象が損なわれることもないはずです。「追ってご報告させていただきます」も、ほぼ同義ですね。
文末・締めに「以上、ご報告させていただきました」
メール本文やツイッター投稿の文末に「以上、ご報告させていただきました」としたためるのも立派なテクニック。
報告の内容が締めくくられるため、例えば報告の内容を再確認したい場合にも、書き出しから「以上、ご報告させていただきました」までの部分を読み返せば事足ります。
報告のほかにも用件や話題がある場合にも有効で、文面の中で報告事項と、それ以外の話題を区別する際に「以上、ご報告させていただきました」の一言を挟むと効果大。
用件や話題を多く抱えている場合は「以上、ご報告させていただきました」を上手に活用するとよいでしょう。
「ご報告させていただきます」の英語表現
「ご報告させていただきます」と似たニュアンスは、英語表現にも存在します。代表的な言い回しを3つ紹介しましょう。
「~についてご報告します」 “I report about / of / on~”
・“I report about Heat Island effect.”
(ヒートアイランド現象について報告します)
・“I report on concert in Nagoya in May.”
(5月に名古屋で行ったコンサートについて報告します)
「~に関する報告」“Report of~”“Report on~”
・“This is a report of journey in Europe.”
(これはヨーロッパ旅行に関する報告です。)
・“We report on audit in 53th settlement period.”
(53期決算に関する監査結果を報告します。)
「詳細は追ってメールでご報告します」“report the details to you later by email”
・“I suspect that he must hide something,.. but it is not obvious yet. I will report the details to you later by email.”
(彼は何かを隠しているに違いない…しかし今のところ明らではありません。詳細は追ってメールで報告します。)
「ご報告させていただきます」の言い換え
最後に「ご報告させていただきます」の類語や言い換え表現を紹介します。
言い方ひとつで敬意の度合いが変化する点にも注目しましょう。
「ご報告します」
「ご報告します」は、少しくだけた敬語表現としてビジネスシーンでも許容されています。先述の通り、謙譲の接頭語「ご」を使った「ご報告する」という言い回しがこのフレーズのポイントです。
「ご報告する」の代わりに「ご報告します」という丁寧の補助動詞で受ける形で、丁寧語の敬意の度合いとしては高くありません。
しかし「ご報告する」という謙譲の動詞が効いており、自らへりくだるニュアンスがしっかり入っています。
以上の理由により、「ご報告します」は目上の相手に対しても使用が許容されているのです。
ただし使用の対象は近い関係の先輩や上司など、身内に限るのが無難でしょう。
「ご報告いたします」
「ご報告いたします」も「ご報告します」と同様に謙譲語+丁寧語のフレーズですが、「ご報告します」よりも丁寧の度合いが強調されます。
「ご報告します」はビジネスでの使用が許容されているというものの、対外的な場面での使用は避けるべき。
一方「ご報告いたします」はシーンによらず、改まった場面でも使ってよい敬語表現です。
「ご報告申し上げます」
「ご報告いたします」よりもさらに丁寧な表現が、「ご報告申し上げます」というフレーズです。
「ご報告申し上げます」は謙譲語+謙譲語による連続敬語で、終始へりくだったトーンといえます。
「ご報告申し上げます」は非常に丁寧な分、やや堅苦しい言い回しでもあるので、どちらかといえば書き言葉に相応しい表現といえるでしょう。