お詫びの言葉、いわゆる詫び言の1つに「度々すみません」というフレーズがあります。謝罪というほどには重苦しくなく、どちらかといえば軽いお詫びのトーンですよね。
「度々すみません」の意味は多くの方がご存知の通り。意味そのものよりも、運用面に目を向けてみましょう。
類似表現との違いを踏まえて細かなニュアンスの違いや、どのような場面で使うべきかといった点に注目しつつ記事をまとめます。
「度々すみません」の意味は?
「度々すみません」とは口語表現であるものの、丁寧な要素も含んだユニークな言葉です。
まずは「度々」と「すみません」の単語ベースで意味をチェックし、次いでフレーズ「度々すみません」についても理解しましょう。
「度々」ってどんな意味?
「度々」とは「何度も」「繰り返し」という意味。同じ事象が複数回繰り返されている様を表します。
「何度も」「繰り返し」というよりは少し堅い表現で、ビジネスなどの公的な場面でも使える語句です。
「すみません」は口語表現
「すみません」とは「済まない」(すまない)の丁寧語。「済まない」とは物事が解決しない、すなわち「済ませられない」という有様を語源とする言葉です。
現代語では「用事を済ませる」という意味の漢字「済」と区別するため、詫び言としての「すまない」は平仮名表記するのが一般的になっています。
「すみません」といえば詫び言の代表格。響きも比較的丁寧ですが、分類上は口語表現に当たります。
日常会話の上で謝意を表す場合は「すみません」で事足りるものの、ビジネスシーンでは失礼に当たる場合もしばしばです。
フレーズ「度々すみません」の意味は?
上記を踏まえると、「度々すみません」とは同じことを繰り返し、迷惑をかけていることについて謝る言葉であることがわかります。
何が問題かといえば二度手間や三度手間が生じており、相手を巻き込んでしまっているという点。
すなわち自分の都合で相手を振り回す事態が、二度三度と繰り返されていることが問題なのです。お詫びが必要なのは当然ですよね。
「度々すみません」の使い方を紹介!
「度々すみません」とは、果たしてどんな時に使うのでしょうか。特に要領の良い人の場合は実体験が乏しく、イメージしづらいかもしれません。
「度々すみません」を使う機会のポイントは、相手ありきの状況であるということ。具体的なシチュエーションを考えてみましょう。
詫びながらも、用件を進めたい時に使う言葉
「度々すみません」は、相手を頼る必要があるからこそ発せられる言葉。自力でどうにも解決できないため、やむを得ず相手の手を煩わせることになるのです。
仮に二度手間・三度手間だとしても、ミスや手落ちによるものでない場合は頼られる側の相手も納得してくれるもの。用件についても会社や顧客のためという大儀があれば、よほどのことがない限り拒絶はされないでしょう。
上記のような背景があるにせよ、やはり相手に時間と労力を割いてもらう事実は変わりません。だからこそ「度々すみません」という一言によって、相手に誠意を伝えることが大事なのです。
「度々すみません」は初対面の人には使用を控える
初対面など、十分な信頼関係を築いていない相手に対しては馴れ馴れしい言葉を使うべきではありません。先述の通りl、「度々すみません」は口語表現なので要注意です。
「度々すみません」というべき事案は、当然相手にとってストレスフルな用件である場合が大半のはず。
以上を踏まえ、初対面の相手に何度も面倒をかける場合には丁重にお願いするべきでしょう。従って口語表現ではなく、敬語表現を使うべきです。
具体的には「何度もお手数をおかけして申し訳ないのですが」「重ね重ね恐縮ですが」など、あくまで低姿勢に徹して誠意を示すことが必要ですね。
「度々すみません」の敬語表現は?
注意すべき点として「度々すみません」は低姿勢のニュアンスであっても、敬語表現ではないということが挙げられます。
やむを得ず目上の相手を繰り返し煩わせる場合は、「度々すみません」と同じニュアンスを敬語で伝えるのがポイント。
果たしてどのように表現すればよいのでしょうか。
目上の人には敬語表現を使おう
アルバイトにおける先輩後輩などの関係であれば、「度々すみません」と発言しても大目に見てもらえることの方が多いかもしれません。
一方ビジネスシーンで、明白な上下関係が存在する状況において「度々すみません」と発言することはNG。場合によってはトラブルや叱責を招くでしょう。
具体的にどのような敬語を使うべきか、次の項で説明します。
丁寧語「度々申し訳ありません」「度々恐れ入ります」が有効
単語「度々」自体はニュートラルな語句であり、場面によらず使ってOKです。ポイントはお詫びの口語「すみません」を、どのように言い換えるかですね。
お詫び・謝罪の敬語といえば「申し訳ありません」もしくは「恐れ入りますが」が妥当でしょう。
いずれも低姿勢の印象が強くへりくだるイメージがありますが、敬語の分類上は謙譲語ではなく丁寧語に当たります。
従って「度々申し訳ありません」「度々恐れ入ります」の2つは、過度にへりくだるわけではなく、程よい丁寧の敬意を表するフレーズといえるのです。
ビジネスメール・電話で使われる「度々すみません」
「度々すみません」は口語表現であるものの、実際にはビジネスシーンで使われることもしばしばです。
例えば馴染みの飲食店や、気のいい職人が「度々すみません」と発言するのは自然に受け入れられますよね。不思議だとは思いませんか。
すなわち口語表現の是非は相手との関係性、環境などに左右されるのです。「度々すみません」も同様であることを踏まえ、ビジネスシーンでの使われ方を見てみましょう。
ビジネスメールにおける「度々すみません」
ビジネスメールといえば、話し言葉よりも丁寧な言葉遣いがセオリーですよね。口語の「度々すみません」をビジネスメールで使ってよいものかと、疑問に思われるかもしれません。
結論からいうと身内同士のやり取りに限り、ビジネスでも問題なく「度々すみません」を使うことができます。
例えば先輩後輩の関係で、ある程度信頼関係があり、馴染みの間柄であれば「度々すみません」で済ませても問題ないでしょう。
近しい間柄では謝り方ひとつとっても、わざわざ「申し訳ありません」と他人行儀な言い回しをする必要はありませんよね。ビジネスメールについても同じ理屈が当てはまるというわけです。
電話における「度々すみません」
ビジネスシーンにおける電話は、話し言葉を使うこともあってメールよりもくだけた言い回しが許容されています。
むしろ注意が必要なのは、通話時の環境でしょう。周囲に誰もいない場合はともかく、オフィスで会社の電話を使う場合、同僚の耳に通話中の話し声が届いています。
いかに親しい相手でも、状況によってはTPOを優先した話し方が必要になるものです。
「度々すみません」の代わりに「度々申し訳ありません」などの敬語表現を使いつつも、明るく親し気なトーンで話すといった気遣いを利かせれば、誰に対してもスマートな印象を与えられるでしょう。
何事もさじ加減が肝心。マナーやTPOを杓子定規に守るだけでなく、上手な立ち居振る舞いの着地点を見つけることが大事なのです。
丁寧にお詫びしたい場合は敬語表現を
連絡手段がメール・電話のいずれにせよ、「度々すみません」では誠意を十分に表せないケースはあるもの。
丁寧にお詫びしたい場合は口語表現を避け、迷わず敬語表現を選択しましょう。
特にビジネス上のトラブルを鎮静化するには、火に油を注ぐような対応は禁物。「度々すみません」のような口語表現で済ませようとすると、印象の悪化を招く恐れがあるため要注意です。
「度々すみません」を使った例文3選!
紹介してきた意味用法やポイントを踏まえ、実際に「度々すみません」を使った文章を考えてみましょう。
例文
「先輩、次の商談にもう一度出張ってもらえませんかね?」
「しょうがないなぁ。でもまぁ、大詰めだしね!」
「度々すみません。私一人じゃカッコつかないんですよ!」
「まぁミスしたわけじゃないし、人を頼るべき状況なのも確かだ。気にするなって!」
例文
「お客様、度々ご迷惑をおかけしてすみません」
「いやいや、そりゃないでしょ。それでお詫びしてるつもりなの?」
「えっ!?」
「うーん、まぁ貴方はまだ若いからね。教えてあげるよ、客相手にお詫びする時は『すみません』じゃなくて、敬語を使って『申し訳ありません』っていうんだ」
「ご指摘、まことにありがとうございます。不勉強で恥ずかしい限りです…」
「うん、ともかくそっちの誠意は伝わった。次から気を付けなよ!」
例文
「課長、重ね重ね申し訳ありません。承認手続きをもう一度お願いできますでしょうか」
「吉田君、かしこまり過ぎだよ!『度々すみません』くらいの言い方でいいんだ。同じ部署なんだから、もっと気楽にいこうよ」
「うお、マジっすか!そりゃありがたいッス」
「今度はくだけすぎだよ!まぁ、これくらいでもいいか(笑)」
「度々すみません」の類似表現を紹介!
「度々すみません」と似たトーンの言い回しは他にもあります。代表的なフレーズを3つ紹介しましょう。
重ね重ねすみません
「度々」を「重ね重ね」と言い換え、「重ね重ねすみません」という表現もあります。
口語表現に変わりはないとはいえ「重ね重ね」は普段使われにくい言葉なので、やや改まった印象を与えるでしょう。
度々恐れ入ります
恐縮の意を表す「恐れ入る」に、丁寧の補助動詞「ます」を組み合わせて「度々恐れ入ります」という表現も有効です。
ストレートにお詫びを表す敬語「申し訳ありません」よりも、あくまで恐縮している気持ちを表すという点でソフトな印象につながるはず。
分類上は同じ敬語表現でも、実際には少しずつトーンが異なるのです。
立て続けにすみません
繰り返しというよりも、続けざまに同じアクションを行うケースがありますよね。連続でアクションすることについて断りを入れるには、「立て続けにすみません」という一言が有効です。
メールや掲示板での投稿における「連投失礼します」とほぼ同じニュアンスで、「スマートでない行動をしていることについては自覚している」というアピールの意味を含んだフレーズともいえます。
「度々すみません」の英語表現をチェック!
繰り返し他人を煩わせる、という行為はどの国でも起こり得ること。「度々すみません」のニュアンスは英語においても共通です。
ニュアンスを伝えることを念頭におき、頭を柔らかくした上で「度々すみません」を英語訳してみましょう。
「度々すみません」の英語
相手を巻き込む・相手を煩わせるというニュアンスを表現するには、“bother you”というイディオムを当てはめるのがよいでしょう。
上記を踏まえて「度々すみません」を表現すると、下記のような言い回しになります。
“Sorry to bother you again.”
(また煩わせてしまい、すみません)
「度々申し訳ありません」の英語
先の項を踏まえ、「度々申し訳ありません」のようにより深いお詫びの気持ちを表現するには次の言い回しが有効です。
“I am terribly sorry to bother you again.”
(もう一度巻き込んでしまい、深くお詫びします)
まとめ
お詫びの行為は意外に難しく、ただ謝ればよいというものではありません。特に「度々すみません」と発言しなければならない場合、そもそもの状況として相手が苛立っている可能性があります。
敬語を使うのも大事なポイントの一つ。それでも万能ではありません。TPOを引き合いに出したように、言葉使いだけでなく声のトーンや表情など、人の印象に関わるポイントは無数にあるのです。
「度々すみません」を上手に使うことは、世渡りのテクニックの1つといえるかもしれませんね。