所信表明など、人前で挨拶する際に使われるフレーズには定番のものがいくつかあります。代表格といえるのが「邁進してまいります」の一言。
挨拶の終わりを「邁進してまいります」で結ぶことにより、自身の意志や展望を明らかにする効果もあります。
「邁進してまいります」を上手に使いこなすためにも、関連する情報を整理してみましょう。
「邁進してまいります」の意味をチェック!
「邁進してまいります」とは、どんな意味なのでしょうか。何となくポジティブで、前進するイメージが浮かびますよね。
まずは「邁進」の意味から確認し、次いでフレーズ「邁進してまいります」についても考察しましょう。
「邁進」の意味は?
「邁進(まいしん)」とは、まっしぐらに突き進むこと。
「邁」「進」ともに「進む」という意味があり、前進していく動作を強調した熟語です。
補助動詞「してまいります」を解説
「してまいります」には取り組みを継続する意志表明のニュアンスが伴います。
「してまいります」という言い回しをする場合は、相手に自分の意志を伝えることが前提。
単に自己完結する場合は「する」だけでよいはずですね。
ポイントは後半部の補助動詞「まいります」で、相手に対する謙譲の敬意を表します。
以上を踏まえると「してまいります」とは、継続しつつ取り組んでいく旨を謙譲表現する語句だということです。
「邁進してまいります」の意味について
「邁進してまいります」とは、真っすぐに進み続ける意志を表明するフレーズ。
現代風にいえば「ブレずに取り組む」気持ちを宣言する言葉ということですね。
「邁進してまいります」の主な使い方を解説
「邁進してまいります」は意思表明・宣言に使われるフレーズだと述べました。自ずと改まった場面が前提となりそうですよね。
「邁進してまいります」の使い方について、具体的なシチュエーションを挙げながら解説します。
メールにおける「邁進してまいります」
メールで「邁進してまいります」と述べる機会は、ある程度限られます。やはり多いのは新任挨拶などにおける意志表明でしょう。
小規模な会社や事業所の場合は全体朝礼などの集会があるものですが、従業員数や事業所が大規模な組織だとメールで挨拶するケースも。
全体に向けての挨拶をする場合、改まった言い回しと謙譲表現がセオリー。必然的に「邁進してまいります」というフレーズが選ばれるのです。
年賀状における「邁進してまいります」
基本的に年賀状は個人に向けて送るもの。上司や親族など目上の相手に対して、新年の挨拶とともに何らかの決意や意志を表明するケースがあります。
上司が相手の場合は仕事への取り組み方、親族が相手の場合は結婚生活や育児に対する決意を表す意味で「邁進してまいります」と述べる例が多いでしょう。
ビジネスにおける「邁進してまいります」
ビジネスシーンにおいて、「邁進してまいります」は幅広く使われるフレーズ。社内での挨拶はもちろん、対外的にも使用機会は少なくありません。
メールにおける使用例のように、社内であれば新任挨拶や昇格・昇進挨拶で使うケースが多いでしょう。
一方で株主や顧客、取引先といった社外の相手に対しても「邁進してまいります」と発言する場合があります。
典型例はプレスリリースのタイミングで、新商品発表や経営統合、新会社立ち上げなどの節目に合わせて関係者に挨拶を行うのがセオリー。
すなわち会社としての節目における公式な挨拶ということで、改めて所信表明を行う意味があるのです。
「邁進してまいります」とセットで使う頻出ワードを紹介!
「邁進してまいります」のフレーズを出すタイミングは、挨拶の終盤が多いはず。「邁進してまいります」から挨拶全体を締めくくる流れを作りたいですよね。
流れを作るのに役立つのが接続詞や副詞。「邁進してまいります」に続けて使われる、定番の語句2つを紹介します。
「ので」
順接の接続詞「ので」は、「邁進してまいります」につなげて使われることの多い語句。「邁進してまいります」だけだと、一旦話が終わってしまいますよね。
一方「邁進してまいりますので」と切り出されると接続詞「ので」に引っ張られ、話が続く流れが生まれます。
「邁進してまいりますので」と切り出し、次いで「ご指導、ご鞭撻のほど」や「皆様のご理解・ご協力を」といったお願いのフレーズにつなげるのは挨拶の定石。
すなわち意志表明の挨拶とともに、相手に対するお願いや希望を一緒に伝えるのです。
自己完結でなく、相手を巻き込んで行う挨拶の意義を考えれば、むしろ自然な流れといえるでしょう。
「引き続き」
「邁進してまいります」に続けて、副詞「引き続き」を配置する用例も多く見られます。
「引き続きよろしくお願いします」や「引き続きご協力をお願いします」など、挨拶全体の締めくくりに有用です。
ちなみに、接続「ので」を組み合わせた「邁進してまいりますので」につなげても問題ありません。
「邁進してまいりますので、引き続きご指導のほどよろしくお願いします」といった具合につなげれば、文章としても綺麗な流れが作れるでしょう。
「邁進してまいります」を使った例文を紹介!
基礎知識を踏まえ、「邁進してまいります」を使った例文を3つ紹介します。
例文
本日、支店長に就任した森田です。本社では営業専門だったので、組織を統括する役回りは初めてです。広島支店を牽引できるよう邁進してまいりますので、皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。
例文
昨年の秋、男の子を授かりました。自分が父親になることなど想像もしませんでしたが、ようやく実感が出てきたところです。妻とともに、息子を立派に育てられるよう邁進してまいります。
例文
今年で勤続40年を迎えます。定年のタイミングでもあり、キャリアをまとめる時期に差し掛かりました。胸を張って退職の日を迎えられるよう、いっそう邁進してまいります。
「邁進してまいります」の類語・言い換え表現は?
挨拶の決まり文句といえば、ある程度定番化していますよね。
お察しの通り、「邁進してまいります」と同じニュアンスで使える類語や言い換え表現もあります。
精進いたします
「精進」とは元々仏教用語で、雑念を払い仏道修行に専念することを指します。精進料理の由来としても有名ですね。
現代における「精進」には仏教用語から転じて、「精神を集中して励むこと」という意味も含まれます。
「精進いたします」は「邁進いたします」と同様、一つのことに集中して突き進むというニュアンスで使われるのです。
一方で語源の印象も依然強く、自らの未熟ぶりを恥じる意味合いで使われることもしばしば。
全体に向けての所信表明で使うには、「邁進いたします」の方がストレートに伝わりやすいでしょう。
励んでまいります
「精進いたします」のニュアンスを、より親しみやすい言い回しにしたフレーズが「励んでまいります」です。
「励む」とは熱心に取り組むという意味。謙譲の補助動詞「まいります」を付加することで、相手に対してへりくだる気持ちを表します。
努めてまいります
「努めてまいります」は「励んでまいります」とほぼ同義のフレーズ。敬意の度合いも同等です。
「努める(努めて)」とは「努力する」という意味。自ら望んで取り組むということであり、「励む」と同義であることがわかります。
比較的ポピュラーな言い回しなので、紹介した3つの中でも使いやすいフレーズといえるでしょう。
「邁進してまいります」を英語で表現してみよう
「邁進してまいります」は日本語然とした堅苦しい言い回しですが、意味そのものはシンプルですよね。
「邁進してまいります」のエッセンスに注目し、簡単な英語表現に変換してみましょう。
“Will make further efforts to~”
ほぼ直訳のイメージで通じる言い回しが、“Will make further effort to~”というイディオム。要諦は「~についていっそうの努力を図る」というものです。
努力する意味の“make effort to~”に、より遠くを表す“further”を挟み込んで強調した言い回しですね。
“Will strive to~”
“strive to~”は「~を目指す」という未来志向のイディオムです。人が主体となって“Someone will strive to~”と表現すれば、主体の強い意志を表すフレーズになります。
“Will make further efforts to~”と比べて単語数が少なく、イディオムの構成としてもシンプルですね。
まとめ
社会人となると、学生時代のように「頑張ります」の一言では済ませられなくなるもの。聞く者の心を引き付け、好印象を与える挨拶が要求されるでしょう。
挨拶の際に「邁進いたします」のフレーズが役立つのは上記の理由だけでなく、関係者にお願いや方向付けを図るという目的があるからです。
挨拶を単なる社交辞令と捉えるか、それとも意志表明と捉えるかによって仕事の取り組み方は大きく変わるもの。「邁進いたします」は1つのキーワードといえるでしょう。