「承っております」はビジネスの必須フレーズです。ビジネス以外にも、飲食店やホテルといった接客サービスで聞く機会は多いでしょう。
「承っております」の意味だけでなく、敬語分類や応用フレーズも理解しておけば、使い方が一段と広がります。
言い換え表現・英語表現も紹介しますので、是非チェックしてみてください。
単語「承る」とは?
「承っております」は単語ではなく、謙譲の動詞「承る」と丁寧の補助動詞「しております」が組み合わさったひと続きのフレーズです。
まずは動詞である単語「承る」の意味やルーツを把握しておきましょう。
「承る」の意味「承る」とは「謹んで引き受ける・用命を授かる」という意味合いです
類似表現の「承諾する・了承する」などと比べて上下関係がはっきりしており、目上の相手から引き受けるニュアンスが含まれます。
「承る」は、相手を立てる場面の多いビジネスシーンでは頻出ワードの一つです。
目上の相手が目下の相手に対し、何かを与える行為「賜わる」との違いを問われるシーンもしばしばあるため、正しく理解しておきましょう。
「承る」の読み方
「承る」は訓読みで「うけたまわる」と読みます。
「承」を音読みすると「しょう」「じょう」ですが、一部方言を除き「しょうる」「じょうる」という動詞は存在しません。
「承」に続く送り仮名が「る」の場合は、まず間違いなく「うけたまわる」の読みでOKです。
読み方に慣れないうちは、響きの似た単語「うける(受ける)」「たまわる(賜わる)」と読み違えないように注意しましょう。
古語としての「承る」
動詞「承る」は、古語「受け賜わる」に由来します。
貴族社会のように階級や上下関係の厳しい時代に端を発した語句で、時代の流れとともに「受け」のニュアンスは謹んで受諾・承諾する意味を表す「承る」に変化しました。
一方、上意下達や上の立場から授ける意味を表す「賜わる」は、そのまま尊敬語「賜わる」として使われるようになっていったのです。
「承っております」は敬語表現!
先述の通り、「承っております」は2種類の敬語分類を組み合わせた敬語表現です。
敬語が複数回使われる場合に懸念されるのが、二重敬語に当たるのではないかという事案でしょう。
二重敬語に該当するかどうかを見分けるポイントは、敬語分類です。
敬語分類をどのようにチェックすればよいか、詳しく解説します。
「承っております」は二重敬語?
結論から述べると、「承っております」は二重敬語ではありません。
敬語分類に注目すると、謙譲の動詞「承る」と、丁寧の助動詞「しております」の2種類が組み合わさっていることがわかります。
二重敬語とは、同じ敬語分類が重複して使われる誤用法をいいます。
「承る」をベースとした二重敬語の例としては、謙譲の動詞+謙譲の補助動詞の「承らせていただきます」が代表的です。
「承っております」は連続敬語
2つの敬語分類を組み合わせたフレーズ「承っております」は、二重敬語てはなく連続敬語に該当します。
補足すると、謙譲の動詞でへりくだり、丁寧の補助動詞を組み合わせるのは特に強い敬意を表す手法です。
丁寧の補助動詞「しております」を「しています」に代えても連続敬語として成立します。
ビジネスシーンで「しております」の方が好まれる理由は、丁寧語の中でも敬意の度合いが強い表現だからです。併せて覚えておきましょう。
「承っております」の主な使い方
「承っております」の意味や敬語分類を踏まえ、具体的な使い方を把握しましょう。
「承っております」のポイントは、目上の相手との対話を前提とした敬語表現であることです。主な用法を3つ紹介します。
「用件・用命・注文」の意味で使う
客人からオーダーや注文に関する確認・問い合わせがなされた際、用件・用命・注文を受付済みであることを表す意味で「承っております」と回答する使い方があります。
「承知しております」だと同程度の敬意を表しますが堅苦しい感じがしますし、「承り済みです」でも回りくどい印象。
やはり「承っております」と返すのがスマートな答え方です。
「予約」の意味で使う
外部の客人に対する返事の仕方でも、ホテル・レストランなどといった接客・もてなしを伴うサービスの場合、予約が受け付け済みであることを伝える意味で「承っております」と説明する場合があります。
主な用例としては、予約やアポイントメントの時間に客人が来場し、約束の有無や約束の時間の照会を行う場面で使われるケースが多いでしょう。
「指示・命令」の意味で使う
職場の上層部と下層部のように、組織内の上下関係において「承っております」を使う場合もあります。
具体的には経営指揮を執る役員層と、実行部隊である下部組織の部長・課長クラスのやり取りが主でしょう。
ちなみに部署内での上司と部下の関係だと距離が近いため、「承っております」と発言するとやや堅苦しい印象になります。
むやみに丁寧な言い回しをするのもNGなので、加減には注意しましょう。
「承っております」と組み合わせたフレーズを紹介!
「承っております」を実際に使う場面を想定し、会話文の中で組み合わせて使うフレーズを考えてみましょう。代表的な5つのパターンを紹介します。
「承っておりますでしょうか」
客人に応対する場面で、客人に対して予約やアポイントメントの有無を問いかける際に「承っておりますでしょうか」という言い方をします。
具体例としては「ご予約は承っておりますでしょうか」が代表的です。
「お約束はなさっていますか」とほぼ同義ですが、相手にへりくだってより丁寧な姿勢を表すため、謙譲表現を使うのです。
「承っておりますので」
「承っておりますので」のフレーズは、上記の例とシチュエーションで使われます。
予約やアポイントメントがあることを確認できたら、客人を内部に招き入れ、もてなしやサービスを開始するのが一般的です。
「承っておりますので」に続けて「ご案内いたします」「こちらにどうぞ」のようにつなげると、予約やアポイントメントがスムーズに履行されたことが伝わるので好印象。
「ご予約承っております」
「ご予約承っております」も、確かに予約やアポイントメントを受けている旨を客人に伝えるフレーズです。
補足すると、「ご予約承っております」は単なる挨拶のフレーズではありません。
客人に対して受け入れ態勢が整っている、すなわち積極的に迎え入れることを伝える意味があります。
客人に好印象を与える上で、意外に大事な受け答えといえるでしょう。
「ご用命を承っております」
「ご用命を承っております」は一般的な接客応対と区別して、顧客の好みや嗜好に応じたオーダーに関するやり取りで使われることの多いフレーズです。
例えばパーティーや催事をイメージしてみましょう。
主催者は会場運営や食事の手配などをめぐって、会場側に予め細かいオーダーを出すのがセオリーですね。
一方会場側は開催当日に、主催者と流れの最終確認を行います。
この際、会場側が当日のオーダーを受注済みであるという意味で「ご用命を承っております」と表現するのです。
「~様より承っております」
「~様より承っております」とは、関わりの深い第三者からの紹介・注文を通じて、予約の履行や接客・サービスのやり取りが行われる際に使うフレーズです。
簡単な例としては会員制の店が挙げられるでしょう。
既に店を利用している会員が知人を紹介し、当該の人物が初めて来店した、という状況にぴったりな言い回しです。
「予め事情を聞いているので、受け入れ態勢が整っている」という姿勢を表す意味も含まれます。
「承っております」の類語・言い換え表現を紹介!
「承っております」と同じニュアンスを、少し違うトーンで表現する言い回しもあります。
代表例を3つ紹介します。
「承知しております」
上司からの指示や命令の内容を理解しており、確認の念押しがあった場合には「承知しております」という返し方が適切です。
「わかっています」「知っています」だとやや乱暴な響きがあり、投げやりな印象を与えてしまいます。
上司との距離感で、敬意を込めて切り返すには「承知しております」のフレーズが最適です。
「仰せつかっています」
「仰せつかっています」とは、予め目上の人物から指示・命令・注文などを受けている旨を説明する言い回しです。
注意点として「仰せつかっています」と発言する場合は、目の前にいる相手とは別の人物から指示が出されていることになります。
ニュアンスとしては「~様より承っております」のフレーズが一番近いでしょう。
「存じております」
「存じております」は、自分が当事者である場合に使うフレーズです。相手に対し、事情を知っている旨を丁寧に伝える意味があります。
「承知しております」に近いニュアンスですが、あくまで「知っている」ことを表す言い回し。
予約やアポイントメントに関するやり取りでは使わない方がよいでしょう。
「承っております」の英語表現
最後に、「承っております」の英語表現を確認しておきましょう。
・“be aware of~”
(~について承知している・把握している)
・“reserved”
(予約済み)
・“understood”
(承知しています)
まとめ
組み合わせフレーズで解説したように、「承っております」を活用することで様々な状況に対応できます。わずかに言い回しを変えるだけで、ニュアンスだけでなく敬意の度合いも変化するのです。
ビジネスで「承っております」を上手に使える人は、対人関係も良好に保てるでしょう。ぜひ活用してみてください。