気分が晴れる・すっきりする様を「胸がすく」といいますよね。「スカッとする」といった平易な言葉で言い換えられるため、若年層はあまり使わなくなっているのではないでしょうか。
しかしビジネスシーンのように、一定の品位が求められる場面では平易な表現を避ける必要があります。
業務上のやり取りで「胸がすく」と発言することはなくとも、職場の会話の中で「胸がすく」が使われる場面は十分考えられるでしょう。
当記事では「胸がすく」の意味・使い方・類語・例文を紹介し、逐次解説します。ぜひ最後までお読みください。
「胸がすく」の意味や基礎知識を紹介!
「胸がすく」とはどのような意味か、語源も含めて確認しておきましょう。漢字表記すべきか否かも解説します。
「胸がすく」の意味は?
「胸がすく」とは、胸のつかえがとれるという意味。簡単にいえば「すっきりする・スカッとする」といったニュアンスです。
ストレスや悩みといった心労が重なると、胸が圧迫されて塞がったような感覚になりますよね。
反対に悩みの種が解消することによって、心労から解放されることを「胸がすく」と表現するのです。
「胸がすく」の語源とは?
「胸がすく」の語源は「胸が空く」です。胸が空になる、すなわち胸の詰まりやつかえがなくなるという意味で、口語の「胸がすっきりする」も的確な表現といえます。
「胸が空く」の表記は「腹が空く」と同じ理屈です。中身が空になる、という意味で「空く」と表現します。
「胸がすく」は漢字表記を避けるべき?
語源として紹介した通り、「胸がすく」を漢字表記すると「胸が空く」です。「胸がすく」を漢字表記すべきか否かを考えるには、「腹がすく」を引き合いに出すとよいでしょう。
ご存じの通り、「腹がすく」も漢字表記すると「腹が空く」ですよね。一方、文字媒体の中で使われる表記は「腹がすく」の方です。
上記を踏まえ、「胸がすく」も同様に漢字表記を避けるのが一般的といえます。
「胸がすく」の使い方は?
「胸がすく」を使うのはどのような場面や機会なのか、考えてみましょう。誤用例も併せて紹介します。
どんな時に使う?
「胸がすく」を使うのは、主に不安や心配事などが解消するタイミングです。「胸がすく思い」というフレーズがあるように、不安・悩みなどのネガティブな精神状態が晴れ、解消する様を表します。
仕事上の問題や悩み
ビジネスにおいて「胸がすく」場面といえば、仕事上の問題や悩みの種が解決した時でしょう。
営業担当であれば月間業績のノルマを達成したり、経理担当であれば決算発表や株主総会を無事に終えた時には晴れやかな気分になるものです。
胸のモヤモヤが晴れ、すっきりしたタイミングこそ「胸がすく」の表現に相応しいわけですね。
誤った使い方の例
「胸がすく」とは本来、ポジティブな意味ですよね。ネガティブな意味として誤認・誤用する例がありますので、予備知識として覚えておきましょう。
喪失感・空虚な思い
「胸がすく」を「空虚な気持ち」として捉える例があります。「腹がすく」のように、「すく」にはネガティブな意味合いがあるとみなしたものです。
空虚な気持ちを表す言葉は、慣用句で「胸に穴が空く」といいます。ちょうど失恋や失望を味わった時のように、胸にぽっかり穴が空いたような喪失感をイメージするとわかりやすいでしょう。
ストレスを抱える
「腹がすく」は、食欲が満たされないネガティブな意味。連想して、「胸がすく」についても「気分が晴れない・ストレスを抱える」のように解釈してしまう可能性も否定できません。
先述の通り、人の精神面を表現する場合の「胸」は悩みやストレスを抱え込む器という意味です。胸の内は軽快であるほど良いということになります。
以上より、「胸がすく」はストレスから解放される、ポジティブな意味の言葉といえるのです。
「胸がすく」の類義語を紹介!
「胸がすく」と似た意味の言葉を4つ紹介します。トーンに合わせて使い分けるのに役立つでしょう。
溜飲を下げる
「溜飲」とは胃酸のこと。不平・不満・恨みが溜まって精神的な負担が重なると、胃酸がこみあげてくることにちなんだものです。
不平・不満・恨みを解消することで、胃酸の動きも収まります。悩みの原因を取り除き、こみあげていた胃酸を沈静化する様を「溜飲を下げる」と呼ぶわけですね。
人心地つく
「人心地つく」とは、人間らしい落ち着きを取り戻すこと。精神的に追い詰められたり駆り立てられたりして、安心できない状況から解放された様を表します。
「胸がすく」と比べると、安心感を得るニュアンスが強い表現です。
鬱憤が晴れる
「鬱憤が晴れる」とは、溜まっていたストレスから解放されること。一過性の突発的なものではなく、累積したストレスが前提となります。
「溜飲を下げる」と比べてよく使われるフレーズで、
「胸がすく」の意味に一番近いことからも是非覚えておきましょう。
安堵する
「安堵する」は、簡単にいえば「安心する」の意味です。元々は封建社会の主従関係において、主君が配下に対し領地・官職の安泰を図ったことに由来します。
すなわち単なる安心ではなく、「後ろ盾や根拠に基づいて安心・安全を得る」という意味ですね。
「胸がすく」を使った例文
紹介してきた知識を踏まえ、実際に「胸がすく」を使った文章を考えてみましょう。
例文
応援している野球チームが連敗を4で食い止めた。決勝打は9回裏二死から4番西田が放ったサヨナラホームランだ。長らく苦手としていた投手佐々木を相手に決めた一打ということもあり、ファンとしては正に胸がすく思いである。
例文
2週間に渡る期末試験が終わり、ようやく解放された。試験期間の終わりは誰にとっても胸がすく瞬間だ。今日から早速部活に励もう。
「胸がすく」の英語表現を紹介!
最後に「胸がすく」の英語表現を2つ紹介します。簡単なフレーズなので、セットで覚えましょう。
“feel relieved”
安心を意味する“relief”が受身形になったイディオムです。直訳すると「安心感を覚える」で、一言でいえば「安心する」とまとめられます。
例文
“I already sold my stock before the stock market crash, so I feel relieved.”
(株暴落の事前に手持ちの株式を売却していたので、一安心だ)
“feel at ease”
“ease”はカタカナ語としてもポピュラーな、“easy”(イージー)の名詞形。“ease”は「落ち着き・優しさ・易しさ」という意味を表します。
すなわちカタカナ語の「イージー」は、気を張らなくともよい・落ち着いて取り組めるというニュアンスに由来するのです。
上記がわかれば、“feel at ease”でも理屈は同じ。直訳すると「落ち着きを感じる」、もう少し表現を整えれば「安心する」「安堵を覚える」という意味を表します。
例文
“I feel at ease, because I successfully got through a pinch.”
(ピンチを切り抜けられたので、胸がすく思いだ)
まとめ
「胸がすく」のフレーズそのままでなくとも、「胸のすく思い」「胸のすくような」といった形で使われることはしばしばです。基本の形として「胸がすく」を理解しておけば、変形のパターンが現れても問題なく対応できるでしょう。
類語や言い換え表現を含め、「胸がすく」を適切に使えるようにしておくことをおすすめします。