口語表現の1つとして、「申し訳ないです」のフレーズは定着しつつありますよね。本来の日本語を基準とすれば、少なからずラフな言い回しです。
一方で、「申し訳ありません」といった正式な敬語表現より親しみやすい面も。時と場合によってはかえってストレートに誠意を表せることも珍しくありません。
当記事では現代語としての「申し訳ありません」にフォーカスし、意味・使い方・位置づけなどを詳しく紹介します。英語表現も網羅しますので是非ご一読ください。
「申し訳ないです」の意味は?
「申し訳ないです」がお詫びの言葉であることは、お察しの通りです。意味だけでなく、トーンや位置づけについても考えてみましょう。
「申し訳ない」は弁解のしようがないこと
「申し訳ない」とは、申し訳が立たない・弁解のしようがない様を表します。
「申し訳ありません」を崩した形というよりも、むしろ申し訳が立たないことを詫びるニュアンスと考える方がわかりやすいでしょう。トーンとしては「面目ない」に近いと考えられます。
「申し訳ないです」はブロークンな丁寧表現
「申し訳ないです」は「申し訳ない」に丁寧の助詞「です」が付いた、口語表現上の敬語です。文語表現としては正しくありません。
ブロークンな形ではあるものの、敬意を表する姿勢を打ち出すことになるため、堅苦しくない間柄であれば許容されるケースが多く見られます。
「申し訳ないです」は目上の相手に使える?
「申し訳ないです」の意味・位置づけを踏まえ、目上の相手に使えるかどうかを考えましょう。
ブロークンな形とはいえ、実際にはビジネスシーンでもしばしば使われています。運用上のトーン・位置づけにもご注目ください。
本来の日本語表現としては正しくない
先述の通り、「申し訳ないです」は日本語表現としては正しくありません。というのも「申し訳ない」は問題ありませんが、「ないです」の部分がNGだからです。
「ないです」はいわゆる若者言葉で、丁寧語「ありません」の代わりに使われています。
「あります」の代わりに「あるです」とは言わないことに鑑みれば、本来「ないです」の表現もおかしいはず。
実際のところは上記のようにロジカルな考察は行われないまま、使い勝手の良さから浸透していったと考えられます。
実際はグレーな位置づけ
「申し訳ないです」は日本語として正しくない旨を先述しましたが、実際のところはある程度許容されています。
若者が丁寧の敬語を崩して使う例は、「申し訳ないです」以外にも沢山ありますよね。「すみません」を「すいません」、あるいは「わかりません」を「わからないです」と発言する場面は珍しくないはずです。
いずれも本来の日本語としては正しくないものの、都度注意するには及ばないと判断されがち。まがりなりにも敬意を表していることもあり、悪意はないとみなされているのです。
上司・顧客に対してはNG
ある程度許容されているとはいえ、節度が求められる場面で「申し訳ないです」と発言してはいけません。
例えば上司・顧客といった目上の相手に謝る場面で、「申し訳ないです」と発言するのはNG。悪意の有無を問わず、誠意がないとみなされてしまいます。
誠意を表すには、正しい敬語表現である「申し訳ありません」で対応するのがベストです。
距離感の近い相手ならセーフ
目上の相手でも、仲の良い先輩であれば「申し訳ないです」と発言しても問題ないケースがあります。
堅苦しい言葉遣いを好まない、ざっくばらんな気質の人物であればわざわざ咎めることはないものです。
反対に関係が成熟しておらず、距離のある先輩に対して「申し訳ないです」と発言するのはおすすめできません。馴れ馴れしい・失礼とみなされ、反感を買ってしまうおそれがあります。
「申し訳ないです」を使う場合の注意点
「申し訳ないです」を使う際には、時と場合を弁える必要があります。基本的には目上の相手に対する使い方の延長線上であり、決して難しくありません。
公式な場面ではマナーとしてNG
催し物・イベントなどの公式な場面で「申し訳ないです」と発言するのは、マナーとしてNGです。というのも公人として振る舞うべき場面では、俗な言葉遣いをしてはいけないから。
お詫び・謝罪が必要な状況に立ち会う場合は、誠意を尽くして「申し訳ありません」と発言するべきです。
謝っていないとみなされる可能性も
「申し訳ないです」はブロークンな丁寧表現。崩した敬語を使う時点で誠意が不十分と見ることもでき、心から詫びていないとみなされる可能性があります。
例えば取り返しのつかない失敗・失態を犯してしまった場合には、「申し訳ないです」を使うのは不適切。誠意を表すには「申し訳ありません」と発言するべきです。
一定の責任を認めることになる
マナーとは別の問題として、「申し訳ないです」と発言した時点で自らの落ち度や責任を認めることになります。
すなわち誠意の有無とは関係なく、責任の所在を問われる場面で「申し訳ないです」と発言する行為自体に責任が伴うということです。
謝る必要のない場面では、「申し訳ないです」と発言するべきではありません。普段何気なしに使っている場合、反射的に口をついて出てしまう可能性があるため要注意です。
「申し訳ないですが」はクッション言葉として使える?
「申し訳ないです」を組み合わせたフレーズの1つに、「申し訳ないですが」という前置きの一言があります。
「申し訳ないですが」はいわゆるクッション言葉として適切かどうか、確認しておきましょう。
ある程度許容されている
クッション言葉とは希望・要望・主張を相手に伝える際、前置きして当たりを柔らかくする一言です。
「申し訳ないですが」と一言添えることで、相手に対して負い目や引け目を感じている姿勢を表す形になりますよね。
日本語としての正当性はさておき、「申し訳ないですが」はクッション言葉としての機能を果たしていると考えられます。
言葉遣いよりも恐縮している様・姿勢が評価されれば、有効なクッション言葉とみなされる場面もしばしばです。
マナーが重視される場面でなければセーフ
実際のところ、「申し訳ないですが」が使われる機会は少なくありません。マナーが必要なビジネスシーンにおいても同様です。
ビジネスシーンでは相手に依頼したり手伝ってもらったりといった場面が多いため、「申し訳ないですが」はむしろ便利なクッション言葉として使われていると考えられます。
仕事の円滑な流れ・効率性に対し、わざわざ「申し訳ないですが」の一言を咎める価値は高くないと判断されていることが窺えますね。
「申し訳ないです」と組み合わせて使われるフレーズを紹介!
「申し訳ないですが」以外にも、「申し訳ないです」と組み合わせて使うフレーズはいくつかあります。主なものは次の3つです。
申し訳ないですがよろしくお願いします
先述の「申し訳ないですが」とセットで使われることが多いのが、「申し訳ないですがよろしくお願いします」のフレーズです。
相手の手を煩わせることに負い目を感じつつ、それでもお願いしなければならない状況で使うのが主な用例。
書き言葉としては不自然なため避けられる一方、、話し言葉としてはしばしば使われます。
申し訳ないですね
「申し訳ないですね」は、上下関係があっても距離の近い間柄で使われるフレーズです。
文字通りのお詫び・謝罪ではなく「すみませんね」「迷惑かけちゃいますね」くらいの、軽いトーンで謝る態度といえます。
申し訳ない気持ちでいっぱいです
「申し訳ない気持ちでいっぱいです」は日本語表現として問題のないフレーズです。
丁寧の助詞「です」が形容詞「いっぱい」の後に配置されており、「いっぱいだ」を敬語表現する形になっています。
トーンとしては少し堅苦しくなるものの、「申し訳ないです」で伝えようとするニュアンスとほぼ同じ。書き言葉としても使えるため、覚えておいて損はありません。
「申し訳ないです」の英語表現を紹介!
最後に、「申し訳ないです」の英語表現を2つ紹介します。
・“I am terribly sorry for not sending the message to you on time.”
(定刻までにメールを送れなかったこと、大変申し訳ありません)
・“I’m sorry. I forgot the attachment.”
(申し訳ありません、ファイルの添付を忘れていました)
まとめ
「申し訳ないです」は敬語表現としては適切ではありません。一方、実用的なフレーズであることも確かで、だからこそ浸透したといえます。
特に人の力を借りる場面の多いビジネスシーンでは、円滑に使える言葉は重宝するもの。原理・原則を理解した上で、時と場合に応じて柔軟に対応することが大事といえるでしょう。