接客・御用聞きの際には、用命を促す意味で「お申し付けください」と声がけするのが一般的ですよね。「お申し付けください」は、目上の相手が「申し付ける」ように促す言い回しです。
「申し付ける」とは、指示・命令を言い渡すこと。したがって上下関係が存在し、上の立場の人物が目下の相手に対して指示を言い渡す状況が前提です。
本記事では「申し付ける」の意味のほか、敬語表現や立場を踏まえた使い方についても解説します。ぜひ最後までお読みください。
※ IDを指定してください。「申し付ける」の意味は?
最初に「申し付ける」の意味を解説します。ニュアンスのほか、「申し出る」との違いも確認しましょう。
指示・命令
「申し付ける」は、「言い付ける」の謙譲表現です。
目上の人物が下位の相手に言い付けることを表す意味で、へりくだったニュアンスを含みます。
同様に冒頭で述べた「お申し付けください」のフレーズも、用命を聞く・命令を受けるといった姿勢をへりくだって伝えるための表現です。
「申し付ける」と「申し出る」の違い
「申し付ける」と「申し出る」は響きこそ似ているものの、意味は大きく異なります。
「申し出る」とは願い出ることであり、志願・名乗りを上げるといった積極的なニュアンスを含むのが特徴。
一方、「申し付ける」は「言い付ける」の謙譲表現であり、相手の意向に従う受け身の姿勢を表します。
「じゅろう申し付ける」とは?
水戸黄門・遠山の金さんといった時代劇では「じゅろう申し付ける」の一言がしばしば登場します。
「じゅろう申し付ける」とは「入牢申し付ける」の平易な表記であり、意味は「刑罰として牢に入れる・投獄することを命じる」といった内容です。
作中の映像や前後関係に注目すると、罪人に対して行政の立場から判決を言い渡していることが読み取れるでしょう。
「申し付ける」の使い方を解説!
先述したように、「申し付ける」は目上の相手からの指示を受ける・命令に従うといった場合に使います。
例としては、接客時における声がけの一言として使うのが代表的。「ご不明な点があればお気軽にお申し付けください」は、「ご用命がございましたら承ります」の代わりとして使えます。
「申し付ける」の敬語表現もチェック
「申し付ける」は謙譲語であり、それ自体が敬語表現です。誤用例も含めて敬語表現に注目してみましょう。
「申し付けられる」は敬語表現としてOK?
「申し付けられる」は文法の上では許容されるものの、表現として回りくどいためあまり定着していません。
「申し付けられる」は、謙譲語「申し付ける」+受け身の補助動詞「られる」を組み合わせた言い回し。
同じ意味を表す表現として「申し付かる」があるため、こちらを使いましょう。
なお、尊敬の補助動詞「られる」の用法で「申し付けられる」と表現することは謙譲語の趣旨と矛盾するため、特に取り上げる必要はないものと考えられます。
「お申し付ける」はNG!
「お申し付ける」は、文法の上でもNGの事例です。接頭語「お」は尊敬語であるため、上述と同様に謙譲語「申し付ける」のベクトルと矛盾します。
指示・命令のニュアンスで尊敬表現したい場合は「申し付ける」の表現にこだわらずに、「指示なさる」「お命じになる」といった別の言葉で表現しましょう。
「申し付ける」の類語・言い換え表現は?
「申し付ける」の類語・言い換え表現は下記の4つです。各表現について解説します。
申し渡す
「申し渡す」とは決定事項を下位の者に指示・命令することです。先述の時代劇の例では、奉行のような行政機関が判決を言い渡すことが該当します。
言い渡す
「言い渡す」も概ね「申し渡す」と同じで、宣告・告知などとほぼ同義です。
表記の上では「言い渡す」の方が軽い印象があるものの、運用上は実質的に「申し渡す」との違いがほとんどありません。
申し伝える
「申し伝える」は「言い伝える」の謙譲語です。言葉の響きは「申し付ける」とよく似ているものの、内容は大きく異なります。
「申し付ける」は指示・命令が前提となる一方、「申し伝える」の本質はあくまで伝言です。ビジネスシーンでも、電話応対ほかの伝言の決まり文句として定着しています。
指示する
「指示する」は「申し付ける」の類語です。「申し付ける」とは異なり敬語ではないため、「申し付ける」より汎用的に使えるのが特徴。
敬意の対象やへりくだりの必要性を意識する必要がないため、「申し付ける」を使いづらい場合は「指示する」「指示される」で対応するのもおすすめです。
「申し付ける」の例文2選!
以下では「申し付ける」を使った例文を2つ紹介します。
例文
部下から提出された図案に誤りが見つかったため、修正を申し付けることにした。
例文
顧客からクレームがあり、商品を差し替えることになった。また今回の一件について、私の過失による所が大きいためペナルティを申し付けるそうだ。
「申し付ける」の英語表現
「申し付ける」の主な英語表現は下記の2つです。
・“order”(指示する・言い渡す・申し付ける)
・“instruct”(指導する・申し付ける)
まとめ
「申し付ける」は使い方に注意が必要な言葉です。指示・命令を前提とするだけでなく、上下関係・敬語の要素も含まれます。
また部下に対する正当な指示・命令であっても、言い方次第ではパワハラ行為とみなされるリスクも否定できません。
「申し付ける」を使うべきではない場合は、別の平易な表現で対応しましょう。