相手を労わる言葉といえば、どんなものが思い浮かびますか。ドレスコードに応じていくつかの候補がありますよね。
相手を労わる言葉の中でも、決まり文句の1つ「お疲れの出ませんように」を取り上げます。
「お疲れの出ませんように」は、使い方や使いどころに注意が必要なフレーズ。
不相応な場面で、むやみに使うべきではありません。状況に合わせて適切に運用できるよう、記事をまとめていきます。
「お疲れの出ませんように」って言葉はどこで使う?
書き出しで述べた通り、「お疲れの出ませんように」を使うべき場面はある程度限られます。
果たしてどのようなシーンで使うべきなのでしょうか。
ねぎらいの言葉「お疲れの出ませんように」の意味
「お疲れの出ませんように」とは相手を慮り、ねぎらうフレーズ。
大変な仕事に携わっており疲労が避けがたいことを察した上で、相手にかけるべき言葉といえるでしょう。
目上・年上の方に「頑張ってください」と声掛けしたいときの敬語表現
他者を励まし、元気づける定番のフレーズは「頑張ってください」ですよね。ところが目上・年上の相手に対しては「頑張ってください」と言いづらい場合も。
声をかけられた側も、人によっては「励まされるということは、私の能力や実力が不足しているということか」などと不快に受け止める場合があるかもしれません。
目上・年上の方に対し、「頑張ってください」と同様の意味を伝えるには「お疲れの出ませんように」という言い方がよいでしょう。
日常生活や職場であまり使う機会がないのが現状
目上・年上の相手に対して「お疲れの出ませんように」と発言する機会は、実際のところ多くないでしょう。
そもそも目上・年上の相手に対して心配をするということ自体、出過ぎた行為だとみなされる場合もしばしばです。
「頑張ってください」にしろ「お疲れの出ませんように」にしろ、どちらもNGとみなされる職場もあるでしょう。
不要なトラブルを避けるために、ビジネスシーンでは目上・年上の相手に対して労わったり、ねぎらったりすること自体を控えるのも立ち回り方のひとつです。
一般的には「お疲れの出ませんように」は葬儀で使われるお悔やみの言葉
「お疲れの出ませんように」は、会社などのビジネスシーンよりも葬儀において使われる言葉。葬儀の準備、手配は大変なものです。
また家族を亡くしたことによる心労は察するに余りあるでしょう。「お疲れの出ませんように」には、故人に対するお悔やみと遺族に向けての労わりの意味が含まれるのです。
葬儀での「お疲れの出ませんように」の使い方と注意点
「お疲れの出ませんように」は葬儀で使われるお悔やみの言葉だと述べました。
もう少し踏み込んで、具体的にどのような使い方がなされているのかを確認していきましょう。
参列者が遺族に対して「お疲れの出ませんように」と労わる言葉
葬儀の場では、参列者が遺族に対して「お疲れの出ませんように」と声をかけるのが一般的。
業務や労働に伴う疲労ではなく、葬儀を執り行うための手配に伴う疲れ・心労などを慮ってかける言葉として、「お疲れの出ませんように」が相応しいというわけですね。
帰る際のご挨拶時に使用するとよい
「お疲れの出ませんように」は、遺族に対する労わりの言葉。使うタイミングは葬儀への参列を終え、帰る際に一声かける時がよいでしょう。
遺族にお別れの挨拶を済ませるとともに、労わりの言葉をかけるのがスマートですね。
「お疲れの出ませんように」の後には相手の体を労わる言葉を添える
葬儀で遺族に「お疲れの出ませんように」と声をかけたら、次いで相手の体を労わる言葉を添えるべき。
「今日は早めにお休みください」などが妥当でしょう。気遣いの内容が具体的になるので単なる社交辞令の発言ではないことがわかり、結果として好印象につながります。
遺族としては気遣いの言葉をかけてもらうことによって心身のストレスが和らぎ、実際に心身の疲れが癒される場合もあるのです。
弔電・弔文の文面としても使用される
訃報を受けて手配する弔電・弔文の文面に「お疲れの出ませんように」の一節を盛り込む用法もあります。
葬儀は大事な行事ですが、一方で遺族が葬儀のために体を壊すという不幸も避けたいもの。
上記のような事情を察した友人・知人が、遺族の状況を慮って「お疲れの出ませんように」と一筆したためるのも大事な気配りといえるでしょう。
弔問の受付をしている方には控えよう
弔問や香典の受付をしている人に対しては、「お疲れの出ませんように」と声をかけないようにしましょう。
受付担当が遺族であるとは限りませんし、特に喪主は受付には回らないはずです。
受付に限らず、葬式の関係者全てに「お疲れの出ませんように」と声をかけるのはNG。一般論として「お疲れの出ませんように」というべき相手は、遺族に限られると覚えておきましょう。
ビジネスマナーが存在するように、葬儀にも弔問マナーというべきルールもあります。
忌み言葉や重ね言葉を避けるのと同様に、「お疲れの出ませんように」も控えるべきフレーズの1つというわけです。
シーン別「お疲れの出ませんように」の正しい使い方を例文と一緒にチェック
基礎知識を踏まえ、「お疲れの出ませんように」を使ったシーン別の例文を考えてみましょう。
「この度はお悔やみ申し上げます」
「お忙しいところ告別式にお越しいただき、まことにありがとうございました」
「本日はここで失礼します。お疲れの出ませんように」
「この度はお悔やみ申し上げます」
「お忙しいところ告別式にお越しいただき、まことにありがとうございました」
「本日はここで失礼します。お疲れの出ませんように」
「先輩、今日も残業ですか?」
「そうなんだよ、マジきついわー」
「お疲れの出ませんように」
「ご遺族の方々の悲しみ、心労はいかばかりかとお察し申し上げます。お疲れが出ませんように、お身体にお気をつけてください。 」
使い慣れない言葉だから無理して使わない「お疲れの出ませんように」の言い換え表現や類語とは?
「お疲れの出ませんように」は使いどころの難しい言葉。葬儀の場であっても扱いには注意が必要です。
ビジネスシーンなど、特に「お疲れの出ませんように」というフレーズが必要ない場合は別の表現で言い換えればよいでしょう。代表的な表現を紹介します。
「ご無理をなさいませんように」
相手の体やコンディションを心配する言い回しとして、「ご無理をなさいませんように」というフレーズがあります。
「お疲れの出ませんように」とほぼ同じニュアンスですが、どちらかといえば業務や労働に伴う疲労、負担などを心配する意味合いの強い言い回しといえるでしょう。
フレーズ全体が尊敬語で統一されているのも好印象につながるはずです。
「ご健闘をお祈りしております」
「ご健闘をお祈りしております」は、相手の健闘や活躍を願ってかける言葉。「お疲れの出ませんように」のフレーズのように、相手の体そのものの心配をするわけではありません。
むしろ相手が置かれている状況を察し、良い結果が得られることを祈るという点において気遣うニュアンスに注目すべきでしょう。
「陰ながら見守っております」
直接手伝いや力添えはできないものの、心情として相手を応援し、後押しする気持ちを表すのが「陰ながら見守っております」というフレーズです。
「見守る」という語句には注意が必要で、同格以下の相手に使うのが一般的。というのも見守る必要がある、すなわち不安や心配の対象であることを表すニュアンスが含まれるからです。
目上の相手に対して「見守る」という表現は控えるようにしましょう。
また「陰ながら見守っております」というフレーズは尊敬語でも謙譲語でもない、丁寧語による敬語表現ですよね。従って声をかける対象は目上でも目下でもない、同格の相手であると考えるべきです。
以上を踏まえ、「陰ながら見守っております」という言い回しで声をかける対象は、自分と同じ立場の相手が相応しいといえるでしょう。
「ご活躍期待しております」
「ご健闘をお祈りしております」とよく似たフレーズに、「ご活躍期待しております」というものがあります。
非常によく似ていますが、「お祈り」と比べて「期待」にはやや上からものを見るようなニュアンスが含まれる点には要注意。「見守る」と同様、目上の相手に「期待」という言い回しをするべきではありません。
「ご活躍期待しております」という言い方を選ぶ場合は、自分と同格以下の相手に限定する方がよいでしょう。
「応援しております」
「応援しております」は文字通り、後押しの意を表すフレーズ。
「ご健闘をお祈りしております」などの類似表現と比べてややカジュアルな響きがあり、ビジネス以外の場面でも使えるでしょう。
「どうぞお気をつけて」
「どうぞお気をつけて」は外出や出張など、移動を伴う相手の道中を気遣う言葉。
主に見送りの際、挨拶と併せて声をかけるフレーズとして定着しています。目上の相手に対して使うのが望ましいでしょう。
「お疲れの出ませんように」と「ご自愛ください」は意味が違う?シチュエーションに応じて使い分けよう
「お疲れの出ませんように」とよく似た言葉として、「ご自愛ください」も代表的なフレーズです。
「ご自愛ください」とは、相手の体調を気遣う決まり文句の1つ。自分を愛するよう、転じて「自分の体を大事にされますよう」という気持ちを込めた言い回しです。
「お疲れの出ませんように」とは異なり、特に葬儀向けといったドレスコードがあるわけではありません。
葬儀以外の場面で「お疲れの出ませんように」と同じニュアンスを伝えたい場合、代わりに「ご自愛ください」と声がけするのは有効な対応法ですね。話の終わりに配置する結びの言葉としても有用です。
海外へのビジネスメールで使いたい「お疲れの出ませんように」の英語表現を紹介
使う場面が限られるとはいえ、「お疲れの出ませんように」の気遣いは大事なもの。相手に対する思いやりという意味では普遍的な概念です。
「お疲れの出ませんように」に見られる気遣いのエッセンスは、英語表現でも存在します。海外へのビジネスメールを題材に、適合する英文を考えてみましょう。
“Please take care of yourself.”
(どうぞご自愛ください)
“Look after yourself.”
(お体を大切に)
上記2つの例文で紹介したフレーズは、メールに限らず電話でも常用される言い回しです。
使う場面もビジネスに限定されないので、是非覚えておきましょう。
「お疲れの出ませんように」を別れ際やメールで使って良識ある人を目指そう!
「お疲れの出ませんように」は、一般的に葬儀で使われることの多い言葉だと述べました。
ドレスコードも引き合いに出しましたが、実際には葬儀以外の場で使うことがマナー違反ともいいきれません。
「お疲れの出ませんように」は決まり文句として葬儀の用語だと思われがちですが、言葉自体は相手を気遣うニュアンスに溢れたものですよね。
例文でも取り上げたように、親しい間柄であれば発言の真意も伝わるものです。
形式や体裁にこだわる相手には使うのを避け、柔軟性の高い相手に対しては「お疲れの出ませんように」と声がけしても問題ないでしょう。
一番大事なのは相手に対する気遣い、配慮というエッセンスなのです。相手との関係性を見極め、上手に言葉遣いを選んでいくのがポイントですね。